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同刻、名古屋防衛軍、東基地。

ラミレス出奔、そしてグライシンガー掠奪の一報は、基地を預かる井端の耳にも当然届いていた。
正確には、ガイエルの怒髪天を衝く演説、そして腰の軍刀を抜き演説台の角を叩き斬る、その一連の様子を映した映像が全国の茶の間を黙らせるよりも少し前に、井端はその情報を掴んでいた。

これを黙って見過ごすわけにはいかない。主戦力であるラミレス将軍、それに加え、巨大機動兵器、それも現代科学の及びつかない神代の遺産である超魔神グライシンガーまで失った神宮が今後どうしていくのか、それは井端のあずかり知るところではないが…、
その引き抜かれた戦力が今後どこへ投入されてくるのか、仮にこれが切れ者の井端でなかったとしても、想像には難くない。

…限界だ。井端はそう悟った。森野を思えば、基地の外部から増援を得ることはできるだけ避けたかったが…、現有戦力ではとても、グライシンガーに対抗すべくもない。
それに、増援を要請したところで、必ずバレると決まったものでもないのだ。臆して窮するより、打てる手から打とうじゃないか。
…勿論、はじめから事実を報告するよりも、後から隠していた事実が明らかになるほうが、罰は何倍も重くなるだろう、しかし、井端も腹を括った。

「…長官、私です、…井端です」

自らの執務室の奥の部屋で、井端は防衛軍の専用ラインに直通する通信機の前に座り、受話器を取って、ひと呼吸ののち…、その名を名乗った。


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