俺が新たに手に入れた情報で、俺達下っ端にも正式なそれが回ってくる。

桂の仲間だと思っていた銀髪の男についてだった。

坂田銀時、攘夷戦争時代は白夜叉と呼ばれ晋助様と共に戦った戦友。

だが今は違う、アイツは…白夜叉は完全に俺達鬼兵隊の敵となったらしい。

俺の勘は正しかった、晋助様と肩を並べられるあの強さは間違い無く脅威だ。

そして今日、俺は万斉様から新たな指令を貰う。



、お通殿のファンクラブに入会せよ」











黒の行方








面接会場は公園だった。

もう一度指定された住所を見てみるが、間違いなく公園だった。

何でこんなことになったのか、俺は頭痛がしてきて額を押さえる。



『ファ、ファンクラブ…?お通殿って、万斉様がプロデュースしてる寺門通の事ですよね?』

『そうでござる』

『ござるって、じゃあ俺なんかが行かなくても万斉様の方が詳しく……』

『通称、寺門通親衛隊。その隊長の志村新八は、普段白夜叉の元で働いている』

『……白夜叉』

『拙者はお通殿のプロデューサー故、接触は不可能。ぬしが適任だ』

『…俺が潜り込んで、白夜叉の動きを探ればいいんですね?』

『万事屋を直接監視するよりは足が着きにくい、志村新八から…じっくり情報を搾り上げてくるでござる』



とは言ったものの、実際どうすればいいのか見当もつかないんだけど。

第一何でファンクラブに面接があるんだ?

ファンクラブって希望すれば誰でも入れるモンじゃないのか?

そもそも俺、ファンじゃないし。

……いや、これは白夜叉の情報を得るための大切な任務。

手抜きは許されない、潜入するなら身も心の寺門通のファンにならないと。

で、実際どうすれば?のリピートだったりする。



(あ、あれか?)



公園のベンチに、法被を纏った数人が待機し一人がベンチを独占して座っている。

俺は確認するためにそちらへと向かった。



「あのー、もしかして寺門……」

「遅いィィイ!!」



ベンチの横に立っていた二人が突如怒鳴ってきた。

本当にいきなりだったので、俺は頭がついていかずその場で固まる。

人外的な言語を唾と共に捲し立てる二人に対し、真ん中に陣取っている男が手を上げて制止させた。



「やめろお前ら」

「ですが隊長、コイツ面接受けに来たくせに俺らよりも遅く…!」

「遅刻はしてないだろ。まあ確かにアレだけどな」



隊長と呼ばれた男は俺やどう見てもこの男達よりも年下、簡単に言えば子どもだった。

……この子ども、春雨の宇宙船で坂田銀時と一緒にいた内の一人じゃなかったか?

隊長と呼ばれたことからも見て、コイツは志村新八に間違い無い。

どうして情報を探ろうかと考えていた俺の前に、志村新八は静かに立ち上がった。



「お前ェェエ!俺達よりも遅れて面接に来るとはどういう了見だゴルァァァ!!」

「は?え、ちょっ……!?」



俺と彼はそれなりに身長差があります。

なのにどうして、俺は志村新八に胸倉を掴まれガックンガックンされているんですか?

な、何だよコレ。志村新八ってこんなに強かったのか!?

意味不明なんだけど、俺の足が地面から離れそうになって首絞まってるとか意味不明なんだけど!



「親衛隊ってのはなァ、六時間前行動が当たり前なんだよ!お前はこの時点で弛んでんだよ!!」

「ちょっ…、待っ…、苦し……!」

「お前はお通ちゃんのライブに10分前行動で間に合うと思ってんのかァァア!」



ま、間に合うもんじゃないの?

つーか間に合ってんじゃん、10分前行動なんだし。

抗議は首絞まってるせいで出来ないけど。



「お通ちゃんのCD買うのにお前は開店10分前に並ぶのか?コンサートチケット買う時も10分前に買うのか?ァア?」



言ってる事滅茶苦茶なんだけど、何この無駄な気迫!

怖ぇーよ、久々に感じたよ怖いなんて感情。

密偵の仕事でもここまで怖いとか思わないから、いやこれも密偵の仕事なんだけどさ。

未知の生物はどう対処していいか分からない、だからこそ本能的な恐怖が生まれる。

拝啓万斉様、俺はここで殉職するかもしれません…。



「そんな生半可な気持ちでお通ちゃんの親衛隊員になれると思ってんのかァァ!帰れボケェェ!!」

「帰ら…ねぇ!!」



苦しい息の中、俺は火事場の馬鹿力的に志村新八の腕を引き剥がす。

……俺は鬼兵隊の下っ端だ、密偵の役割をもらう事もあるが晋助様への貢献度は低い。

いくら情報を集めてきても、作戦時の戦力にはならない時点で俺は役立たずなんだ。

もちろん努力はしてる、だがそれだけじゃ足りない。

あの時まで戦いとは無縁な生活をしてきた俺が、本当の戦いを生き抜いてきた幹部方に勝てるわけがない。

だから、だからこそ俺は与えられた任務を完璧にこなしたいんだよ。

かりそめとはいえ生きる目的を与えてくれた晋助様に、鬼兵隊に恩を返したいから。

だから……



「俺は帰らねぇ!あの人に恩を返すためには、俺はこの親衛隊に入るしかないんだよ!!」

「……ッ!」

「お前、隊長に何してる!!」



俺はその場で土下座した。

頭上から、志村新八とムサイ二人が驚きで息を呑むのが分かる。



「親衛隊に入ったところで、何をすればいいのかすら俺には分からない。六時間前行動も正直出来る自信が無い。
 だが、それでも俺には通したい芯がある!ここに入隊して、返さなきゃいけない恩があるんだ!!」



昼の公園なのに俺達以外の気配が消え、葉っぱが風にさらわれる音だけがやけに響く。

俺は地面に額をつけたまま、硬く目を閉じて腹の底から叫んだ。



「お願いします、俺を入隊させて下さい!俺を親衛隊員として認めて下さい!!」



……どれ程の時間が過ぎたのだろうか。

返答は無い、ただ風が吹き抜けていくだけだ。

硬く目を閉じた俺の耳に入ってきたのは、踵を返して遠ざかっていく足音のみ。

驚愕に目を開けもう一度叫ぼうと顔を上げた時だった。

目の前に布が被さり、前が見えなくなる。

慌てて取り払った布は法被だった、寺門通親衛隊と書かれている。



「…その熱意は受け取ったよ、特別に法被を纏う許可を出す」

「い、いいんですか隊長!?」

「僕もそうだった、僕もお通ちゃんに恩を返したくて…この親衛隊を作ったんだから」



いや、俺別に寺門通には恩なんて受けてないんですけど。

今は余計なこと言わないほうが身のためだな、よし…黙ってよ。

このまま行けば親衛隊に入隊出来そうな上、感動話で終わりそうだし。



「お前ら!新入りに親衛隊隊規を叩き込んでおけ!!」

「了解です、隊長!!」



その後、俺は志村新八のアドレスを手に入れた。

それだけならば良かったのだが、何故か軍曹を名乗る男のアドレスまで強制的に登録させられる。

しかも寺門通関係の商品についてのメルマガにも登録。

更に着信音は全て寺門通の着メロ、着うたに変更させられた。

俺に止める術は無い、ただ黙ってデータ量が増えていくケイタイを半笑いで眺めていた。



「お前、アドレス帳真っ白だけど友達とかいねーのか?」

「いや…まあ色々あって……」

「気持ち分かるぜ、つーかお通ちゃんがいれば別にいいよなー」

「それからよ、ここの店の品揃え最高だからメルマガ登録しとけって!マジ最高だから!」

「だったらコッチも登録しろよ、たまにお通ちゃんの待ち受け入ってくるし」

「マジかよ!俺のにも登録しろよそれ、てか隊長に知らせねーと!!」



万斉様、やっぱこの任務だけは降りさせてもらっていいですか?

駄目?そうですよね…。








>>





楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル