新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4部 ネルフ再生



第73話 ハウレーン隊長の誕生

「アスカ、ごめんなさい。ワイルドウルフのみんなには、私から良く言い聞かせておくわ。 ドイツ支部のみんなにも。」 マリアはそう言って頭を下げた。マリアは、ネルフ傭兵部隊ワイルドウルフ中隊の中隊長 であったため、さきの乱闘騒ぎに責任を感じていたのだ。 「まあ、今回はいいわ。でもね、内部で争うのはまずいわよ。研修生同士のいざこざなら ともかく、傭兵同士の争いになったら、下手すると死人が出るもの。」 「そうよね。私も甘く見ていたわ。まさか、こんな大事になるとは思わなかったもの。」 「問題は、レッドアタッカーズとアメリカ支部の連中ね。」 「ええ、アリオス君とマックス君では抑えきれないみたいね。」 「そうよねえ。」 アスカは少し考えた後、キャシーを呼んだ。 「ちょっと、キャシー。こっちに来て。」 「えっ、何ですか。」 何の用ですかあ〜、と言いつつ、キャシーが歩いてきた。 「アンタに頼みがあるのよ。レッドアタッカーズの連中を大人しくさせて欲しいのよ。」 「そ、そんなこと私に言われても困ります。私は、ただの連絡要員ですから。」 「連絡要員なら、断る理由は無いわよね。ちゃんと責任者に伝えてちょうだい。」 「は、はい。分かりました。」 「今後、ワイルドウルフといさかいを起こさないこと、ネルフ内で乱闘騒ぎを起こさない こと、以上の2点を厳守するようにして。いいわね?」 「は〜い、今の言葉を伝えます。」 「頼んだわよ。」 そんなこと急に言われてもね〜っ、とボヤキながら、キャシーは去って行った。その後ろ 姿を見て、マリアは不安そうに言った。 「ねえ、大丈夫なのアスカ。あのキャシーって子、あんまり頼りにならないと思うんだけ ど。ジャッジマンさんとかに頼んだ方が良くないかしら。」 「大丈夫よ、マリア。あの子に言っておけば、レッドアタッカーズにはちゃんと伝わるか ら平気よ。」 「そうかなあ。あの子、元々サグとアスカの連絡役に過ぎないんでしょ。それなのにパイ ロット候補生に選ばれたりして、何か間違ってないかしら。大体、シンクロ率が異様に低 いじゃない。何であんな子が未だに研修生なのよ。」 そう、キャシーのシンクロ率は、未だに10%に満たないのだ。 「そう言わないでよ。色々と深い訳があるのよ。」 そう、深い訳があるのだった。だが、今はマリアにも秘密である。 「それならいいけどね。でも、研修生はどうしようかしら。傭兵部隊は統制が効くとして も、研修生達はそうはいかないわよ。」 「そうなのよね、頭が痛いわ。」 そう、実際に研修生への対応は難しい。アスカにとっても妙案は無いのだ。 *** 「ねえ、シンジ。アンタ、何かいい考えはないかしら。」 アスカは、藁にもすがる気持ちで、シンジに相談した。 「そうだねえ。仲良くするように頼むとか。」 「あのねえ、それでうまくいくなら、アタシだって悩まないわよ。」 (はあ、こいつに相談したのが間違いだったわね。) アスカは、深くため息をついた。 「でも、アスカ。何でドイツ支部の研修生とアメリカ支部の研修生は仲良く出来ないのか な。」 「アンタ、バカ?エヴァの正パイロットを少しでも自分達のグループで獲得しようって思 っているからじゃない。」 「じゃあさ、どちらにも正パイロットを獲得出来ないようにするとか。」 「駄目よ。そんなこと出来るわけないでしょ。」 「でもさ、アメリカ支部の研修生は、アメリカ支部に配備されるエヴァに乗るんでしょ。 ドイツ支部に配備されるエヴァがどうなったって、関係ないんじゃないかな。」 「あのねえ、ドイツ支部に配備されるエヴァは、ドイツ支部の研修生が乗れるって、決ま った訳じゃないのよ。だから、他の支部の連中が正パイロットの座を狙ってるのよ。」 「じゃあ、早く決めちゃえばいいじゃないか。」 「そんなに簡単に決められる訳ないでしょ。」 「でも、アスカ。エヴァは全部で9体あるよね。本部に4体、支部に5体だったっけ。で も、何で本部のエヴァが4体必要なの?3体でもいいんじゃないのかな。」 「えっ。でも…。」 シンジに言われて、アスカは戸惑った。確かに、4対が絶対に必要という訳ではない。だ が、もし本部に3体残すとなると、支部に渡すエヴァは必然的に弐号機になるのだ。 「でもって、何かまずいのかな。」 「そうね…。そういう方法もあるわね。」 (アタシとしたことが、無意識のうちに弐号機から離れるのを拒んでいたってわけか。マ マのいない弐号機なのにね。) アスカは、未だに弐号機に執着している自分に気付くのだった。 ***  その日の夜、アスカはミラクル5のメンバーを、自宅に呼び寄せた。 「悪いわね、急に呼んじゃって。」 「ええ、いいえど。何の話しかしら。」 マリアが尋ねる。 「実はね、みんなの気持ちを聞いておこうと思ったのよ。みんな、本部にこのままいたい? それとも、エヴァが配備されたら、正パイロットになりたいと思う?その辺の本音を聞き たいのよ。」 最初に答えたのは、サーシャだった。 「私は、正パイロットになって、支部に戻りたいわ。そして、平和を守るために戦いたい の。」 「そうよね、祖国を守りたいって言ってたものね。」 サーシャの返事は、アスカの予想通りだった。 「私も、出来るなら自分の国に戻りたい。」 次に、ミリアが答えた。 「ふうん、マックスがこっちに残るとしても?」 「何っ!あいつは残るのかっ!」 「まだ分からないけどね。可能性は五分五分よ。さあ、どうするの?」 ミリアは、考え込んでしまった。 「まあ、いいわ。マックス次第っていう訳ね。」 それを聞いて、みんながクスクス笑う。そこにシンジがコーヒーを持ってきた。 「みんな、良かったらコーヒーでも飲んでよ。」 シンジは、みんなの前にコーヒーを置くと、アスカの隣に腰掛けた。 「じゃあ、次は私ね。私はどっちでもいいわよ。日本と中国って近いしね。私は、日本に 近い中国に、わざわざエヴァを配備しなくてもいいと思っているしね。」 と、ミンメイ。 「最後は私か。私もどっちでもいいわよ。日本にはアスカもいるし、結構ドイツ支部から 来ている人も多いしね。」 「そう…。じゃあ、はっきりしてるのは、サーシャだけね。じゃあ、サーシャに聞くわね。 各支部に配備予定のエヴァだけど、その中で隊長を決めるとしたら誰がいい?マリア、ハ ウレーン、キャシーの3人の中から選んでちょうだい。」 「そりゃあ、マリアよ。」 「じゃあ、次は?」 「う〜ん、ハウレーンかな。実戦経験もあるしね。」 「同じ意見の人はいる?」 「私は同じ意見よ。」 とミンメイ。 「私も同じだ。」 とミリア。 「う〜ん、私は隊長なんか遠慮したいわねえ。」 とマリア。 「やっぱりそう思うのね。でもね、アタシはキャシーかハウレーンにしようと思っている のよ。マリアは、出来れば本部に残って欲しいのよ。」 「私が本部に?いいけど、理由はなあに。」 「そうね、消去法になるかしら。本部の傭兵部隊なんだけど、未だに傭兵に対して不信感 を持っている人は多いのよ。だから、傭兵部隊をまとめる人がネルフと信頼関係がないと まずいのよ。その点、マリアならうってつけっていう訳なのよ。」 「なるほどね。そういや、私は小学生の時からネルフにいたものね。本部はともかく、ド イツ支部にいる人には知り合いが多いしね。」 「えっ、どういうことなの。」 そこで、初めてシンジが口を出した。 「そうねえ、誰かがマリアのことを知りたくて、ドイツ支部の知り合いに聞くとするじゃ ない。するとね、『ああ、あの子なら小さい頃から知ってるよ。いい子だよ。』っていう 具合になるわけよ。そうなるとね、マリアに対する信頼度が格段にあがる訳なのよ。」 「そうかあ。確かにそうかもね。」 シンジは頷いた。 「それに、マリアのお父さんがワイルドウルフの代表者でしょ。だから、ワイルドウルフ の傭兵達がマリアを裏切るとは思わない訳よ。」 「なるほどな。」 ミリアも頷く。 「その点では、ハウレーンやキャシーでは信頼度が足りないっていう訳ね。確かにそうよ ねえ。二人とも、最近ネルフと関わりを持ったに過ぎないものね。」 と、サーシャ。 「でも、アスカ。だったらハウレーンを隊長にすればいいんじゃない。正直言って、キャ シーに隊長が務まるとは思えないし。」 「マリアがそう思うのなら、みんなも同意見でしょうね。シンジもそう思うの?」 「うん、そうだね。だって、キャシーさんてシンクロ率が低すぎるよ。だから、エヴァに 乗れないんじゃないかな。」 「そうよねえ、パイロットになるのも無理でしょうね。」 と、マリア。 「違うのよ、そうじゃないのよ。キャシーのシンクロ率は、低くはないの。」 「どういうこと、アスカ。」 「マリア、キャシーのシンクロ率は本当はもっと高いのよ。でもね、実際よりも低く表示 されているのよ。」 「どういうこと?」 「理由は、はっきりとは分からないの。推測はつくけど、今は言えないのよ。いずれ話す 時が来ると思うけど。」 「アスカ、それじゃあ訳が分からないわよ。分かる様に言ってよ。」 「だって、アタシにも分からないのよ。しょうがないじゃない。」 「じゃあシンクロ率のことはいいけど、何で実戦経験の無いあの子が隊長になんてなれる のよ?あの子じゃ、誰も着いて来ないわよ。」 「そうね、じゃあ、分かることは話すわ。キャシーはね、レッドアタッカーズの代表者、 レッドブルの娘なのよ。その点では、ハウレーンと条件は同じなの。」 「ええっ!だって、あの子はサグのメンバーなんでしょ?それに、レッドアタッカーズっ て、最近サグの傘下に入ったんじゃ。」 「その辺は分からないわよ。でもね、キャシーは間違いなく場数は踏んでいるわよ。ハウ レーンなんか足元にも及ばないくらいね。普段見せている姿は仮の姿よ。」 「ど、どうしてそんなことが分かるの?アスカの考えすぎじゃないの?あの子ったら、普 段は碇君ほどじゃないけど、ボケボケっとしてるじゃない。それに、訓練の時だってあん まりパッとしないし。」 (むうっ。シンジとは関係無いじゃない。) なぜか、アスカはムッとした。 「考えすぎじゃないと思うわ。それに、シンジだって確かに普段はボケボケっとしてるけ ど、ここぞという時には結構頼りになるじゃない。こないだ、ゼーレが攻めて来た時だっ て、マリアよりは活躍したでしょ。」 「ちょっと、それ、どういう意味よ。どうせ、私は活躍してませんよ。」 マリアは、頬を膨らませた。 「や、やめてよアスカ。それにマリアさんも。今はケンカしている時じゃないと思うんだ けど。どうしちゃったのさ。」 気まずい雰囲気を察して、シンジが止めに入った。 「あっ、ごめんね、碇君。碇君のことを悪く言ったから、アスカが怒っちゃったのよ。」 「そんなことないわよ。冗談じゃないわよ。なんで、アタシがシンジの悪口を言われたく らいで怒らなきゃならないのよ。」 (うっ、こんなこと言うつもりじゃないのに。) アスカも頬を膨らませた。だが…。 「ははっ。でも、怒ったアスカも可愛いな、なんて…。」 「バ、バカッ!急になんてこと言うのよっ!」 (バカ!そういうことは、他人のいない時に言ってよね。この、唐変木!) シンジの言葉に、アスカの顔は真っ赤になってしまった。そして、話はしばらく中断して しまった。 結局、アスカはみんなの反発が強いことから、キャシーを隊長に据えることは当面諦め、 ハウレーンを隊長にすることにした。そして、暫定的にこの場の全員とキャシー、ハウレ ーンを正パイロット候補とすることにした。 キャシーを正パイロットにすることについては、その場の全員が反対したが、キャシーが サグのメンバーで、レッドアタッカーズとの連携が期待出来ることを理由に、アスカは強 引に押し通したが、後は全員一致で賛成となった。 正パイロット候補が決まると、自然に副パイロット候補になろうとする競争がメインにな るが、マリア達の統制が効きやすくするため、副パイロットの決定に正パイロット候補の 意見を採り入れると発表することにした。 また、碇司令に対しては、海外に6体のエヴァを配備すると説明し、その了承を得てから これらのことを公表することにした。もし了承を得られなかった場合は、マリアを本部付 のパイロットとすることにした。 こうして、正パイロットと隊長が選出されたのだった。 (第73.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 人物紹介 ドイツ支部(Eva配備予定) マリア・カスタード:エヴァンゲリオン操縦者候補生。市立第壱中学3年A組に在籍する。 蒼い瞳に青い髪の白人。体型は標準並。大人しそうな感じで、決して美人とは言えないが、 人懐こい笑顔が印象のちょっと可愛い雰囲気の少女だ。傭兵部隊ワイルドウルフに所属。 ミラクル5の一員でもある。実は、アスカが小学生の時からの知り合い。 中国支部(Eva配備予定) リン・ミンメイ:ミラクル5の一員。歌が好き。紺色に近い長い髪が印象的な美少女。 ブラジル支部(Eva配備予定) ミリア:エヴァンゲリオン操縦者候補生。市立第壱中学3年A組に在籍する。戦闘機乗り。 標準よりもやや大きめの体格で、蒼い瞳に緑の髪で、白い肌をしている。ややキツイ目付 き。ジャッジマンの部下でアスカのガード役。ミラクル5の一員でもある。孤児で親の顔 は知らない。 エジプト支部(Eva配備予定) サーシャ:エヴァンゲリオン操縦者候補生。蒼い瞳、長い金髪、長身、スリム、白い肌が 特徴の美少女。目が大きいが、大人しい感じがする、14歳のロシア系イスラエル人。M AGIへのハッキングに成功した、伝説のハッカーグループ『ミラクル5』の一員。ザナ ドとは親戚。 フランス支部 ハウレーン・プロヴァンス:エヴァンゲリオン操縦者候補生。市立第壱中学3年A組に在 籍する。蒼い瞳にピンクの髪、長身でスリムな白人の少女。フランスの傭兵部隊、ヴァン テアンに所属。 アメリカ第3支部 キャシー:エヴァンゲリオン操縦者候補生で,アメリカ第3支部に所属している。市立第 壱中学3年A組に在籍する。ドイツ系アメリカ人で、蒼い瞳、短い金髪、スリムな白人の 少女。活発な感じで、大きなメガネをかけており、美人には見えないが、スタイルの良さ と優しい感じの笑顔がそれをカバーして余りある。ジャッジマンと同じ組織に属している。 謎の組織『サグ』とアスカとの連絡員でもある。  2003.5.18  written by red-x



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