新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第86.5話 悲劇の始まり

 ダンマームが制圧されてから2週間経ったある日、バグダットにおいて、軍幹部が集ま って作戦会議を開いていた。 「…それで、各自戦況はどうなんだ。報告してくれ。」 最初は、北部に攻め込んでいる第4軍の司令官が発言した。 「わが軍は、サウジアラビア軍の反攻に遭い、紅海まで今一歩というところだ。後1週間 後には良い報告が出来ると思う。」 次は第2軍の司令官だ。なお、第3軍はネルフの平和維持軍に撃破されたため、解体され て他の軍に吸収されている。 「わが軍は、エヴァの反撃に遭っているため、足踏み状態だ。だが、間断なく攻撃を続け ているから、奴らもそろそろ疲労のピークにきているだろう。今後も引き続き攻撃を続け、 エヴァを引きつけておこうと思う。」 次は、ドバイやアブダビを制圧しているクサイ軍の司令官だ。 「わが軍は、何とかフフーフに攻め入ろうとしているのだが、やはりエヴァの反撃に遭っ て、なかなか進撃出来ないでいる。だが、休みなく攻撃を続けているから、奴らもそろそ ろ音を上げるだろう。」 次は、マスカットから攻め入ったウダイの軍の司令官だ。 「わが軍は、サイフイートやシフルを攻め落とし、アデンまであと僅かの距離にある。ア デンさえ落とせば、アジア方面からの国連軍の進入を阻むことが出来るだろう。」 この司令官は、やや鼻を高くしているようだ。そして、その後も議論は続く。 「では、第4軍が紅海まで到達すれば、国連軍の撃退はかなり容易になるな。」 「ウダイ軍は、今の位置からでも国連軍の進入を阻止出来そうだな。」 「だが、エヴァはどうする?クサイ軍や第2軍の損害もかなり大きいと聞いたが。」 「奴らを使うか。効果的な目標が何か、検討する必要があるがな。」 「奴らは、日本にも送り込もう。ネルフ本部を襲わせるんだ。」 「いいのか?ネルフを本格的に敵に回すと厄介だぞ。それに、わが軍の兵士でさえ、碇シ ンジを英雄視する者は多い。」 「惣流アスカのファンも多い。彼女に怪我でもさせたら、わが軍は崩壊しかねないぞ。」 「それは、わが軍も同じだ。非常にまずい事態になるな。」 「ならば、彼女が学校にいる時に本部を襲えば良い。」 「ふん、上手くいくかな。」 「駄目で元々、やる価値はある。」 こんな会話の末、ネルフに対する攻撃が決定された。 *** 「やはりそう来るか。」 暗い部屋の中で、イラク軍幹部の会議の内容を知って、眉間に皺を寄せている人物がいた。 「何かまずいことでも?」 その部屋にいた、もう一人の男が尋ねると、男は少し考えながら答えた。 「彼女には死んでほしいが、碇シンジに危害を加えさせる訳にはいかん。ネルフ本部への 攻撃については、ネルフに情報をリークしろ。」 「はっ、分かりました。」 「但し、ネルフ本部への攻撃と前後して、周辺国でテロが多発するとも伝えるんだ。」 「そこで、我々が上手く立ち回る訳ですな。」 「ああ、そうだ。もうすぐ我々の時代がやってくるんだ。」 男は、力強く言った。
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2004.1.30 written by red-x