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「では、睡眠導入剤を出しておきますね」
 その言葉を待っていた。処方箋に書かれた薬は「ベンザリン」というもの。試しにあたしがひとつ飲んでみて、よく眠れるのなら……あたしの作戦は成功といってもいいだろう。
 あたしは心療内科の扉を開いていた。そして不眠を医師に訴える。もちろん仮病だ。あたしにはやらなくちゃいけないことがある。お姉ちゃんのためなら手段なんて選ばない。だってそれが本当の愛というものでしょう?
 ともあれあたしはその「ベンザリン」という薬を薬局でもらうことに成功した。1週間分のクスリ。これを何とかしてお姉ちゃんに飲ませて、あたしは兄の元に会いに行く。遠野「ひなた」として。

 薬の効果は絶大だった。耐性も何もないあたしには抜群に効いた。
「ひなせ、今日起きるの早かったじゃない。もう春休みだよ?」
 何も知らないお姉ちゃんは、パジャマを着たままいつもどおりに朝食の支度をしていた。パンが焼ける香ばしい匂いがキッチンに広がっている。
「えへへー、だって少しでもお姉ちゃんと一緒にいたいんだもん」
「まったく……」
 半ば呆れ気味のお姉ちゃんに、ちょっと聞いてみることにした。
「お姉ちゃん、今日遠藤先生に会うの?」
「そうだけど、どうしたの?」
「また面白いもの手に入れたんだー。試してみる?」
 そう言って、あたしは錠剤だけを5つ、お姉ちゃんに手渡した。
「前に塗った薬よりもっと強いんだよ。遠藤先生の前で試してみる気にならない?」
 お姉ちゃんがごくりとつばを飲み込む。きっとあのときのことを思い出しているんだろう。実際あのあと、何度か「あの薬を塗って欲しい」とせがまれたことがあった。
「……うん、飲んでみるね」
 完璧だ。お姉ちゃんはコップに入っている水で薬を身体に流し込む。
 そして朝食を食べ終わると、お姉ちゃんの様子が明らかにおかしくなった。足取りはおぼつかなく、先生にメールを打つ気力もない様子だった。
「なんだか急に眠くなってきちゃった……ごめん、少しだけ寝かせてもらうね」
 心の中でガッツポーズをとる。これでお姉ちゃんは当分の間目覚めない。あたしは着替えて歯を磨くと、大急ぎで遠藤先生のアパートに向かった。

「ひなた、待っていましたよ」
 先生……いや、兄は完全にあたしをお姉ちゃんと間違っていた。これならことがうまく運ぶはずだ。
「知……仕事、忙しくないの?」
「たまには休まないとやってられませんからね」
「私としてて、休んでられる?」
「むしろその方が心の安らぎになりますね」

 そして、あたしは初めて実の兄に、遠藤先生に、抱かれることになった。

「はぁ……ん、あ、あ、あうぅっ!」
「ひなた、いつもより感じてないですか?」
「だって、はぁ……知がぁ、そこ、えぐるからぁ……」
 先生のそれはあたしの感じる場所を確実に捉え、そこを中心に何度も往復運動を繰り返していた。あたしの身体は勝手にびくびくとしなり、予想以上に大きな先生のものをぐっと締め付ける。
 先生がお姉ちゃんを手放さないのも、お姉ちゃんが先生から離れられないのも、少しは分かった気がした。
「く……っ」
「あはぁ、あんっ、知ぅ……そこ、だめぇ……私、私……!」
 気持ちのこもっていない交わり。でも、そこには間違いなく同じ血が流れている。
「知ぅ……!っあ、あああああああ!」
 あたしの中で知のものが弾ける感覚。こんなの初めてだ。どくどくと動きを止めないそれに、あたしはもう一度絶頂を迎える。

 全てが終わった後、あたしは最後の作戦に出る。
「え?」
 そりゃ先生も驚くだろう。
「だからね……ひなせと3人で、してみたいの……」
 あの貞淑で淫乱な「遠野ひなた」がこんなことを言うのだから。
「私、ひなせにも知にも飼いならされて……こんなに淫乱な身体になって……もう物足りないの……」
 先生はしばらくあっけに取られたようだけど、
「わかりました。ひなたがそう言うなら」
 いともあっさり頷いた。これで準備は整った。あとは機が熟すのを待つばかりだ。

 帰っても、お姉ちゃんはぐっすり眠ったままだった。5錠はさすがに飲ませすぎただろうか、丸1日起きてこなかった。起きてきた直後に、遠藤先生のことですごく慌てていたけど、「私がメールしておいたから大丈夫」というと、あっさり納得してくれた。実はお姉ちゃんは完璧主義そうに見えて少し抜けているところがある。それをうまく利用しただけの話。

 あたしたちが働き始めた頃、先生……いや、兄はあたしたちの家にやってきた。学校のほうにはうまいことやってくれたようで、処分は免れたそうだ。
「先生……ううん、お兄ちゃん、今日……」
「わかってるよ」
 ぽんと兄があたしの頭を撫ぜる。お姉ちゃんにもこんなことしてるんだろうな……むかつく。

 お姉ちゃんがお風呂から上がったあと、作戦実行だ。ちなみにお姉ちゃんはとっくの昔にあたしのベッドに縛り付けてある。
「兄さん」
「はい?」
「そろそろ……」
 そう言って、部屋のドアを開ける。手錠をかけられてベッドに固定され、例の薬を塗られたお姉ちゃんが腰をもぞもぞと動かしている。まるで「早く欲しい」とでも言うかのように。
「ひなた、これは……」
「先生、それでもお姉ちゃんの彼氏?気づかなかったの?あたしだよ、ひなせだよ。あのとき3人でしたいって言い出したのもあたし。先生に抱かれたのもあたし。ほんっとに先生ってば鈍いんだから」
 そして、引導を渡してやる。
「ほら、お姉ちゃんさっきからずっとこの調子で欲しがってるの。すごく淫乱だよね。あたしの前でもいつもこうなんだよ」
「うー、うー!」
 否定しようとするお姉ちゃんだけど、目隠しをされ、口にボールをかまされた状態ではそれすらもかなわない。
「先生知らなかったでしょ。お姉ちゃんってね、こうすると喜ぶんだよ」
 お姉ちゃんに近づくと、シーツがすっかり濡れているのが分かる。
「あはは、お漏らししてるみたい。お姉ちゃん、そんなに欲しいの?」
 あたしの乾いた笑いにぶんぶんと首を振るお姉ちゃん。でも時既に遅しって言葉、あるよね?もう先生もいるんだよ?
「壊れてる……ひなせ、こんなの壊れてるじゃないですか」
「今更兄貴面しても遅いの。ほら、早く入れてあげて。でないとあたしから先にしちゃうよ?」
 そう言って取り出したのは例の玩具。かませていたボールからお姉ちゃんを解放し、玩具を何も言わずにお姉ちゃんのそこに沈めていく。
「あ、あはぁ……!それ、きもちいいよぉ……!」
 あまりにも濡れすぎているからか挿入も回転運動もスムーズだった。後ろで先生がごくりと生唾を飲み込んだのが分かった。
 あたしも服を脱ぎ捨てて、二人でつながれる玩具に切り替える。そして、すっかり濡れそぼったあたしのそこに押し付け、お姉ちゃんとひとつになる。
「ひなせ、ひなせぇ!ダメ、壊れちゃうよ、そんなにしないでぇ……!」
「んあぁぁ!お姉ちゃん、見てるよ、お兄ちゃんが見てるよぉ!」
「知ぅ、見ちゃ嫌、嫌……!」
 やがて見ているだけでは物足りなくなったのか、先生……兄はあたしたちに近づき、同時に二人分の感じる突起を刺激してくる。
「ひゃうっ!知、そんなこと、いや、あああああっ!」
「せんせぇ……気持ちいい、もっと、もっとそこくりくりしてぇ!」
 それぞれ違う反応。でも共通するのは姉妹ともに淫乱であること。同じ顔をして同じ身体をしたあたしたち双子は、そんなところまで共通していた。
「ひなせ、それを抜いてください。いいことを思いつきました」
 そして、その兄も淫乱。
「ひなせは後でたっぷり可愛がってあげますから、これで我慢してくださいね」
 さっきまであたしがお姉ちゃんを陵辱していた玩具を、今度はあたしの中に挿入し、動きの強さを最大にしていく。
「あはああああダメ、気持ちいい!もっと、ああ、強くして、んはぁ!」
「抜けないように押さえていてくださいね」
 言いながら、お姉ちゃんの脚をこれ以上ないぐらいに割り開き、兄自身を挿入していく。
「んあああああっ!くる、さとるのが、くるぅ……!」
 それだけでイったのか、お姉ちゃんは全身をがくがくと震わせて兄にしがみつこうとする、けど、固定された手ではそれすらもかなわない。兄の律動によって与えられる快感からは逃げられないのだ。
 兄の動きも遠慮がない。お姉ちゃんが壊れるほど、力強く腰を打ち付けていた。その動きに合わせてお姉ちゃんは涎を垂らしてまで歓喜の声を上げる。腰も兄の動きに合わせてより深くまで入るようにうごめいている。
「あはぁ、ん、さとるぅ……そこ感じるの、ら、らめぇ!こわれるうぅぅ!」
 お姉ちゃんはもはや半狂乱で快楽に溺れていた。ぐちゅぐちゅと響く、あたしとお姉ちゃんのあそこの水音。いつもあたしが過ごしている空間は、酷く淫靡な雰囲気に包まれていた。
 ううん、お姉ちゃんとこの部屋でするようになってから、空気が変わったんだと思う。
「いやあああ!とぶ、とんじゃうよぉ!あ、ああああああああ!!」
 お姉ちゃんが絶頂に達してまもなく、
「ああ、あああ、いやだ、こわれるううううう!」
 あたしも絶頂を迎え、更に先生もお姉ちゃんの中に自身の欲望をどくどくと白く濁った液体にして吐き出す。
 先生はそれでも容赦なく、あたしの中に埋もれていた玩具を引き抜き、
「ひなたのほうには栓をしないといけませんね」
 そう言って、白いものが溢れているお姉ちゃんのそこにずぶずぶとそれを押し込んでいく。
「あひっ、だめ、それは……っ!子供できちゃうよぉ……!
「大丈夫ですよ。あなたの身体のサイクルは計算済みですから。ね、ひなせ?」
 あたしもほとんど似たようなサイクルだ、問題はないだろう。
「さあ、今度はひなせの番ですよ」
 うつ伏せにされて、腰を高く上げられる。隣ではお姉ちゃんがよがり狂って脚の間からぐちゅぐちゅと更に淫らな音を立てている。
 それに欲情して更に濡れたところで、ぐっと先生のものがあたしの中に押し入ってくる。
「っきゃあああああ!」
 お姉ちゃんが挿入された瞬間にイったのも納得だ。先生のものは前よりずっと質量を増していて、あたしにはちょっと苦しいぐらいだった。でもそれが気持ちよくて、あたしの頭の中で火花が散るような感覚が襲ってくる。
「まだ終わりませんよ」
 先生の言葉どおり、さっきお姉ちゃんにしたような激しい律動を加えてくる。更に腰を回してあたしの一番気持ちいところを探り、あたしが強く反応したところを重点的に攻めてくる。
「だめ、だめなの、先生、そんなじゃ足りないよぉ……!」
「あふ、あぁん、や、おなかのなかで、ぐるぐるまわってるぅ……」
 隣ではお姉ちゃんのそんな声。それだけでまたイってしまいそうだ。
 やがてあたしの中でまた波が押し寄せてくるような感じがしてきた。
「せんせぇ、あ、あ、あ、ダメ、い……いやぁああああああ!」
 どくどくと熱いものがあたしの中に注ぎこまれる。
「は、あは、もうだめ、いく、いっちゃうよぉ……!兄さん、ひなた、もっと見て、淫乱な私を見てぇぇぇ!」
 ドクンとお姉ちゃんの身体が跳ねた後、お姉ちゃんは気を失ったのかそれ以上動かなくなってしまった。

 そして、あたしたち兄妹の歪んだ生活は始まりを告げたのだった。

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 長かった「Wie ein Alkpdruck」もこれでおしまいです。
 最後のあのシーンが書きたいがためだけに書き始めたとか言うとんでもない作品です。
 ついでに言うなら当初は生き別れの父親という設定だったのですが、それだとあんまりだと思ってやめた経緯があります。妹も最初はいませんでした。
 更に最後のあのシーンもなくて、学校にばれそうになって「実の娘だから一緒に暮らしていいでしょう」的な展開になるはず…でしたが、ノートを紛失してしまったのでそれはまた別のお話ということで。
 なお、睡眠導入剤等の向精神薬を他人に譲渡することは薬事法で禁止されています。
 それではここまで読んでいただきありがとうございました!

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