新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第38話
「キンコーン、カンコーン…。」
ふう、やっと5時間目が終わったわ。退屈な授業も、あと1時間で終わりね。アタシは、
ヒカリと買い物をして帰ろうかなあと思って、ヒカリに声をかけようとしたわ。でもね、
ちょっとした邪魔が入ったの。
「あ、あのう、惣流さんですか。」
アタシが声のする方を見ると、見知らぬ女の子が立っていたわ。
「ええ、そうよ。何か用かしら?」
「実は、惣流さんは運動神経が良さそうだから、部活の勧誘にと思って。私、テニス部の
森川って言います。どうですか、惣流さん。話だけでも聞いてもらえませんか?」
だが、アタシは首を横に振ったわ。
「ごめんなさい。アタシは、保護者から部活は禁止されているの。」
「えっ、どうして?」
「放課後は、保護者から色々と頼まれごとがあってね。だから、部活は出来ないのよ。」
「例えば、週に2〜3回、いいえ1回でも駄目ですか?」
「う〜ん、駄目だと思うけど。でも、テニスねえ。ちょっとやりたいような気もするけど、
アタシ、他にどんな部活があるのか知らないし、今は返事は出来ないわ。」
「そ、そうですか。」
その女の子は首をうなだれながら、去って行ったわ。
でも、テニスねえ。アタシはバスケやバレーの方が良いけど、後でヒカリやシンジの意見
を聞いてからでも遅くないわ。それ以前に、ミサトが首を縦に振るかどうか、自信が無い
しね。
でも、そこでアタシは閃いたの。シンジに部活でもやらせようかなって。もちろん、訓練
があるから、週に1〜2回出られれば良い方だと思うけど、友達も増えるし、良いことだ
と思うのよ。
でも、そうなると問題になるのが、相田、鈴原、ヒカリよねえ。特に相田かしら。でも、
相田は捨ておいても構わないかしら。鈴原はスポーツなら何でもOKのようだし、ヒカリ
も普通の運動神経を持っているように見えるわね。
ようし、善は急げって言うじゃない。ヒカリに聞いてみようっと。
「ねえ、ヒカリ。ヒカリは、何か部活に入ってる?」
「ううん、入っていないけど。」
「じゃあ、もし入るとしたら、何部が良い?」
「そうねえ、バスケ部かテニス部かしら。」
「ふうん、どうして?」
「バスケは、好きだからかしらね。テニスも、そこそこ好きだから。それに、テニス部っ
て、男女の仲がとても良いのよ。」
あら、良いこと聞いたわね。アタシは閃くものがあったわ。
「ふうん、じゃあさ、みんなでテニス部に入らない。鈴原やシンジも誘ってさ。でも、前
もって言っておくけど、アタシとシンジは忙しくて、毎日は出られないけど、それでもい
いかしら。」
「そうねえ、良いかもしれないわ。でも、多分鈴原は入らないって言うと思うの。」
「えっ、なんでよ。」
「テニスなんて、軟派なスポーツは嫌だって言うと思うの。」
「じゃあ、どうしようか。」
「バスケだったら、鈴原も良いって言うと思うんだけど。」
「そうねえ、でも、シンジにバスケが出来るかしら。」
「あら、駄目なの?」
「う〜ん、後で聞いてみる。」
そこでチャイムが鳴って、アタシ達の話は終わったわ。でもね、授業中にメールでシンジ
に聞いてみたの。そうしたら、大きいボールは嫌だって言っていたわ。これで、バスケも
バレーも駄目ね。
でね、テニス部に入ろうよって頼んだら、誰かが一緒なら良いよって言うのよ。アタシが
一緒だって伝えたら、それなら入るって言うのよ。これで、シンジの方はOKね。
そんなことをしていたら、誰かからメールが来たのよ。一応開いてみたら、相田からだっ
たわ。えっ、なになに。知り合いの女の子から頼まれたんだけど、テニス部に入るのを検
討してくれないかって。
何か、良いタイミングね。アタシは、理由を詳しく教えるようにって返事をしたの。その
答はこうだったわ。相田が片想いしている女の子がテニス部にいて、その子からアタシに
テニス部に入るように頼んでくれないかって言われたっていうのよ。
次に、相田と鈴原が何か部活に入っているのかどうか、聞いてみたの。そうしたら、特に
入っていないって言うのよ。これは良い条件が揃ったわ。アタシは、相田が一部嘘をつい
ているって分かっていたけど、あえて話に乗ることにしたの。
えっ、どんな嘘かって。相田のことだから、写真が必ず絡むに決まっているじゃない。そ
れなのに、その手の話が出ないっていうことは、それだけで何か嘘をついているっていう
ことなのよ。アタシは、鈴原とシンジが一緒に入るなら考えても良いって返事のメールを
出したわ。
***
「あの、惣流さん。テニス部入部の件、考えてくれるって、本当ですか。」
放課後になったら、真っ先に森川さんが聞いてきたわ。はは〜ん。授業中にメールで連絡
を取り合ったのね。で、アタシは相田を呼びつけたわ。そして、3人だけでこそこそ話し
たの。
「条件が幾つかあるんだけど、いいかしら。」
「ええ、あまり無茶な注文じゃなければ良いわよ。」
「じゃあ、最初の条件ね。相田君、今すぐあなたの好きな女の子の名前を言って。」
「ええっ、ちょ、ちょっと、それは関係ないだろ。」
相田の顔は、みるみるうちに真っ青になっていったわ。
「関係あるわよ。あなたの言うことが本当かどうか試したいから。嫌なら、入部の話はな
しね。」
「相田君、私からもお願い。」
あらあら、森川さんは、手をすり合わせてお願いしだしたわ。でも、相田の口は開かなか
ったわ。
「ごめん、アタシ忙しいから帰るわ。」
痺れを切らしたアタシは、相田に背を向けたの。そうしたら、相田は慌てた声で行ったわ。
「分かったよ。言うよ、言えばいいんだろ。」
「そうよ、最初っからそうすればいいのに。」
相田は途端に小さな声でこう言ったの。
「お、お、お、俺の好きな子は、も、も、森川さんだよ。」
あら、嫌だ。アタシったら、アタシを騙すための嘘かと思っていたのに、この分だと本当
かもしれないわね。相田は俯いて、顔は真っ赤っかになっちゃったし。もう一方の森川さ
んも、真っ赤になって固まっちゃったし。
この瞬間、アタシ達の周りに、木枯らしが吹いたような、そんな感じがしたわ。
つづく(第39話へ)
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あとがき
哀れ、ケンスケ。アスカに強要されて、好きな女の子に告白してしまいます。
2002.9.17 written by red-x