096
「ほんまに?なんぼ!?」
「それはやってみてのお楽しみ。仕留めた獲物にいくらの値がつくかで決まるからね。
市場に卸せそうな状態じゃなければ残念だけど…、毛皮にも値段がつくわけだから、一文にもならないってことはほとんどないね。
今回は駆除依頼だから、仕留めるだけで成功報酬がつくよ。もっとも、それは大した金額じゃないけどね。そうだな…、2割でどう」
永川はひげを撫でていた手をアゴから離し、指を二本立てて見せる。
「2割?もーちょいならんの?3割ちょうだい」
「ダーメ、2割。労働には妥当な対価ってもんがあるの。人の仕事手伝ってそんな儲けようなんて甘いよ」
「まーそー言わんとぉ。な、もうちょいでええねん、ちょい、ちょい、頼むわぁ〜」
「じゃ、2割5分」
「おけ!」
交渉成立。山崎はスキップでも始めんばかりにウキウキと歩いている。
2割と提示してすんなり納得するはずがないことは永川も知っているから、3割までなら想定内。2割5分なら御の字だ。
この5分の攻防がケチくさいなどと思ってはいけない。なにしろスラィリーハントの分け前である。
猟師の取り分はおおよそ末端価格の1/4〜1/3程度が相場。従って、1割の違いが10万の違いになる可能性もある。
金は割合でなく額面でのみ評価すべし、そこは是非とも粘るべきなのだ。
[NEXT]
[TOP]
[BACK]