新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第106話

今日は木曜日。昨日と同じスケジュールのはずだったんだけど…。 「そ、惣流さ〜ん!大変ですっ!」 休み時間にユキがアタシ達の教室に飛び込んで来たのよ。 「な〜に、ユキ。そんなに慌てちゃってどうしたのよ?」 あらまあ、ユキったら。息を切らして、よっぽど慌てていたのね。アタシはユキに落ち着 くように言ったわ。そうしたら、ユキは何て言ったと思う。 「お、落ち着いている場合じゃないですよっ!今度の公式戦なんですが、急にルールが変 わっちゃったんですよっ!」 へっ。まさかね。アタシは内心の動揺を抑えつつ、ユキに努めて静かに聞いたわ。 「で、何があったのよ?」 「そ、それがですね、急に男女が一緒にやることになっちゃったんですよっ!急にですよ っ!信じられますっ!」 あらあっ、やっぱりね。さすがにミサトだわ。やることが早いわね。でも、ちょっと強引 すぎないかしら。なんてことを考えていたんだけど、そんなことはもちろん表情には出さ ないわよ、アタシは。 「まあまあ、落ち着いて。何がどう変わったのか、ゆっくりとていねいに話してよ。」 アタシはユキの背中をさすったの。そしたら少し落ち着いたみたい。 「今度の土曜日の公式戦なんですけど、男女別々に試合をする予定だったんです。ですか ら、うちは女子部と男子部が参加する予定だったんです。」 「うんうん、それで。」 「男女ともに、シングルス3試合にダブルス2試合の計5試合の予定だったんです。とこ ろがですよ、男女シングルス各2試合に混合ダブルス2試合の計6試合になってしまった んです。」 「それのどこがまずいのよ。」 「まずいですよっ!選手が14人から8人に減るんですよっ!冗談じゃないですよっ!」 ユキは、怒り心頭っていう感じで、さっきよりも興奮しちゃったみたい。そこへ、シンジ やヒカリ達が寄って来たのよ。で、みんなでこう言うのよ。 「そりゃあ、酷いよね。一体誰がそんなふうにしちゃったんだろう。」 ギクリ。 「そうよねえ。今回の大会が最後だっていう人もいるでしょうに。大人って、本当に勝手 なことをするわよね。今まで頑張ってきた人が可哀相よね。」 ギクギクッ。 「そう思いますよね。だから、みんなで抗議しようっていう話しになったんです。ですか ら、協力してくださいね。」 ま、まっずい〜っ。まさか、そんなに大事になるなんて思わなかったわ。でも、混合ダブ ルスが無くなるのは嫌よね。アタシは、少しだけ考えてからユキに聞いたわ。 「でもさ、ユキ。1つの学校から2チーム出せれば、16人になるでしょ。そういうこと はないの?」 「へっ。あ、ああ、そうですね。それは確認してませんでした。」 この瞬間、アタシはしめたと思ったわ。 「まあ、気持ちは分かるけど、もうすぐ休み時間は終わるし、そういう話はゆっくりと昼 休みにでもしましょうよ。」 アタシはそう言ってユキをなだめたの。 「は、はい。分かりました。じゃあ、続きはお昼休みに。」 ユキは、眉間に皺を寄せながら教室を出て行ったわ。ふう、びっくりした。万一、言い出 しっぺがアタシだって分かったら、全国のテニス部の人から恨まれそうね。そうならない ように、ちゃんと手を打たないとね。アタシは授業が始まると、ミサトにメールを送った わ。 *** お昼は、楽しいひとときになったわ。それというのも、ミサトがまたしても早めに手を回 してくれたおかげよ。アタシがミサトにメールを送ったら、『了解』とだけ返事が来たの。 そして、直ぐに動いてくれたようなのよ。 「すみませ〜ん、私の早とちりだったようです。」 食べ始めるや否や、ユキがみんなに謝ったの。 「どうしたんだよ、森川。」 相田が尋ねると、ユキはペロリと舌を出したの。 「実はですね、テニス協会に抗議のメールを送ったら、返事が来たんですよ。そうしたら、 男女別の大会は今まで通りやって、それとは別に男女混合の大会が加わるらしいんです。」 それを聞いて、ヒカリは表情が明るくなったわ。 「じゃあ、出られる選手が増えるの?」 でも、ユキは分からないと答えたわ。 「混合の大会に出る選手は、男女別の大会の選手と重なっても良いらしいんです。だから、 どうするかは部長達が決めるまで分からないんです。」 まあ、そりゃそうね。 「でもさ、両方出るのは結構大変だと思うよ。だから、同じ人がやるとは限らないんじゃ ないかな。」 はあっ、何を言うのよシンジ。少しは考えて物を言いなさいよね。 「いえ、限るわ。部長に聞かなくても結果は分かるわ。男子は強い2人が出るでしょ、女 子はアタシ以外の2人が出るでしょ。混合はアタシとシンジが決まりで、残る1組はダブ ルスの4人の男女の中から選ばれるわよ。」 「えっ、どうしてなのさ、アスカ。」 「テニスの団体戦は、全員が試合を出来るとは限らないのよ。例えばシングルスで2敗し てダブルスで負ければ、それで負けが確定するから、3人の選手が出られなくなるのよ。 だから、そうなることを見越して選手選びをすると思うわ。そうすると、アタシの言った 通りになる訳よ。そう思わない、ユキ?」 アタシがユキに話を振ったら、ユキは少し間を置いて頷いたわ。ユキもアタシの言葉で気 付いたようね。 「そうなの、がっかりだわ。」 ヒカリは少し肩を落としたけど、みんなでまた来年があるよと慰めたら、少しは元気にな ったみたい。う〜ん、どうしようかなあ。ヒカリと女子ダブルスを組んでもいいんだけど、 ユキもアタシと組みたいだろうし。 でも、急に入ったアタシ達がでしゃばるのも3年生に悪いし。日本ではイジメっていうの があって、『センパイ』を怒らせるとヒカリが意地悪されそうだし。結局、2年生で試合 に出るのはアタシとシンジだけになるのかなあ。 でも、いいわ。ヒカリやユキは2年生で、来年も機会があるんだし。て、言うか、アタシ とシンジが頑張って人類の明日を切り開かなくてはいけないのよね。アタシは、2人の友 人のことを思いながら、使徒との戦いに勝利すべく決意を新たにしたわ。 でも、シンジも同じ気持ちかしら。その辺はちょっと不安なのよね。 つづく(第107話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  さすがはミサト。どんな脅し…手段を用いたのか、アスカの願いをかなえてくれました。 とはいえ、日本全国から電力を集めることに比べたら、大したことではないかもしれませ んね。   2004.6.8  written by red-x



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