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「簡単なことさ」
「簡単…、て…?」
「嫌気がさした」
「…何に?」

すでにコーヒーを飲み干していた青木はおもむろにソファを立ち、事務机の引き出しから取り出した葉を煙管に詰めながら語りだす。

「とりあえず所沢政府を倒して、俺達の名前が世間に知れ渡った。そこまでは良かったんだ。ただ、それから無為に何年も時間が過ぎた。
 その間所沢の正当な為政者として認められるわけでもない、そこらじゅうから逆賊扱いだ。でもそれを跳ね返す政治力もないから、とにかく地元に篭って、他都市からちょろちょろ干渉受けるたびにテロ起こして死人出して。
 そのいっぽうで、支持基盤固めるために地域の住民、子供たちにまで偏った教育してさ。いつまでもそんなことしてて、結局誰が幸せになんのかな?って思っちゃったんだよね俺」
「…誰も幸せにならなかったのか?」
「そんなの知らんよ。ただ、少なくとも住民の生活レベルは明らかにクーデター前より落ちた。以前は他都市から輸入もできたが、クーデター後は経済制裁も食らってるし、食い物着る物が全部所沢とその周辺で自給できる物に限られたからな。
 確かに、これからは何を言っても自由だ、っていう開放感はさ、生活レベルのダウンを埋め合わせても充分お釣りが来たと思うよ。でもいつまでもそんなものでハッピーでいられるほど、人間、おめでたくできてないんだよ。自由じゃ腹はふくれないからな。
 だから、不満が俺達のほうへ向かないように、ちょっと文京とか元の所沢政府とかを悪者にしたり、宗教色出したりして都合よく教育をするわけ。一体誰が考えるんだか、総帥にそんな頭ないから幹部の誰かだと思うけど、
 それって倒したはずの独裁政権とやってる事が変わらないんだよ。俺はそれが非常に気に入らなかった」


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