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「知ってるのか?」
「知ってる。名古屋より東では、知らない者はない」
「へぇ…」

『全国の諸君。これより、聖都騎士団を代表し、アーロン・ガイエルから諸君へ、聖都の危急を報せたい。
 本日正午、我らが同胞であったラミレス将軍が、超魔神グライシンガーを手土産に、文京軍へ降った。
 これは神聖なる聖都神宮、さらに神と、調和に対する反逆行為である。断じて許すことはできない』

男は金色の巻き髪を振り乱し、顔を紅潮させ、怒りも露わに、演説台を叩いて喋り続ける。

『繰り返す、聖都は危機である。是が非にも諸君の力を借りたい。我こそはと思う者は、このアーロン・ガイエルの元へ集え。実力ある者に対しては、我ら騎士団への入団も考慮する』

「…色々格好はつけてるが…、つまり、募兵か」
「そういうことだな」
「今から一般人募って、戦力になるんかいな」
「一般人じゃなく、そこらで眠っている即戦力に呼びかけてるのさ、例えば山崎、永川、お前たちみたいなね。聖都騎士団へ入れるかもしれないとなれば、多少は動く奴も出るんじゃないか」

『我々は文京に対し報復の用意がある。諸君、その手に光、頭上に正義を、胸に怒りを、心に炎を燈せ!神を神とも思わぬ、力の暴虐を許すな!』

「報復の用意って何だ、何かできるのか」
「さあ…」

血管も切れそうに怒鳴るガイエルを尻目に、永川が冷めた疑問を口にする。
それに対し森野は、言葉を濁すにとどまった。この表情からはとても伺い知れないが、本来、ガイエルは智将だ。
なにか考えがあるかもしれない、が…、それにしても、戦力差がありすぎる。
まして、聖都騎士団は本来、聖都を警護するのが主任務であり、外敵から聖都を護ることにかけては無敵だが、
強大な力を誇った過去にはともかく、近年は外征をした経験自体もほとんどないはずだ。
これらを考慮すれば、報復などとてもやりようがない。しかし用意があると全国放送で断言している。
そのあたりの迷いが…、森野に、曖昧な返事をさせたのだった。


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