新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4部 ネルフ再生



第70話 みんなでキャンプ 後編

「みんな、おっはよ〜っ!」 昨日、悪夢を見たことなど全く感じさせずに、アスカは大きな声を張り上げていた。アス カの声によって、みんなが次々と起きてきた。 「アスカ、おはよう。」 シンジは、眠そうに目をこすっている。明け方になって部屋に戻ったため、他のみんなよ りも睡眠時間が短いのだ。アスカは、眠そうなシンジを見て、キョロキョロと辺りを見回 した。 (ようし、誰も居ないわね。) アスカは、誰もいないことを確認すると、シンジの頬に…。 「チュッ。」 とした。 「あっ。」 驚くシンジに、アスカは恥ずかしそうな顔をした。 (手をつないで寝てくれたお礼よ。) 「昨日は、ありがとね。」 そう言って、アスカは走り去って行った。そして、その先でユキと鉢合わせした。 「惣流さん、今日こそはテニスですよね。」 ユキは、朝っぱらからテニスウエアを着て現れて、ニコリと笑った。 (うっ…。ユキったら、そこまでしなくても。昨日テニスをしなかったこと、根に持って いるのかしら。) アスカは内心では驚きながらも、努めて平静に応えた。 「も、もちろんよ。今日は1日コートを取ってあるから。」 「そうですか、嬉しいです。急いで食べて、早くテニスコートに行きましょうよ。」 そう言って、ユキは再びニコリと笑った。 *** 「さあて、テニスコートに行きましょう!」 朝食を食べ終わると、アスカはみんなに号令をかけた。そして、次々に車に乗っていく。 テニスコートまでは歩くと遠いので、車で行くことにしたのだ。 コートは、車で10分位の距離にあった。コートに着くと、真っ先にユキが降りて、嬉し そうな顔をした。 「ねえ、惣流さん。準備体操しましょうよ。」 「ええ、良いわよ。」 アスカはユキと組んで準備体操やら柔軟体操をした。そして、ある程度体が温まってから、 軽くストロークを打つことにした。 「行くわよ、ユキ。」 「はい、お願いします。」 アスカの、本気の半分位の威力のサーブに、ユキはなんとか当てて返す。 「ユキ、甘いわよ。」 アスカは、それほど早くはないが、正確にコントロールされたボールを返して、ユキをコ ートの右へ左へと走らせる。 「ひええっ。惣流さん、もっと手加減して下さいよ〜っ。」 早くもユキは音を上げ出した。 「何言ってるのよ。それでもテニス部の副部長なの?しっかりしなさいよ。」 アスカは汗一つかかずに、涼しげな表情だ。 「そんなこと言われても、疲れますよ〜っ。」 「しょうがないわねえ。じゃあ、最初は軽くやりましょうか。ねえ、シンジ。こっち来て。 相田も、こっちに来なさいよ。」 「えっ、どうしたの。」 「どうしたんだ?」 急に呼ばれた二人は、駆け足でやって来た。 「ユキがねえ、疲れたって言うのよ。だから、1コートをダブルスで使いましょうよ。そ の方が疲れないから。」 「うん、分かったよ。」 「了解。」 シンジもケンスケも、嬉しそうに頷いた。 *** 「さあて、試合をするのよっ!」 結局、午前中は練習だけで終わってしまったため、午後のテニスを再開する時に、アスカ は試合をすることを提案した。と言うよりも決めてしまった。 「でも、アスカ。どういう風にするの?」 ヒカリの問いに、アスカはユキへと話を振った。 「ユキ、どうしようか。」 「そうですね、最初はダブルスの試合をやって、次にシングルスにしましょうか。総当た り戦にしましょうよ。」 「ええっ、やだな。」 ユキの提案に、シンジは真っ先に反対した。その時、みんなは一斉にアスカを見たが、み んなの予想を裏切って、アスカは全然怒らなかった。 「じゃあ、シンジ。シングルスは、嫌な人は代わりにダブルスの試合を増やすっていうの はどう?」 「ああ、それならいいかな。」 「じゃあ、始めましょうよ。」 こうして、試合が始まった。 初戦は、アスカ・シンジペア対ヒカリ・トウジペアとマリア・カヲルペア対ユキ・ケンス ケペアである。 アスカとシンジのペアは、最初はアスカがサーブをする。シンジが必ずと言っていいほど、 サーブをミスするからだ。もちろん、ノーミスのアスカに対して、シンジはミスだらけだ った。それでも、ヒカリ達に対して、6−4、6−3で勝つことが出来た。 次は、ユキ達との試合だったが、この時はシンジのミスが更に目立ち、5−6、6−5、 4−6で、惜しくもアスカ達が敗北してしまった。 最後のマリア達との試合では、シンジはコートの隅に立って、殆どボールを触らなかった。 実質、アスカのシングルス対マリア達であった。ところが、何と6−2、6−1で勝利し てしまったのである。 その結果、ペア対抗ダブルスは、1位、アスカ・シンジペア。2位、ユキ・ケンスケペア。 3位、マリア・カヲルペア。4位、ヒカリ・トウジペアという結果になった。 ユキ・ケンスケペアがマリア・カヲルペアに負けたことにより、2勝1敗が3ペアになっ たため、得失ゲーム数で順位を決めたためである。 次のシングルスでは、シンジ、ケンスケの2人が棄権した。このため、残る6人で戦った のだが、結果は圧倒的なアスカの勝利に終わった。アスカは、1ゲームも落とさずに全員 に勝ったのである。 ちなみに、2位マリア、3位ユキ、4位ヒカリ、5位カヲル、6位トウジであった。 そうして、試合が終わった後は、めいめいのペアに別れてボールを打ち合い、夕方を迎え た。 *** 「今日は、花火をするわよっ!」 食事が終わった後、アスカは、急遽ワイルドウルフの兵士に持って来させた花火を手にし て言った。本当は、肝試しをするつもりだったのだが、昨日の悪夢で、すっかりその気を なくしたアスカが考えついたのが花火だったのだ。 「あら、面白そうね。やりましょうよ。」 マリアがそう言って口を出した。マリアにとって、花火は珍しいものだったからだ。 「そうね、いいわね。」 「私も賛成です。」 ヒカリとユキが賛成し、女性陣の態度が固まると、これで決まりである。お風呂に入る前 に花火をしようということになった。そこで、早速みんな揃って湖畔に向かった。 「みんな、火を点けるから離れてっ!」 火を点けるのは、アスカの指名によってケンスケが務めることになった。そこで、ケンス ケは安全に配慮して、特に小さい子の動きに注意して花火に点火した。 「うわあ、綺麗だね。」 「でしょ、シンジ。」 「ねえ、トウジ。綺麗よね。」 「おお、綺麗やな。」 などと、良い感じのペアもいて、打ち上げ花火系は30分位かかって、全て使い切った。 その後は各自が花火をするのである。 「ねえ、アスカ。一緒にやろうよ。」 「ええ、良いわよ。シンジ、火を点けるのお願いね。」 ちょっと花火を怖がっているアスカにとって、シンジの手助けは渡りに船だった。だが、 ようく周りを見ると、しっかりペアで花火をやっていた。例外は、子供の世話を押しつけ られたリツコとマコトであった。 だが、みんな良い雰囲気で花火を楽しんだ。アスカはシンジと、ヒカリはトウジと、ユキ はケンスケと、それぞれいつになく良い雰囲気で花火をしたのである。 そんな様子を、リツコとマコトは微笑ましく見つけるのだった。 *** 「今日は最終日よっ!頑張って遊ぶわよっ!」 翌日の朝食の時にも、アスカは胸を張って言った。 「でも、アスカ。今日はどうするの?」 ヒカリが聞いてきたが、アスカは自信満々で答えた。 「午前中はテニス、午後は山中湖でボート、夕方は下部温泉よっ!」 「げえっ、大変そうだあ。」 思わず呟いたシンジを、アスカはギロリと睨む。 「あっ、でも色んなところに行けて、楽しそうだなあ。」 シンジが目をさまよわせて言うと、アスカは満足して頷いた。 「じゃあ、急ぐわよっ!」 こうして、最終日は過密スケジュールとなった。 ***  午前中のテニスは、最初は普通に練習して直ぐにダブルスの試合を行った。だが、順位 は昨日と変わらなかった。 昼食は、昨日のうちに作ったおにぎりだった。男子は女子が着替えてシャワーを浴びてい る間に、女子は車で山中湖へと移動している間に、昼食を済ませた。 山中湖に着くと、アスカはケンスケに命じて焼きとうもろこしと焼きイカを人数分買って こさせた。それから各ペアに別れてボートに乗った。最初は足で漕ぐタイプのものにして、 焼きとうもろこしと焼きイカを食べることにした。 特に女性陣が喜んで食べたが、トウジは足りなさそうな顔をしていたため、後でアスカに 『大食らい』と言われる羽目になった。 次に、手漕ぎのボートに乗り換えた。そして、各ペアで対抗戦をすることになった。もち ろん、漕ぐのは男である。 結果は、トウジ達が1着、カヲル達が2着、ケンスケ達が3着、最後がシンジ達だった。 アスカは、少しだけ不満そうな顔をしたが、直ぐに笑って言った。 「シンジ、もっと訓練に力を入れなさいよね。」 「う、うん、分かったよ。」 怒られると思ったシンジだったが、アスカが機嫌を悪くしなかったので、ほっと一息つい て安心出来た。 夕方になると下部温泉へと向かい、日帰り客でも入れる温泉を探して、男女に別れて入っ た。アスカ達はゆっくりと温泉に浸かり、1日の疲れを十分に癒して上機嫌になった。 アスカ達が温泉に入っていると、ミリアとアールコートが入って来たため、ユキが少し驚 いて聞いた。 「あれっ、お二人ともどうしたんですか。」 「ああ、ちょっとな。」 ミリアが少しドスの効いた声で言うと、ユキは何も聞けなくなった。そのため、アスカや マリアが、ミリア達と目で合図をしていることに気付かなかった。 「そういや、霧島マナが昨日隣の宿に泊まっていたぞ。」 「げっ、やっぱり来たんだ。」 ミリアの言葉に、アスカは少しだけ顔を曇らせた。 「もう、本当にしつこいですね。」 ユキも苦々しい顔をする。 「でもいいじゃない。温泉って、本当に気持ち良いわよね。」 ヒカリの言葉に頷く女性陣であった。 *** 「あらあら、しょうがないわね。みんな寝ちゃって。」 帰りの車の中で、リツコは笑って言った。リツコの隣では、マリアが寝息を立てていた。 真ん中の席では、トウジの頭がヒカリの肩に乗っていたし、後部座席では、シンジの膝の 上にアスカの頭があった。 おそらく、もう1台の車も同じような状況であろう。 「でも、今は平和なんだから、これでいいのかしらね。でも、この平和は、いつまで続く のかしら。」 リツコの呟きに答える者はいなかった。 (第70.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  2泊3日のキャンプで、アスカ達は目一杯遊び、楽しい時を過ごしました。いつまでも そんな楽しい時が過ごせれば良いのでしょうが、なかなかそう上手くはいかないようです。 2003.3.10  written by red-x



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