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「いや、だから、咎めているわけじゃない。あんたが謝る必要はないよ。ただひとつだけ言うとしたら、そうだな、そもそも軍人と名乗ってくれなきゃ良かったかもな」
「…お前が自衛隊とつながってるとは思わなかったんだ」
「誤解するな、別につながってなんかねえよ。知り合いがいるだけだ。大体あんた今、自衛隊の人間にあんたのことを喋ったって聞いても、ピンともシャンともきてなかったじゃないか」
「いや、それはなんというか…、それにほら、軍人と言わないよりは言ったほうが、戦力になりそうな感じがするだろうと思ったし」
「ああ、なるほど、それはわからんでもないな。ま、いい、そこらへんは過ぎた話だからな、今したいのはこの先の話。
 もう一度聞くが、今日明日あたりまでに、名古屋防衛軍があんたの捜索を広島へ依頼してくることは、あり得るのか」

森野は逡巡した。井端にはその権限はない。
しかし、井端がもし、森野の件にさっと見切りをつけて裁定を落合長官に委ねたとしたら…、
落合長官が自らの判断で広島自衛隊へ捜索依頼を出すことは考えられる。

「ないとは、言えない」
「そうか」

搾り出すように喋る森野とは対照的に、永川の返事はあっさりしていた。

「じゃあ、急がないとダメだな。明日決行だ。本当は三日後の新月まで待ちたかったが、仕方がない」
「新月だったら、何か、いい事あるのか?」
「うん…、スラィリーの凶暴性と月の満ち欠けには関係があるって、ハンターの間じゃよく言われるのさ。
 でも科学的に証明されてるわけじゃないんだ。俺も何となく経験的に関係はあるんじゃないかと思ってるが、迷信の域を出ない。その程度のことさ」
「しかしそれは、結構重要なことなんじゃないのか」
「いやまあ、そうなんだけどね。でも考えてみな、たとえスラィリーが大人しかろうと、操るマスターが凶暴だったら、それまでの話だろ」
「確かに…」


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