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『地元スラィリーハンター協会副会長の小早川さんです』
「なんだ、あのオヤジか」
画面に中年の男が映し出された途端、永川はテレビを凝視するのをやめ、鶏肉を一切れ口へ運んだ。
「知り合いなんか」
「知り合いは知り合いだけど…、面識ある程度だよ。ただ向こうは一応立場あるから、まあ、どういう人なのかは知ってる」
山崎の問いに、永川は淡々と答えた。そして画面に視線を戻そうとしない。
『この時期はスラィリーも猟師を警戒しているので。危険ですね。猟のさいには相手となるスラィリーの動きをよく見、出るべき時は出て、引くべき時は引くなどして充分な注意を怠らないことが大事です』
「…僕でもできるコメントやな」
「これじゃ、何も言っとらんのと変わらんの」
「引くべき時がどんな時か言わないと意味ないだろうに。それが言えないんだったら安易に近づくなくらい言っとけよ」
『それぞれが慎重に、命を粗末にせんよう頑張ってもらうしかないですが、私もハンターたちの無事を祈って、協会本部前に盛り塩をしとります』
「盛り塩かいな!」
「使えねえ」
「けどあの盛り塩…、めちゃキレイやで」
「実質あれが仕事だからな…、あ…、すまん、それで、どうやって」
今度は永川が森野のほうを向き、再度、話を途中で切ってしまったことを詫びた。
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