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「ええ、もしかしたら別の…」
「…民間車両かもしれないな。文京軍の輸送車かどうか、見分けられないか」

小野寺に言われて岸は再び目を凝らしたが…、自慢の視力をもってしても、その判別は不可能だった。

「この暗さでは、ちょっと…」
「関係ねぇよ」

申し訳なさそうにその旨を告げる岸の言葉を、帆足が乱暴に横から遮る。

「色ガラなんてどうでもいい。この時間に現れたからには、あれがターゲットだ」
「でも…、定刻じゃないですよ」
「車なんて遅れるもんだ」
「でも」
「迷ってる暇はない」

帆足は鼻の頭に皺を寄せ、牙のようになった八重歯を剥いて、ギラリと岸を睨んだ。

「車が通ったのが10分遅れだったもんで、本当に目標かどうか迷っちまって取り逃がしましたなんて報告を、この俺にさせる気か!?」
「そ、そんな、」
「ちょっと、落ち着いて!」

岸は勿論のこと、小野寺にまで緊張が走る。なぜなら、帆足がどういう性格の持ち主だか、小野寺はよく知っているからだ…、
これ以上グズグズして機嫌を損ねると、岸は殴られるどころでは済まないかもしれない。そのうえで帆足は一人ででも任務を強行しようとするだろう。
帆足が相当の実力を持っているらしいことは小野寺も承知だが、事情はわからないにしろ、この人数で妥当と判断される仕事なのだろうから…、さすがに一人で行かせるのはまずい。


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