ヒュウガは作業に夢中になると返事もろくにしなくなる。
シグルドは彼の作業が一段落つくまで、ベッドに寝そべって雑誌を広げながら待つことにした。
苦労して手に入れた限定品のチョコチップクッキーをかじる。
雑誌を眺めるのにも飽きてヒュウガを見ると、頬にぱさりと落ちかかった髪を無意識に後ろに流していた。
ぱさり。…すっ。ぱさり。…すっ。
見ているだけで非常にうっとうしい。
集中している時は余程のことがないかぎり反応しないのをいいことに、勝手に髪をいじる。
1つに結ぶには長さが足りないので、横と頭頂部の髪だけ後ろで纏めてみる。
これで邪魔にならないだろう。
なんとなく物足りない気がして部屋を見回す。
ああ、これだとちょうどいいかもしれない。
†
「先輩、おはようございます」
「おう」
ジェサイアはそのまま通り過ぎようとして、妙なものを見た気がして振り返る。
「ヒュウガ、なんだその頭は」
首をかしげた拍子に両サイドに少しだけ残された髪が揺れる。
「どこかおかしいですか?」
ヒュウガと一緒に居たカールが言う。
「そういえば変わった髪形だな」
「全部纏めるには長さが足りないんです。これだと邪魔にならないし」
「そうか」
「納得するなカール。なんでリボンまで結んでるんだ」
それも赤いサテンの細いリボンをちょうちょ結びにしている。
「服装規定には違反していないはずですが」
「それ以前の問題だ。とにかく授業中及び演習中はリボンを外せ。監督官の俺のモラルが疑われる」
ヒュウガはくるり、とその場で回転してみせる。
「似合いませんか?」
「いや、似合ってるんじゃないか」
「カール、余計なこと言うな!だいたいそんなリボンどこで手に入れたんだ」
「シグルドがくれました。クッキーの入ってた袋に付いてたそうです」
「熨斗でもつけて返しとけ。…とりあえず、それは外せ。いいな」
「はい」わざとらしくため息をついてみせて続ける。
「せっかく結んでくれたのに。きっと残念がりますね」
聞かなかったことにしてジェサイアは立ち去ろうとした。
「シグルドに結ってもらったのか」
「だからカール、余計なことを言うんじゃない!!」
†
「……ということがあったんだが。俺の教育方針がおかしいのか?」
それはそれは楽しそうにラケルが笑って、片手で自分の髪を持ち上げてみせる。
「ヒュウガがしてたのはこんな感じ?」
「ああ、そうだな」
「そ、それは…。あの子達、この髪型の呼び方知らないのね」
なんとなく嫌な予感がした。
「いや、ラケル、教えてくれなくていい」
「せっかくだから聞きなさい。お嬢様結びって呼ぶのよ!」
次の日、こっそり求人雑誌を買う次期ゲブラー総司令が目撃されたとかされないとか。
了
ちゃげさんが描いてくださったお嬢様結びのヒュウガ。
藍晶が書いたろくでもない続編があります。監督官の憂鬱です。
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