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「どうだった」

眉間に指をあて、難しい顔をして執務室へ戻った井端を、李が立ち上がって出迎えた。

「…増援については勝手に交渉すればいいそうだ。ただ…」
「ただ?」
「お前の部下が広島へ遊びに行ってやしないか、と聞かれたよ」
「なに」

井端の言葉に、李の表情が変わる。

「なぜ長官がそれを」
「それが、広島から噂を聞いたとか言うんだ…」
「噂って何だ。広島のどこから、何の噂を聞いたと」
「一切わからん。いや、そもそもあの長官の言うことだ、噂を聞いたということ自体、本当かどうかわからない」
「仮に本当でないとすると、基地の誰か…、昼間の会議の出席者のうち、誰かが長官へ告げ口したことになるが」
「その確率のほうが、高かろう…」

実のところ、落合が掴んでいたのは、本当に広島から自衛隊経由でもたらされた情報であり、出処は青木勇人であって、東基地の誰でもない。
つまりは、名古屋の軍人らしいものがひとり、スラィリー猟に来ているという程度の内容でしかないが…、井端がそんなことを知る由はない。

井端は応接用に置かれたソファへ沈むようにして腰掛け、両手の指を組んで、腕を前方に伸ばした。。
さっきまで座っていた場所を取られ、李はその対面に位置する井端の執務用の椅子に座り、机にヒジをついて思案した。


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