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彼は名を青木勇人と言い、ここでスラィリーブローカーをしている人物である。
ブローカーとは言ってもただ持ち込まれた獲物の売買の仲介をするだけでなく、スラィリーの出現情報をリアルタイムに仕入れ、
それを猟師に紹介する形態も取っている業者は多い。彼もそのうちの一人だ。
都市政府など公的機関からのスラィリー駆除依頼も、まずブローカーの業界団体に回され、そこから猟師が手配される仕組みになっている。
この図式ではどれだけ腕のいい猟師を囲えるかが重要なポイントになるが、その点、青木は永川にいち早く目をつけて、取引ルートをほぼ専属で握っており、
同業者より確実に多くの利益を得ることに成功しているやり手だ。

「急に呼びつけて悪かったね。でも、他のハンターじゃちょいと荷が重いかなと思ったもんでさ」
青木は煙管を噛んだまま言った。年齢は30代くらいだろうか、体格はどちらかといえば小柄で、よく見ると若干腹が出ている。
「…たしかに、ちょっと難しそうな仕事だな。でも」
初心者ならともかく、慣れたハンターが数人いれば充分対応できるのでは、と永川は言おうとしたが、その言葉は遮られた。
「今回場所が悪いんだ。ほら。確実に仕留めてもらわないと困る」
「場所…?ああ、なるほどな」
青木が提示した地図上の一点を見て、永川はすぐに納得した。ぶどう園地帯で、思っていたよりも民家が近い。一歩間違えれば大惨事だ。
「でも、なんでこんなところまでスラィリーが降りてきたんだ?」
「うん、へたなハンターが3人組で山に入ってね」
「…ああ、仕留め損なったのか」
「そそ、んで獲物を怒らせて、どうにか助けを求めて降りてきたもんで、それを追っかけてきちまった、ってわけ」
「ということは、獲物も手負いか」
「依頼には書いてなかったが、恐らくな。ハンターも一人殺されてる。一人は重体。残る一人は腕一本折って済んだみたいだ」
「となると、あまり旨味のありそうな仕事じゃないが…、放っておくわけにもいかないか」


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