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「わかった、わかったから。じゃあまず、目標が通る直前にマシンガンで足止めをさせて、」
「素人は黙ってろ」

苛立ちを隠そうともせず、帆足は小野寺をキッと睨みつける。…なんて目つきをするんだ。そう小野寺は思った。
陰では狂犬とも噂される、そのふたつ名の所以がよくわかる。苛烈な害意を真正面からそのままにぶつけてくる、とても仲間に向ける目と思えない。

「とりあえず俺が行って先頭を止める。そうすれば後ろは追突するから、そうしたら、お前らで包囲しろ。そのくらいできるだろ」
「行って止める、って」
「一応言っておくが、緊急時以外、銃は使うなよ」

早口で帆足が口走ったその内容が一瞬で理解できず、岸は聞き返したが…、それに対する説明は得られなかった。
もっとも、これは相手が仮に今の帆足でなかったとしても、同じことだったかもしれない。輸送車はもう、すぐそこまで迫ってきている。
同様に、銃を使うなと言われた理由も小野寺には理解できなかったが、それを尋ねている猶予はもうなかった。

「じゃ、いくぞ」

そう言って帆足はヒラリと高架橋の欄干の上に飛び乗ると、ガチャ、と音をたてて腰の湾刀を抜いた。
帆足愛用のこの剣は刃渡りせいぜい50センチ程度の短いもので、造りは分厚く頑丈そうだが、どういう使い方をしたらこうなるのかというほど、傷だらけで、刃こぼれさえしているように見える。
そして、小野寺が一瞬だけ、ほんとうに一瞬だけその剣の傷み具合に気を取られた、その次の瞬間には…、
帆足は両腕を真横へ広げ、欄干を勢いよく蹴って、輸送車の走ってくるほうへ、宙に向かって飛び込んだのだ!

「あっ、何をっ」

小野寺は思わず目を覆った、しかし。

「うわ、すげぇっっ!!!?」

岸の素っ頓狂な声につられて見ると、驚くまいことか、帆足はグライダーのように空中を滑空し…、
輸送車のフロントガラスへはりつくと、そのまま一撃、左手の剣を振り下ろした!


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