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青木は一旦言葉を切って煙管を口にくわえ、シュ、とマッチを擦って煙草に点火した。それから一杯に吸い込んだ煙を溜息のように長く吐き出すと、ガタンと音を立てて乱暴に事務机の椅子へと腰掛け、背もたれに寄りかかるようにしてソファの二人のほうを向いた。

「…で、ちょうどそのころだな。俺がちょくちょく出入りして油売って親しくしてた高山組に、新顔のヒットマンが雇われたのよ。
 名前は福地つって、射撃の腕は勿論いいんだが、それ以上に高く買われたのが身体能力の高さ。特に脚だ。鹿のように脚の速い男だったよ。体力自慢だらけの高山組の誰も勝てなかったんだからな。
 そいつと俺は気が合ったんで、時々喋ったり食事に行くようになってさ。どのくらいたった頃だろう、相談してみたんだよね、このまま俺達に居続けるべきかどうか悩んでるって。
 こんなこと俺達の構成員には相談できないしね。雇われマフィアの、しかも流れ者の福地は、相談というか、愚痴相手に丁度よかった。
 俺の話をごくマジメに聞いて、それから福地はこう言ったね。自分は頭も良くないし、考えることは苦手だから、あんたが組織を抜けるべきかどうかっていう悩みには満足に答えられない。
 ただ、あんたが本当に俺達を抜けたいのなら、抜けたその後には広島へ行くといい、ってね」


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