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「さて、これでやっと、最初の話に戻れることになりますけども…、」
突然横から聞こえてきた永川のその言葉に、前田と森野ははっとして振り向いた。
当人たちにしかわからない一瞬の視線の攻防があった、どうもそのあたりから永川の存在は二人の意識から追い出されていた…、
もっとわかりやすく言うならば、永川はこの一瞬の間に、二人から忘れ去られていたらしかった。
「…お師匠さんも、そんな驚いた顔しなくてもいいじゃないですか。次に話したいのは、組んでどうするのかってことです」
「そ、そうじゃな。まずは、ナー、お前の考えから聞かせてみい」
「まあ、相手は英心ですから…、俺の手の内は知っています。でも彼らの力量は知らないわけで、そこを利用したいと」
「ふむ」
「これまでの調べでわかっていることは…、英心は川沿いの崖の下を中心にして、半径3キロ程度の結界というか、
 警戒線を張ってるってことだ。これはかなり半径が広いから、実際接触しても弾き返されたり怪我をしたりはしないだろうけど、
 おそらく、破られたことが英心にはすぐに察知できる仕組みになってると思うわけ」
「まあ、それじゃわからんじゃろ、ほれ」
永川が机の上に指で線を描きながら森野に向かって説明を始めたのを見て、前田は自分の背後、電話の横に置いてあった鉛筆とメモを取って渡した。
「ありがとうございます。ええと、まず外側の円があって、これが3キロ、と。それで、その奥に、さらに結界がある。
これは実際に見たわけじゃないからはっきりした半径はわからん、1キロはないと思うけど…、そのかわり、おそらく相当の衝撃に耐える」
「…その間には、何もないのか?」
「ないといえばないけど、スラィリーが多数、放し飼いされてる。英心が命令すれば…、いや、しなくても、近づけば一斉に襲ってくるだろうね」
「なるほどな」


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