新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4部 ネルフ再生



第69話 みんなでキャンプ 中編

「さあて、もう用意は良いかしら?」 アスカが声をかけると、ヒカリとリツコは頷いた。 「ようし、今日は目一杯遊ぶわよっ!」 アスカはそう言うと、勢い良くドアを開けた。 「お待たせっ!」 アスカの声にシンジ達が振り向いたが、目をまんまるくしていた。 「ア、アスカ、その格好は?」 シンジが驚くのも無理は無い。アスカ達は車の中で水着に着替えていたのである。それも、 揃ってビキニであり、中学生には少し刺激が強い格好だった。以前ネルフのプールで見た 水着と比べて、布地がさらに1割から2割減というところか。 (ふふふっ、シンジったら思った通りの反応ね。) アスカは、シンジが少し前かがみの姿勢になっているのを見逃さなかった。だが、ヒカリ やユキが過剰反応したら困るから、その話題にはあえて触れなかった。 「ここのすぐ近くに泳げるところがあるのよ。アタシ達は先に行って泳いでいるわね。」 「ぼ、僕達はどうするの?」 「大丈夫よ。日向さんが水着を持ってきてくれているから。あっ、マリア達も用意が出来 たようね。じゃあ、お先に〜。」 こうして、女性陣は先にすたすたと行ってしまった。むろん、残った男性陣も急いで着替 えて後を追った。 *** 「うわあっ、気持ち良いわね。」 「本当ね、水が冷たくって、最高ね。」 行った先には小さな滝があり、川の流れが一部せき止められて、普通の池よりもかなり広 いスペースがあった。池といっても、水の深さは膝よりも少し上程度で、一部深いところ があったが、遊ぶには程よい広さであった。 アスカやヒカリは、いつもの暑さから解放されて嬉しそうだ。嬉しくて、それを他の人に 無理やり分けたくなるのも人情であろう。 「ユキッ、気持ち良いわよっ!」 アスカは、水をすくってユキに浴びせかけた。 「きゃっ。いきなりひどいですよ。」 「いいじゃない。今日は無礼講よ。」 「い、意味が違いますよ。」 「良いのよ、アタシ、ニホンゴワカリマセ〜ン。ちょっとは大目に見なさいよ。」 そう言いながらヒカリやマリアにも水をかける。ユキと違ってこの2人はアスカに仕返し とばかり水を浴びせ返し、次第にお互いに水の掛け合いが始まった。 「お待たせ。」 そこにシンジ達が到着する。 「あら、来たわね。そこのビーチボールを膨らませてよ。みんなでバレーボールでもしま しょうよ。」 「うん、良いよ。トウジやケンスケも良いよね?」 「おう、かまへん。」 「もちろんさ。」 下心のある男どもに異論があろうはずがない。トウジ達の返事を聞くと、シンジはカヲル にすまなさそうに言った。 「カヲル君は、最初は少し離れて見ててよ。すぐに遊び方は分かるから。そうしたら一緒 に混ざってよ。」 「ああ良いよ、シンジ君。」 こうして、最初はビーチボールで遊び、しばらくしてカヲルが加わってからは、4対4の バレーボールの試合をして遊んだ。最初はアスカシンジペアとユキケンスケペアが組んだ。 「そ〜りゃあっ!」 アスカが豪快なサーブを打つ。 「なんとおっ!」 「それ〜っ!」 それをマリアやトウジが受け止める。そんな具合に試合が進んで行った。アスカのチーム は、アスカ以外ははっきりいって足手まといであったため、アスカ一人で戦っているよう なものだった。 これに対してマリア達は、ヒカリ以外は戦力が揃っていたが、アスカの力が抜きんでてい たため、全体としては良い勝負だった。 (さあて、そろそろね。うっしっしっ。) 何度か試合をしてから、アスカは他の遊びを提案した。 「ねえ、他の遊びにしましょうよ。」 「なあに、アスカ?」 マリアが尋ねると、アスカは胸を張って言った。 「もちろん、水上騎馬戦よっ!」 「ええっ!」 ユキが驚きの声を上げたが、特に反対の声は出なかった。 「じゃあ、良いわよね。」 ユキは誰も反対する者がいなかったため、渋々頷くしかなかった。 「シンジ!右行って、右よっ!」 「そ、そんなこと言ったって、急には無理だよっ!」 「うっさいわねえ。男だったら口応えしないっ!」 「わ、分かったよ。」 などというペアもあったが、それ以外のペアは概ね和やかな雰囲気の元、水上騎馬戦を行 った。何せ人数が少なく、3人1組の騎馬が作れないため、男が女の子を背負う変則的な 形になってしまったのだ。 それぞれ2組に別れて戦ったのだが、お互いに気を遣うようなペアでは良い動きは出来な い。 「あの〜、鈴原、右に行って欲しいんだけど。」 とか、 「相田君、右に行ってくれないかしら。」 とか、 「渚君、右に行ってちょうだい。」 「えっ、右ってどっちだい?」 とか、 そんな調子のペアがアスカ達のペアに太刀打ち出来る訳がなく、どんな組み合わせでもア スカのいる組が必ず勝つことになった。 そんな中、ある事件(?)は起きた。 アスカのペアとヒカリのペアが一緒に戦っている時、アスカが後ろからユキに襲いかかっ た。 (ようし、今よっ!) 「もらったあっ!」 「きゃあっ!」 (やったわ、狙いどおりね。) 「へん、やったわね。あっ、まずいっ!ユキ!胸を隠してっ!」 「えっ。きゃあんっ!」 そう、アスカの左手には、ユキのブラが握りしめられていた。ユキは叫びながら胸を隠そ うとして、反射的にンスケの背中に胸を押しつけてしまった。途端に極上の微笑みを浮か べるケンスケだったが、ユキはしばらく気付かなかった。 「うっそ〜っ!もう、いやあん。」 気付いても離れるに離れられず、アスカがタオルを持ってくるまで、ユキはケンスケの背 中に胸を押しつけたままいるしかなかった。 *** 「ううっ、惣流さん、酷いですよ。」 「ごめんね、ユキ。手が滑ったのよ。お願い、許してね。」 手を合わせて頭を下げるアスカに、ユキは少し慌てた。 「そ、そんな。頭なんて下げないで下さい。私も悪かったんですから。許すなんて、当た り前じゃないですか。」 (ほっ。やっぱりユキは許してくれたわ。) アスカは頭を上げると、ニコリと笑った。 「良かったわ、許してくれて。で、相田はどうする。」 「えっ、どうするって?」 「どうしたら許すかよ。」 アスカはそう言いながらケンスケを見る。ケンスケは、次の言葉に少し怯えたが、ユキは 慌てて言った。 「そ、そんな。相田君は悪くありませんから。悪いのは胸を押しつけた私ですから。私の ほうこそ、相田君に謝らないと。」 「そう?まあ、ユキが良いならいいけどね。良かったわね、相田。命拾いしたわね。」 「あっ、ああ。ごめんな、森川。俺がもうちょっと気を利かせて、何かしてあげれば良か ったんだよな。でも、嬉しくて体が動かなくなっちゃって。」 「あ、相田君…。」 ユキは真っ赤になってしまった。ケンスケもそれを見て真っ赤になる。 「あ〜あ、暑い、暑い。そろそろお昼ご飯にしましょう。」 アスカが手で顔を扇ぐ真似をすると、その場は大爆笑に包まれた。 ***  お昼ご飯は、ユキとヒカリの作ったサンドイッチであった。食べながらこれからどうし ようかと話し合ったが、午後はテニスをしたいと言うユキの意見は通らずに、結局もっと ここで遊びたいというおチビちゃん達の意見を尊重することになった。 おチビちゃん達は、リツコとマコトが見守る中、泳いだり水を掛け合ったり小川の小動物 を観察したりして、ワイワイしながら楽しい時を過ごしていたのである。 アスカ達はというと、午後はしばらく全員で遊んだ後、探検しようとアスカが言い出して、 サンダルを履いて上流の方へと向かって行き、珍しい生き物を次々に見つけてははしゃぎ、 こちらも結構楽しく過ごしたのだった。 結局、2時間ほどで探検が終わってからは、再びビーチボールで遊んだり、ゲームをした りして遊び、夕方を迎えた。そうして、この日は1日中水着姿で遊んだのである。 「さあて、キャンプ場へ行くわよっ!」 そして夕方5時前に、アスカの号令でみんなで車に乗り込んで、キャンプ場へと移動した。 *** 「は〜い、みんな。早いとこ降りて荷物を運んでね。」 キャンプ場に着くなり、アスカに急かされたみんなは、荷物を宿泊施設のログハウスへと 運んでいく。このハウスは8人用で、2人用の部屋が2つ、4人用の部屋が1つあった。 気になる部屋割りは、次の通りである。 ログハウスA 1号室 シンジ、マコト、ケンスケ、カヲル 2号室 リツコ 3号室 トウジ、ハルナ ログハウスB 1号室 ユキ、アキコ、マモル 2号室 ヒカリ、ノゾミ 3号室 アスカ、マリア 「荷物を運んだら、バーベキューの用意よっ!シンジ、準備よろしくねっ!」 「うん、分かったよ。」 シンジは、かねてからの打ち合わせ通りに肉の調理を行い、ヒカリとユキとアスカがご飯 を炊いたり野菜などを洗って切ったりと、手早く食材の準備を行う。 外ではマコトを中心にして鉄板や炭の用意を行た。鉄板は2枚あり、鉄板から少し離れた ところにテーブルと椅子を用意した。こっちの準備は割合時間がかからず、さっさと終わ って、後は待ちの姿勢である。 「は〜い、お待たせえ。」 5時半になると、ヒカリが山盛りの肉を持ってやって来た。片方の鉄板を肉中心と決めて、 鉄板の上に肉をどっさり置き、カヲルが早速焼き始める。 「うわあ、おいしそうだなあ。」 おチビちゃん達は、嬉しそうに肉を見つめる。トウジなどは、涎を垂らしそうな勢いだ。 「こっちも焼くわよ。」 もう片方の鉄板は、海産物が中心だ。エビやイカを少し弱めの火で焼いている。こっちを 焼くのはケンスケだ。 「そろそろ焼けたかしら。じゃあ、食べましょう。」 リツコの合図でどっと鉄板にみんなが群がる。むろん、小さい子が優先である。カヲルと ケンスケが焼くそばから箸が伸びてきて、肉が、野菜が、エビが、イカが、次々と減って いく。 当然ながら、トウジが大量にかっさらっていくため、順番は最後であるが、一杯食べられ るため文句は無いようだ。 頃合いを見てカヲルとトウジが交代し、ケンスケとシンジが交代するが、トウジは焼く傍 らで自分も食べたりしている。 「もう、意地汚いんだから。」 ヒカリに睨まれても、食い意地の方が上と見えて、止める素振りも見せない。さすがにヒ カリも諦めて、ため息をついたりしてる。 そんなこんなで、全員がお腹一杯食べ終わったのは、6時半頃だった。その後は男性陣が 後片付けを行い、女性陣はお風呂である。 そして、8時からはログハウスのA1号室でトランプ大会である。むろん、おチビちゃん 達もログハウスBの1号室でトランプや花札で遊ぶ。マコトとリツコは、今日1日子供の 面倒を見てくたくたになり、今日は早めに就寝した。 こうして、おチビちゃん達が寝たのは夜11時過ぎ、アスカ達が寝たのは、夜中の2時を 回った頃であった。このため、夜の部屋割りは次のようになった。 ログハウスA 1号室 シンジ、ケンスケ、カヲル、トウジ 2号室 リツコ 3号室 マコト ログハウスB 1号室 アキコ、マモル、ハルナ、ノゾミ 2号室 ユキ、ヒカリ 3号室 アスカ、マリア (第69.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  のどかな自然の中で、アスカは久々に自由に遊べて楽しい気分です。 2003.2.23  written by red-x  ちょっと短かったので、少し長くしました。また、トウジの妹をハルナに、ユキの妹を アキコ、弟をマモルとしました。いつまでも、妹や弟では可哀相なので。 2003.2.26  written by red-x



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