紫陽花の憂鬱・4



「まさか・・・そんな・・いや・・・でも・・・」
彼の口から出るのは驚きと否定の言葉だけ。
確かに、いきなり言われて信じろっていう方が難しいよね・・・。
現に私だって、自分の感情に戸惑っているんだから。
でも、これ・・・一目ぼれっていうものなのかな。
初めて見た時から気になってたのは・・・そのせい?

「あのね・・・神様、何か言ってた?」
――――私・・・今なに言った?
ものすごく、変な事を言ったような・・・。
しかし、彼は普通に応えた。
「それがね、僕、妖精になるんだって」
「は?」
その答えに少し心配してしまったが・・・これも彼の不思議な魅力と・・・言えなくもない。
これが『惚れた弱み』ってやつなのかな・・・。
「好きな人に半分心を残して、残りの半分で更に愛して・・・」
彼の言葉は止まらない。
「三年たって・・・そして五十年眠りについて・・・それで妖精になれるんだって」
あまりにも真面目に言うので、笑うのすらはばかられた。
「そうだ・・・もし僕を愛してくれる人がいたら必ず伝えなさいって。神様が」
「その言葉の意味とかは・・・聞いたの?」
「意味は・・・ごめん、聞いてない」
あんまりにもしょんぼりと言うので、それ以上何もいえなくて二人でうつむいた。
と、彼が何かを見つけたみたいで、小さく声を出して何かを指差した。

「ほら、そこ、蝸牛」
それは、この軒先の紫陽花の葉の上を気持ち良さそうに、のんびりと這っていた。
そういえば・・・私の今日の服装、蝸牛に似ているのかもしれない。
茶色のスカートに薄茶色のブラウス・・・しかもご丁寧にリュックまでしょってしまっている。
「ねね、蝸牛と紫陽花ってお似合いだと思わない?」
やっぱり・・・そうきたか。
半ば予想はしてたんだけどね・・・。
「僕が紫陽花の・・・妖精になったら・・・」
「うん?」
「静子さんは蝸牛の妖精になって・・・ずっと一緒にいられたらいいのにな・・・」
私が妖精?しかも蝸牛・・・これは喜んでいいのかどうなのか・・・。
「神様の言葉の意味はわからないけど・・・でもお願いがあるんだ」
「うん、なに?」
「三年後・・・またここで僕を待っててほしいんだ」
「それは神様の伝言なの?」
彼はゆるゆると首を振った。
と、突然彼が叫んだ。


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