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簡単に決死の覚悟をしてはいけない、それがどれだけ難しいことか、名古屋で幾度も死線をくぐっている森野には理解できる。
しかしそれでも、森野と永川には決定的な違いがある…、誤解を恐れず述べるならば、軍という大きな組織の中で動いている森野が死んでも、代わりがきかないことはない。しかし永川が死んでしまったら、最早代わりは誰もいない。
永川はスラィリーマスターと闘ううえでは不可欠であると同時に、今回での討伐の成否より、誰の命より、何より優先しなければならない心臓と言える存在、
…つまり逆に言えば、永川以外の要素はすべて切り離しのきくトカゲの尻尾でなければならないのだ。
二兎を追えば一兎をも得ず。何を最優先すべきかは常にはっきりしていなければならない。それは古来より兵法の鉄則であり、森野も当然、心得ている。
しかし森野の目に映る永川は、とてもそんなことを自分自身に納得させられそうな男ではない。沈痛な面持ちが如実にそれを物語る。
「まあそういうわけで…、繰り返しになるがの、こいつ自身の望む望まざるに関わらず、場合によってはお前さんを見捨てることになるかもしれん。
 じゃけぇ、もう一度、よう考えてほしいんよ。
 お前さんにとって、スラィリーマスターを討ち取ることで得られるもんが、それだけの価値を持つんか、どうかを」


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