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…その様子をカーサは大胆にも、鶏小屋の屋根の上から見降ろしていた。毛色を銀灰色から所謂狐色に変えているのは目立たないようにとの配慮だろうか、
しかし毛色がいくらそれらしい色をしていたところで、その規格外に立派すぎる体格、よく手入れされた飼い猫とさえも比べるべくもない艶やかな毛並みを見れば、
それが日本のどこにでもいる野生の狐と同じものではないことなど、誰の目にも明白だろう。
ただ、それほどに目立つ風体をしたカーサの姿も、森野たちからは小屋の屋根に遮られて見えない。この状況ではカーサからも等しく森野たちが見えないはずだが…、
そこは卑しくも嘗ては神様にお仕えした銀狐、少しくその目を赤く光らせたれば、やれ、見えぬものなどないのである。
同様に、たとえその言葉を理解せずとも、その耳には、彼らが何を言っているのかが理解できるのだ。

――はーぁ、なかなか賢い子ですね、驚いた。お師匠さんが申し忘れたところをお伝えして差し上げようかと思ってましたけど、これはもう少し様子を見てみましょうかね。
もっとも、この子に比べてマスターは幾分鈍いようですけど、足りないところを補完しあうのがマスコットとマスターですからね、アナタがどれだけその子を信じて頼れるかに全てがかかってるわけですよ、ねぇ森野さん?

カーサはそんな事を考えながら、ニヤリとその口元を緩め、わずかに覗いた犬歯を輝かせると、両手を顔の前へ揃え、屋根の上に伏せるように座した。長期戦の構えである。


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