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――とはいえ、口がきけるんだから、マスターさえ素直だったら特に問題ないわけか。ただねぇ…。

森野の本気がドアラに伝わるのと同様に、ドアラの戸惑いも森野には充分伝わっている。こいつは俺のためを思ってくれている…、ああ申し訳ない、と森野は思った。だが今は忍んでくれ。これは試練なのだ…、
…しかしドアラは森野の目を見たまま、表情を伺うように、それでもまた口を開こうとした。森野はそれを手のひらで制する。

――軍人さんってのはね、概して難しいもんですよね。勝浩さんも結滞な性格ではありますけどね、あれとはまた違うんだなー。

今日のドアラは随分聞き分けが悪いな、と森野は感じた。いつもなら、二度も制すれば、言うことをきくか、さもなくばヘソを曲げるかしてしまうはず。ドアラとは本来淡白な生き物だ。
そしてまた数秒の躊躇ののち…、森野の制止を押し戻すように、ドアラはずいと前へ出た。

「お前、何を」

予想していなかった行動に森野は慌て、脳がドアラ語を喋るよりも前に、脊髄が勝手に日本語を口走った。同時にドアラを包む空気が突然に質を変える、
いや、それは昨日までの表現だ、ドアラの体の内外を循環する気が、立ち昇る闘気へと変わったのだ。
一体何のつもりだ…、などとは思う暇もない、なぜなら次の瞬間には、大人しく懐いていた鶏たちが目の色を変え、いきなりドアラに襲い掛かったのだから!

「お、おい」
「غشگل!!」


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