新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第74話

「えっ、アスカ。なっ、何を言ってるのさ。」 ふふふっ、いいわね。シンジったら思いっきり動揺してるわ。攻めるのは、今しかないわ ねっ!さあ、一気に行くわよっ! 「ふんっ!どうせ聞いたんでしょ!アタシが最初は男に優しくして惚れさせて、惚れたが 最後トコトンこき使うって!でもね、それって誤解なのよ!アタシはちゃんと付き合った 人なんていないし、相手が勝手にアタシの言うなりに何でもしてくれただけなのよっ! 」 アタシは、一気にまくし立てたの。でも、シンジは一体何が起きたのか分からないって言 う感じなのよ。 「えっ、ええっ!」 「えっ、その話じゃないの?じゃあ、アタシが男を使い捨てにしているっていう話でしょ。 それはねえ、男に振られた女達が言いふらした嘘なのよ。信じないで。」 「なっ、何を言ってるんだよ、アスカ。」 よしよし。シンジったら、思いっきり動揺しているわね。でもね、まだまだこれからよ。 「じゃあ、アタシがとっても嫉妬深いっていう話?それも嘘よ。だって、アタシは男の子 と付き合ったことはないもの。いっつも周りのひがみっぽい女の子が流した噂を信じて、 アタシがちょっと気に入った男の子は、みんな離れていったもの。」 「ちょ、ちょっと待ってよ、アスカ。何を言ってるんだよ。」 「はあ?シンジも嘘が下手ねえ。アタシと別れようって、訳の分からない話をデッチあげ てさ。一体、どこの誰にアタシの悪い噂を吹き込まれたのよっ!えっ!正直に言いなさい よっ!」 アタシは、シンジの首を締め上げたわ。 「悔しいっ!一体誰が、シンジに変なことを吹き込んだのよっ!」 そう叫びながら、シンジの体を揺すったの。そうしたらね、シンジったら、とっても苦し そうな顔をしたのよ。 「ア、アスカ。く、苦しいよっ!止めてよっ!」 「はっ!アタシったら、何てことを…。」 アタシは、我に返ったフリをして、シンジから手を離したわ。 「ア、アスカ…。」 「ふふっ、もう分かったでしょ。アタシはね、可愛いからって周りの女の子から目の敵に されて、悪い噂を流されて、それで誰とも付き合えなかったのよ。でもね、アタシにも原 因があったの。アタシって感情の起伏が激しいから、その手の話を聞くと逆上して、相手 を締め上げちゃうのよね。だから、少し仲が良くなっても、愛想尽かされちゃうのよね。 あ〜あ、もう少しシンジを騙せたらなあ。シンジだったら、もう少ししたら締め上げても 笑って許してくれるようになるって思ってたんだけど、ばれるのがちょっと早かったよう ね。あ〜あ、こんな乱暴な女の子なんて、シンジは嫌でしょ?これでシンジにも嫌われち ゃったわね。」 「ア、アスカ…。」 「いいのよ、シンジ。猫を被ってシンジを騙していたアタシも悪いんだからね。でもね、 シンジ。女の子と別れ話をする時は、もっとちゃんとした嘘をつきなさいよ。そうしない とね、相手の女の子は、とっても、とっても、傷つくのよ…。」 アタシはそこまで言うと、顔を下に向けたの。そして、悲しいことを頭に浮かべて、涙を 流したの。さらに、肩を震わせてすすり泣くようにしたのよ。そうしたらね、シンジった ら大慌てよ。ぷぷっ、笑っちゃうわね。 「ア、アスカ。いや、違うんだ。う、嘘じゃないんだ。本当に、ぼ、僕は…。」 ふふふっ、シンジったら慌てちゃって。そりゃあ、そうよね。ついさっきまでは、弱みを 握られて脅かされているアタシを助ける、良い人だって思い込んでいたんですもの。それ が、一転して嘘をついて女の子を傷つける悪者扱いになってしまったんだから。シンジは、 基本的に良い人だから、こういうのは結構堪えると思うのよ。 「アタシのこと、嫌いになったんでしょ…。いいのよ、シンジ…。アタシは…嫌われるの は慣れてるから…。でもね、シンジだって嘘をついたんだよ…。アタシを不安にさせない って…、最初に会った日に…言ってくれたじゃない…。アタシ、嬉しかったんだから…。 だから、シンジのために一所懸命頑張ったんだよ…。それだけは信じてよ…。」 「そ、そうじゃないよ。僕は本当に…。」 そうシンジが言いかけた時に、アタシは大声で怒鳴ったわ。 「もうやめてよっ!アタシが嫌いになったんだったら、嫌いだって正直に言ったらいいじ ゃないのっ!グダグダ嘘を言うほうが、よっぽど女の子は傷つくんだからっ!もう嘘をつ くのはやめてよっ!アタシをこれ以上惨めにさせないでよっ!」 そうして、わあわあ言って泣いたのよ。そうしたら、シンジは恐る恐る言ったの。 「ア、アスカ、聞いてよ。僕はアスカのことが嫌いになったんじゃないよ。それどころか、 今だって、アスカのことを好きだよ。本当だよ、信じてよ。」 だから、アタシは顔をあげてわめいたの。 「信じられるわけないでしょっ!この、嘘つきっ!アタシのことが好きだったら、本当に 好きだったら、どんな理由があったってアタシと一緒にいたいはずよっ!それなのに、ア タシと一緒に住まないですって!この、大嘘つきっ!アンタがそんな酷い奴だ何なんてっ! アンタなんか、アンタなんか、好きになるんじゃなかったっ!!!」 そうして、さらに声をあげてわあわあ泣いたの。もちろん、フリよ、フリ。でも、シンジ には効果満点だったみたい。 「あっ…。そっ、そんな…。本当なの?アスカは本当に僕のことが好きだったの?」 「アンタなんか、大っ嫌いよっ!下手な嘘ついて別れようとするなんてっ!アタシのこと を嫌いになるんだったら、アタシのこと好きだなんて言わないでよっ!喜んで舞い上がっ ていたアタシが、まるでバカみたいじゃないっ!」 「ア、アスカ…。」 「もういいっ!もう、男なんか信じないっ!アタシ、決めたっ!!もう二度と、男なんか 好きになるもんかっ!!!アンタなんか、一生憎んでやるっ!!!!」 アタシは、一層大きな声でわあわあ泣いたのよ。そうしたらね、シンジも泣きだしちゃっ たのよ。そしてね、涙をぽろぽろ流しながら言ったの。 「ごめんよ、アスカ。ぼ、僕って最低だ。でも、僕は本当にアスカのことを思って、アス カのためにと思って、それだけは信じてよ。」 でも、アタシは即座に言ったわ。 「嫌よ!誰が信じるもんかっ!このっ、最低男っ!」 「そうか…。ごめんよ、本当にごめんよ。アスカを傷つけるつもりは無かった。泣かせる つもりは無かった。それなのに、僕は本当に馬鹿だ、大馬鹿だ。そうだよね、アスカを信 じなかった僕を、アスカが信じてくれる訳がないか。はははっ、僕はなんて馬鹿なんだ。 人を信じなきゃ、信じてもらえないなんて、当たり前だもんね。そんな当たり前のことが 分からない僕は、大馬鹿だよ。でもね、アスカ。僕は、嘘つきじゃない。もう、信じてく れないかもしれないけど、嘘つきじゃない証拠に、僕の一番大事なものをあげる。」 シンジはそう言うと、海の中に飛び込んだのよ。へっ?何よ、この展開は。てっきりシン ジが泣いて謝って、アタシが許しておしまいにしようと思ったのに、一体、なんなのよっ! アタシの計算も、時には狂うこともあるのね。 つづく(第75話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  なんと、シンジ。海に飛び込んでしまいました。でも、シンジって泳げないんじゃ…。 2003.6.17  written by red-x



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