新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第103話

学校の帰りにエヴァゲームを何回もやって、もちろんアタシとシンジが一杯勝って、良い 気分でネルフへと向かったわ。 「へへへっ、シンジ。この分じゃ、アタシ達は無敵よね。そう思わない?」 「う、うん。そうだね。」 あれ、シンジったら気のない返事ね。どうしたのかしら。 「なによ〜っ、シンジ。元気ないじゃない。どうしたのよ?」 アタシは少し心配になって聞いたの。そしたらね、シンジは小さい声で言うの。 「うん、何て言うか、アスカってやっぱり凄いんだなって思ってさ。なんか、自分が情け なくなったんだ。体力も無いし、頭もそんなに良くないし、あんまりいいとこないなあっ て。」 なんだ、そんなことか。そんな当たり前のことに今頃気付いたのかしら。本当にシンジっ たらおバカさんよねえ。とはいえ、ここで肯定したらシンジは落ち込むのは間違いないわ。 しょうがない、ちょっとおだてようかしら。 「でもさ、アタシのためなら命懸けで戦ってくれるんでしょ?」 「う、うんっ!もちろんだよっ!」 シンジは、真っ赤な顔をしながらも、拳を握りしめながら言ったわ。おっ、良い反応ね。 「じゃあさ、アタシのためなら世界中を敵に回しても戦ってくれる?」 「う、うんっ!アスカのためなら、どんなことでもするよっ!」 「だったらさ、今は気持ちだけで十分よ。シンジはまだ中学生だもの。まだまだ、無限の 可能性があるのよ。良い男になるか、それともダメ男になるか、それはこれからの頑張り 次第よ。そうでしょ?」 「そ、そうかな。僕でも良い男になれるかなあ?」 「もちろん、何事もアタシの言う通りにして、死ぬ気で頑張る必要があるわ。でもね、ア タシのことが本当に好きなら出来るはずよ。もちろん出来るわよね、シ・ン・ジ?」 「も、もちろんだよ。絶対に出来るよ。」 シンジは首を何度も縦に振ったわ。だから、アタシは思わず笑いそうになったのよ。でも、 我慢、我慢と。 「だったら前向きに頑張りなさいよ。ウジウジ悩んだっていいことないわよ。頭はねえ、 悩み事に使うんじゃなくって、もっと有意義なことに使いなさいよ。」 「う、うん。分かったよ。」 「まあ、差し当たっては、今日の訓練で頑張りなさいよ。」 「うん。分かった。」 「分かったら、少し急ぎましょ。いいわねっ!」 アタシはそう言って走り出したの。もちろんシンジもアタシの後を追って来たわ。うんう ん、やっぱり悩む暇があったら体を動かせばいいのよ。それが一番だわ。 こうして、アタシ達はいつもより早くネルフに着いたの。 *** 「あれっ、シンジ君のシンクロ率がこの前よりも少し上がったわ。」 ハーモニクステストの時、リツコは少し嬉しそうな声で言ったわ。 「シンジ君も、おっとこのこだもんね〜っ。アスカの手前、少しでもいいとこ見せようと 必死なのよ、きっと。」 「ミ、ミサトさん。そんなこと、こういう時に言わないで下さいよ。」 ミサトにからかわれて、シンジは真っ青になったわ。 「あっ、シンクロ率が急低下していきます。」 でもね、マヤの言葉に、今度はリツコとミサトの顔が青くなったわ。 「ご、ごめん、シンちゃん。あんまり気にしないでね。」 ミサトは苦笑いをしながら謝ったけど、シンジはふくれっ面をしたの。 「気にしますよ、思いっきり。」 「そ、そんなこと言わずに。ねえ、シンちゃん、機嫌直してよ。お姉さん、ちょっと言い すぎたわ。」 誰がお姉さんよとリツコが鼻で笑ったもんだから、青葉さんとマヤがいきなり口を押さえ だしたわ。声を殺して笑ってるわね、きっと。その横で、何故か日向さんだけが少しムッ とした顔をしてるわ。 「ぷぷっ。」 シンジも聞こえたらしく、吹き出しちゃったの。 「あっ、シンちゃんたら酷いわね。私はシンちゃんの味方なのよ。応援するって言ったの、 忘れたちゃったの?」 ステーキやロブスターのことしか覚えてないのねと、ミサトが涙目モードになったもんだ から、今度はシンジが大慌てよ。 「わ、忘れてませんよ。覚えてますよ。」 「じゃあ、お姉さんのこと許してくれる?機嫌直してくれる?」 横でリツコが、お母さんの間違いじゃないのなんて言うもんだから、ミサトはさすがにリ ツコを睨んだわ。で、シンジが見かねて声をかけたの。 「リツコさん、あんまり変なことを言わないでくださいよ。それに、ミサトさんも人から 変なことを言われると嫌だっていうのが分かったでしょう?だからもうやめにして、二人 の仕事をキッチリやってくださいよ。」 「ええ、そうね。シンジ君の言う通りよ。」 「えへへっ、ごみん。」 こうして、それ以後は何事もなくハーモニクステストは続けられたわ。でもね、それはレ イの声が小さくてミサトの耳に入らなかったからなの。 「…葛城三尉は、碇君のお姉さん…。いえ、違うわ。お母さんの方が近いわ…。」 こんなのがミサトの耳に入っていたら、大変なことになっていたわ。でもね、マヤ達は聞 こえたらしいの。テストが終わってミサトの姿が消えた途端、肩を思いっきりを揺らして 笑っていたもの。 まあ、とにかくシンジにやる気が見られて良かったわ。以前のシンジだったらふてくされ ていたでしょうけど、アタシがいるもんだから少しカッコつけたのよね。 理由はともかく、エヴァの訓練やテストに前向きに取り組むのはいいことだわ。少々の妨 害にもくじけないようになったようだし。これで使徒との戦いも少しは楽になるかしら。 つづく(第104話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  アスカの言葉に勇気づけられたのか、今日のシンジは以前とうって変わって、エヴァの パイロットとしての自覚が出てきたようです。   2004.4.22  written by red-x



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