新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第71話

「キャッホーッ!」 水上スキーって、結構楽しいわね。アタシは思わず叫んでいたわ。バレーボールの後は、 ボートのはずが、結局ボートを後回しにすることになったの。そして、今は水上スキーっ ていう訳よ。 「うわあ〜っ!」 もうっ、シンジったら怖がっているわ。あんまり楽しくなさそうね。本当にしょうがない わねえ。なんとかしようかしら。 「シンジ!もっと楽しみなさいよっ!」 「だって、怖いんだもんっ!しょうがないじゃないかっ!」 まあったく、本当にしょうがないわねえ。本当は徹底的に鍛え直したいところだけど、今 は我慢、我慢と。アタシは、怒鳴りたいのを我慢して、シンジに近寄っていったわ。 *** 「どうしたのよ、シンジ。楽しくないの?」 アタシが聞いたら、シンジは疲れた顔をしてこう言ったわ。 「だって、水が怖いんだよ。だから、水に落ちない様にって力んじゃって、どうしてもう まくバランスがとれないんだ。」 ふうん、そう言う訳ね。金槌っていうのも困ったものね。 「でもさ、風を切る感覚がとても気持ちいいわよ。」 アタシは少しでもシンジの気を引こうと思って言ったんだけど、効果は無かったわ。 「でも、僕はもういいや。あんまり楽しくないし。」 もう、シンジがそんなつまらなそうな顔をしていたら、楽しい旅行が台無しじゃない。あ あ、もうっ!しょうがないわねえ。アタシが一肌脱ぐしかないのかしら。 「そんなこと言わないで、もう少しやろうよ、シンジ。」 「ええっ、でも…。」 「シンジはさあ、バランスがうまく取れないんでしょ。だったら、うまくいくように練習 すればいいのよ。」 「ええっ。こんなところまで来て、練習なんかするの?」 やっぱり、シンジったら思いっきり嫌な顔をしたわ。こうなったら、シンジには色仕掛け しかないわね。あんまり気は進まないけどね。 「あのね、こういうのはどう?シンジがね、アタシにくっついて水上スキーをするのよ。」 「えっ、どういうこと?」 「自転車の2人乗りの要領よ。アタシの後ろにシンジがしがみつくっていうのはどうかし ら。そうすれば、シンジは怖い思いをしなくて、純粋に水上スキーを楽しめるじゃない。 風を切る感覚も味わえるし。」 「ええっ、でも、なんかみっともないような気がするなあ。」 んもう、何言ってるのよ、まったく。しっかし、参ったわよね。これくらいのエサじゃ、 食いつかなくなってきたものね。しゃあない、気は進まないけど、シンジがつまらない思 いをして、それがみんなに伝染して、旅行がお通夜みたいになっても困るから、アタシが 犠牲になるしかなさそうね。ああっ、アタシったら、なんてけなげなのかしら。 「あっそう。いやならいいんだけどね。でも、意外だわ。シンジって、エッチじゃなかっ たのね。」 「へっ?どういうこと?」 やっぱり、シンジはエサに食いついてきたわ。 「だって、そうじゃない。アタシの後ろから掴まる訳でしょ。でも、アタシの両手はふさ がっているから、アタシの胸を揉み放題じゃない。そんなチャンスをみすみす逃すなんて、 普通のスケベな男は絶対にしないもの。」 「あっ!」 そう言って、シンジは固まったわ。ふふふっ、今にも顔に『しまった!』って文字が浮か んできそうだわ。 「あ、あのさ、アスカ。」 「なあに?」 「やっぱり、アスカがお願いするならさあ、言うことを聞こうかなあ、なんて思ったりし て。」 ぷっ!シンジったら、分かりやすい性格ね。でもいいわ、正直で。まあ、いいわ。ここは、 アタシが折れてあげるわ。 「うん、じゃあ是非お願いするわ、シ・ン・ジ。」 アタシがそう言った瞬間、シンジは極上の微笑みを浮かべたわ。 *** 「うわあ、アスカ。潮風って気持ちいいね。」 「でしょ。やってみて良かったでしょ。」 「うん、ありがとう、アスカ。」 結局、あれから1時間も水上スキーをやっているのよ。それも、シンジったら超ご機嫌な の。それもそのはずよねえ、シンジったら、アタシの胸をしっかりと掴んでいるんだから。 それも、水着の下からなのよね。 えっ、みんなに変に思われるんじゃないかって?それがね、残念ながらそうじゃないのよ。 ライフジャケットを着ているし、シンジも巧妙に胸を掴んでいるから、一見しただけじゃ あ、分からないのよ。 本当はね、アタシのお腹のところでしっかりと両手を合わせてもらった方が安全なんだと 思うんだけど、シンジがね、こっちの方がいいって言うのよ。 アタシもね、水着の上からならいいかなとは思っていたんだけど、さすがに直ぐにはウン とは言わなかったの。でもね、シンジが『万一、水着を掴んで破ったらまずいから。』っ て粘るもんだから、妥協したのよ。おっと、シンジが右の胸を揉んだわ。 右の胸を揉んだ時は、右に曲がってっていう合図なの。そう、もう一つの理由がこれよ。 シンジの思った通りの方向に行けるからっていう訳よ。だから、アタシも反論しにくかっ た訳。男ったら、スケベなこととなると本当に知恵が回るわね。感心しちゃうわ。 アタシが上手く右に方向転換すると、ヒカリと鈴原の姿が見えたわ。ヒカリ達は、アタシ 達が一緒にやってるのを見て、真似をしたのよ。でも、アタシ達と逆で、ヒカリが後ろか ら掴まっているんだけどね。 ちょっと離れたところに、ユキ達がいるわ。ユキ達も同じで、ユキが後ろから掴まってい るの。 「ヒカリ〜!しっかり掴まりなさいよ〜っ!」 「う〜ん、分かってる〜っ!」 ふふふっ、ヒカリったら喜んでるわ。遠目にも分かるほどにね。やっぱり、アタシとシン ジが一緒にやったのは大正解ね。少なくとも、ヒカリにとってわね。さて、ユキはどうか しら。 「ユキ〜っ!どお〜っ!」 「は〜いっ!風が〜っ!気持ちいいですう〜っ!」 ふうん、ユキも楽しんでいるじゃない。いいことだわ。こうして、アタシの貴い犠牲の上 に、この旅行は大成功を収めそうだわ。 つづく(第72話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  なんと、シンジ。物凄くラッキーです。今夜は嬉しくて眠れないでしょう。 2003.5.29    written by red-x



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