新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第115話

「よし。行くわよ、シンジ。」 「うん、アスカ。」 今日は、お待ちかねのダブルスの試合の日よ。そして、これからアタシ達の試合が始まる の。最初はアタシのサーブから。アタシはボールを手のひらに乗せて、ゆっくりと上に押 し出したの。 「ハーッ!」 勢い良く打ったボールは、矢のように相手コートに吸い込まれていったわ。もちろん、サ ービスエースよ。相手のラケットは、ボールにかすりもしなかったわ。いわゆる、ノータ ッチエースっていうやつよ。 「ナイスサーブ!」 シンジがにっこり微笑んだわ。自然な笑顔だった。うん、こいつにしてはいい笑顔だわ。 「ありがと、シンジ。」 アタシも微笑みを返したの。そして、それから3回連続でサービスエースをとったわ。 *** 試合は、もちろんアタシ達の勝利よ。それも6−0。相手には1セットも取られなかった のよ。それは何故かっていうと、アタシが最初に打ち返したからなの。 相手がサーブ権を持っている時は、アタシが最初に必ずリターンエースを取るのよ。だか らシンジがいくらヘマをしても平気なのよ。必ずこっちがリードすることになるからよ。 と言ってもルールを知らない人には分かりにくいかしら。テニスはね、1ゲーム中に4ポ イントを取って、なおかつ2ポイント以上の差をつければそのゲームを取れるのよ。 それでね、6ゲームを最初に取った方が1セットを取れるのよ。但し、6ゲームを取った 時点で2ゲーム以上の差が無ければ、2ゲーム以上の差をどちらかがつけるまでそのセッ トは終わらないの。これには例外もあるんだけど。 で、普通は3セット取った方が勝ちなの。もっとも、今回の団体戦の場合、先に1セット 取ったらメンバーチェンジなんだけど。 で、話は戻るけど、必ず先にポイントが取れれば、ゲームを取られることはないのよね。 後は相手のミスを待てばいいのよ。そうすれば2ポイントの差なんてすぐにつくから。 だから、相手がサーブを打つ時は安心なのよ。で、シンジがサーブを打つ時は、とにかく サーブミスが無ければアタシが相手のリターンを打ち返して決めるのよ。 当然、アタシがサーブする時は、好きな時にサービスエースを取れるのよ。だから、必ず ゲームを取れるの。という訳で1ゲームも相手に取られないもんだから、当然勝てるのよ。 必ず勝てるって分かっていたから、後は負けない程度にシンジがボールを打つように仕向 けて、ここぞという時にアタシが決めたのよ。その方アタシが一人で頑張るよりも望まし いからよ。 思った以上にシンジは上達していたから、今回はシンジも結構無難にボールを打ち返して いたし、ミスも思ったほど多くなかったわ。 シンジったら、テニスの才能があったのかしら。それともこんなに短期間に体力が向上し たのかしら。でなければ、大好きなアタシの前で良い格好しようと思って、必死になって いるからかしら。ま、いずれにしてもいいことだわ。 アタシが勝利の余韻に浸っていると、少し離れた所から嫌な視線を感じたの。で、アタシ は視線を感じる方向を見たんだけど、特に怪しい人はいなかったのよ。う〜ん、アタシの 気のせいかしら。 「アスカ〜、ジュース買って来たよーっ。」 そこにシンジがやって来たもんだから、アタシは嫌な視線のことはすっかり忘れてしまっ たの。 「ありがとね、シンジ。みんなは?」 「うん、もうすぐ来るよ。でも、嬉しかったな。アスカのおかげとはいえ、初めての公式 戦で勝てたんだから。以前の僕だったら、想像も出来なかったことだよ。」 「まあ、日頃の特訓の成果かしらね。アタシに感謝しなさいよ。」 「うん、そうだね。アスカのおかげだね。感謝してるよ。特にあの、なんて言うか、アス カが特訓中に元気付けてくれるから。」 シンジはそう言うと、顔を赤くしたわ。んもうっ。何を思い出してるのよ。 「あれって、やっぱり結構効果があるのかしら。」 「う、うん。物凄く効果があると思うよ。だって、体が石のようになって動かなくなって も、アスカがアレをしてくれると元気になるもの。」 え〜っ、本当かしら。嘘臭いわね。でも、話を合わせておいた方が良さそうね。 「そうなの。そう言ってもらえると、アタシも嬉しいわ。」 「でさ、僕、さっきの試合で力を使い果たしちゃったんだけど、次の試合のために元気に なりたいなあ、なんて思ったりして。」 けっ、やっぱりそうか。男って、なんでこうスケベなのかしらね。でも、断る理由もない わね。 「しょうがないわねえ。じゃあ、ちょこっと人のいない所に行く?」 「う、うん。行く行く。」 その瞬間、シンジの顔はぱっと明るくなったわ。ア、アンタって奴は、一体何者? *** 「えっと、ここなら誰もいないわね。」 アタシ達は上手く人気のない場所を探し出したの。回りを見ても誰もいないわ。 「うん、大丈夫そうだね。」 「でも、誰が見てるか分からないからちょこっとだけよ。それでもいい?」 「う、うん。いいよ。」 シンジがそう言った瞬間、アタシは大気中のエネルギーを一旦体に集めて、それを口移し でシンジの体内に直接注入したわ。 (『エナジー・チャージ』) これで、シンジにアタシの元気が注ぎ込まれるはずよ。でもね、これって傍から見るとた だのキスなのよね。まあ、いいけど。 つづく(第116話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  シンジにとって、アスカのキスは抜群の効き目を持つ元気の素なのです。   2004.9.16  written by red-x  



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