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「そんな目で見るなよ。そもそもな、神様やら狐様が大事にされるのはなんでだと思う」
「なんで、って、そんなの、神様だからじゃないのか」
「お目にかかったこともないから、考えたこともないか。あのな、あれはお目にかかれないからこそ、なんだよ。言い換えれば、存在してないからこそだよ。
 本当にいるんだかいないんだかわからない、ご利益もあるんだかないんだかわからない。だから本当にいるかもしれないし、たいへんなご利益か祟りがあるかもしれないだろ、
 少なくともそれを否定することは誰にもできない。なぜなら誰も見たことがないからだ。ないことを証明するのは難しいからな。
 それがだよ、昼ひなたから堂々と姿を現してだ、おまけに悪さまでするんじゃな、いくら本物の狐様だろうと、大事にされる道理がないんだよ、
 それこそ、そこらの野良犬とどこが違うって話だ」

永川はまくし立てるようにそれだけ喋ると、大仰に溜息をつき、口元を歪めた。
森野は神霊について深く考えたことがなく、永川の言っていることに反論あるいは賛同するだけの持論を持ち合わせてはいなかったが…、
少なくとも、永川が先程の鶏の狐、ひいては神的な存在に対して好意を持っていないことだけは読み取れた。

「まあ、そんな話はいいんだよ。森野、あんたに聞きたい…、いや、聞いておかなきゃならんことがある」
「俺に?」
「あんた、軍人だって言ったよな」
「そうだが」

突如話を振られ、森野は怪訝そうな顔をして首をかしげる。なにか隠し事をした覚えもない、心当たりがない。


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