次の日、ひなせは学校を休ませてくれた。時には平気な顔して残酷なことをするひなせなのに、こういうところで優しいのは昔と変わらない。 最後のほうは意識が消し飛んでしまって覚えていないけれど、ひなせは 「お姉ちゃんすごいね。本当に100回もいったんだよ」 と褒めてくれた。同時に、知をこの家に連れてくることも許してもらえた。壊れそうになっても必死で耐えたかいがあった。 知にこのことをメールすると、私たちの家に来てくれることを了承してくれた。学校には戸籍でも何でも出してうまいことやってくれるそうだ。ただ、きょうだいとして、という点では了承してくれなかった。それほどに私を好きでいてくれているということがうれしかったが、内心では複雑な気分だった。事実そのあと何度も会うことがあったが、必ず身体の関係があった。違うのは毎回避妊具が用意されていること。 いずれにしても、卒業したら、知と一緒にいられる。それをひなせが許してくれたことで、私の心には希望の光が差し込んできていた。 卒業も間近になったころ、ひなせも内定通知を持って家に帰ってきた。 「春からは自動車学校の受付なんだ」 と言いながら。見てみると、うちから歩いていける場所にある自動車学校だった。 「ここならお姉ちゃんといる時間も少しは確保できるかなぁって思って」 ひなせの言葉はやっぱり残酷だった。一生私を手放す気はないらしい。 「知がうちに来ても、今迄みたいなことするの?」 「するよ」 と、またも残酷な答え。 でも、私はまだまだ甘かったのだ。ひなせの計画はもっともっと手厳しいものだったから。 制服に腕を通すのもきょうが最後。 私は校則どおり、完璧にセーラー服を着て学校へと向かった。 仲良くしてもらった友達や生徒会のメンバーから寄せ書きをもらうと、思わず涙がこぼれそうになる。私はあまり深い人付き合いはしていなかったつもりだけど、どうやらそうでもなかったらしい。 隣のクラスである私とひなせは二人並んで講堂に入場する。 卒業証書授与では、先にひなせのクラスのほうが名前を呼ばれる。ひなせは3組、私は4組だ。 「遠野ひなせ」 ひなせがうらやましかった。結局私は3年間知のクラスにはなれなかったのだから。もっとも、ひなせと同じクラスじゃ皆困るだろうけど。 「遠野ひなた」 いつの間にか、私のクラスになったらしい。ワンテンポ遅れて返事をしてしまう。しかも私はクラス代表だから(担任に勝手に決められてしまった)、壇上に登ることになる。 卒業証書を受け取って一礼し、壇を降りる。知と目が合うと、彼は軽く微笑してみせた。 その日、卒業式が終わってから私はすぐに知のアパートに向かっていた。知と約束していたのだ。 周囲に気をつけて合鍵を使い、知の部屋に入る。いつもと変わらない殺風景な部屋。もうすぐ知が私たちの家にやってくると思うとわくわくした。 知の帰りは酷く遅かった。たぶん謝恩会で酔って帰ってくるのだろう。知が酔うなんて私には考えられないけれど。私の知っている知はいつも冷静沈着で、お酒を飲むことはあっても飲まれることはないと思ってたから。 知が帰ってきたのは夜も10時を回ってからのことだった。ひなせにはもう「知の家に泊まる」とメールをしてあるから大丈夫だ。 「おかえり」 「ひなた、もういたんですか」 「卒業式終わってすぐに来たから」 「ふーん……」 言いながら、知は徐に私をフローリングの床に押し倒す。突然のことで抵抗もできない。 「学生の身分で、しかも制服でこんなことするのは最後ですね。燃える」 知のキスはお酒臭かった。やっぱり酔ってる。私まで酔いそうだった。まるで口移しでお酒を飲まされたような気分。 「きょうは絶対に脱がすシチュエーションじゃないですね」 喉の奥で笑うと、セーラー服のファスナーを下ろす。リボンも解くけど床に落とすようなことはしない。ブラだけをたくし上げ、胸のふくらみをもみしだく。同時に私の緊張もほぐれてくる。知に抱かれているときは息も詰まるような快感に襲われるけれど、同時に大きな安心感も得られるのだ。 やがて胸の先のほうを口に含まれると、無意識のうちに声が出た。そこを舌で転がされるたびに身体がびくびくと反応し、自分の声ではないような声が出る。 「あっ、あ、ああ」 学生最後の制服、というシチュエーションに燃えていたのは知だけではなかった。私もだった。しかも知は私の大好きなスーツ姿。白衣じゃないのは残念だけど、いつもと違う知にどきどきしていた。いつも以上にいけないことをしている感覚。堪らなかった。 紺のプリーツスカートの中から下着だけを引き摺り下ろすと、知はいきなりそこに舌をつけてきた。 「だめ、汚いよ、それに……制服汚れちゃう」 「今更何言ってるんですか」 きょうの知は敬語だった。いけないことをしているという感覚を更に増強しようとしているのかもしれない。 「綺麗ですよ、ひなたのここ」 そう言うと、次の瞬間にはそこを吸い上げ、一番敏感な突起を舌で転がし、全体を大きく嘗め回す。 「いくら吸っても溢れてくるじゃないですか。ひなたは本当に感じやすいんですね」 「ん、や、そんなこと……んああ!」 知の舌の動きで、一瞬でいかされてしまう。でも、それだけじゃ足りなかった。指をいきなり2本もそこに突っ込まれたのだ。知の指は骨ばっていて案外太い。私には少し痛かった。 「知、い、痛いよ……」 「すみません、僕もう抑えが利かなくて」 悪びれずに言う知を思わず許してしまった。それに、傷みは程なく快感に変わっていったから。中をまさぐられる感覚は知のそれでは味わえない。指でしか感じ得ない感覚があるのだ。 「ひあ、だめ、いく、もうだめぇぇ!」 全身を震わせて悲鳴を上げても知はやめてくれない。これじゃまるでひなせがこの前私にしたような仕打ちじゃないか。 「3回ですよ。3回いったら一番欲しいものをあげますよ」 もっとも、ひなせの仕打ちよりはずいぶん優しいものだったけど。 中のざらざらしたところをこすりあげられて、じゅぶじゅぶといやらしい音がする。でもそれは自分では止められない。 「っああああああ!」 「1回目」 静かに言う知に恐怖さえ覚えてしまう。まるで、あのときのひなせのようで……。 「だめ、もう……っ」 「2回目」 もうやめてほしいと必死で懇願しても知はやめてくれることはない。むしろ、もっと動きが激しくなっている。だめ、このままじゃ…… 「あ、あああああ!」 「よくがんばりましたね。ご褒美にあなたの一番ほしかったもの、あげますよ」 そういう間もなく私の眼前に知のものが飛び込んできた。 「くれるって……」 「まずはこっちから、です」 言われて私は自分からそれを口に含もうとする。舌を這わせ、吸い上げるようにして顔を動かす。そのたび知がピクンと反応するのがうれしい。 やがて知は「もういいよ」とでも言うように私の身体を離そうとした。同時に四つんばいに組み伏せられる。 「知、この格好恥ずかしいよ……」 「恥ずかしがらなくていいのに」 避妊具をつける間さえ惜しかった。知が私のそこに押し入ってきたとき、私は大きな嬌声を上げて受け入れた。いつになく、知の動きには容赦がなかった。ひなせに嫉妬しているのか、私の全てを手中に収めたいのか、それとも……。 そして知の動きが更に素早くなり、私も全力で締め付けて快楽を伝える。 「いいですか?」 「うん、もう……もうっ」 最後のほうは叫び声になっていた。言った瞬間達してしまったから。直後に悟のものがどくどくと私の中で脈打つ。一番幸せな瞬間だ。 そう、幸せな時間、誰にも邪魔されない幸せな時間。 ←back next→ |