新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第34話 戦いの後

 ネルフ内の会議室に,加持やジャッジマン,レッドウルフを始めとする,傭兵部隊の代 表が集まっていた。情報交換のためと言えば聞こえは良いが,要は自分の部隊の被害状況 を言うのと同時に,戦果を競うのだ。ここには,アスカやシンジ達も参加していた。 「では,始めよう。まず,最初に紹介したい人物がいる。皆も顔は知っているだろうが, 惣流・アスカ・ラングレーだ。」 アスカは,加持の声に合わせて立ち,一礼した。 「彼女は,表向きは広報部所属になっているが,作戦部の通信情報分析も担当している。 今回の戦いでも,彼女の手腕で,戦いがかなり有利になったと思う。だから,彼女から 何かを頼まれたら,手伝って欲しい。もちろん美人だからって,変なちょっかいは絶対 にかけないようにな。」 加持の言葉に,部屋の中を笑い声が響いた。 「次は,アスカの婚約者であり,エヴァンゲリオンのチーフパイロット,碇シンジだ。」 シンジもアスカと同様に立ち上がって,一礼した。 「次の戦いでは,かなり頼もしい戦力になると思う。彼の言うことも,しっかり聞いてや って欲しい。最後に,鈴原トウジだ。」 トウジも同様に立ち上がって,一礼した。 「彼もエヴァンゲリオンのパイロットで,鈴原トウジだ。彼のことも,よろしく頼む。今 後彼らも,作戦の打ち合わせには出てもらうことになる。これからは,お互いに連携を取 って戦う場面が多くなると思うから,お互いに顔も知らないなんて事態だけは避けて欲し い。では,エドモン中尉から,被害状況などを報告して欲しい。」 加持が報告を促した。最初は,エドモン中尉,北の守りを担当していた。 「エドモン中尉だ。我々は,死者2人。重傷者10人,軽傷者30人だ。カルロス中尉の 力を借りて,敵部隊100人を撃退。敵の死者は30人,捕虜は70人だ。」 北の部隊は,敵と混戦状態になったのと,増援部隊の到着が少し遅れたことから,2人の 死亡者が出ていた。 「カルロス中尉だ。我々は,死者無し。重傷者2人,軽傷者15人だ。」 カルロス中尉の部隊は,増援部隊であったこともあり,被害は軽微だ。 次は,西の守りを担当していたリッツ大尉だ。 「リッツ大尉だ。我々は,死者1人。重傷者5人,軽傷者20人だ。グエン中尉の力を借 りて,敵部隊150人を撃退。敵の死者は20人,捕虜は130人だ。」 西の部隊も少し苦戦していたため,これも死亡者1人を出していた。 「グエン中尉だ。我々は,死者無し。重傷者無し,軽傷者5人だ。」 グエン中尉の部隊は,増援部隊であったこともあり,被害は軽微だ。 次は,東の守りを担当していたヴァンテアンのバレスだ。今回の被害が最も大きかった。 「バレスだ。最初に,ワイルドウルフと惣流アスカさん,碇シンジ君に礼を言う。君たち のお蔭で,我が部隊の多くの命と娘の命が助かった。本当にありがとう。」 バレスはそう言いながら,頭を深々と下げた。実は,アスカの指示で,ワイルドウルフの 1部隊が,ヴァンテアン部隊の救出を行っていたのだ。このため,奇跡的に死亡者が出な かったのだ。シンジに礼を言ったのは,シンジがハウレーンを助けたと聞いていたからで ある。 「我々は,死者無し。重傷者180人,軽傷者50人だ。敵部隊140人を撃退。敵の死 者は30人,捕虜は110人だ。」 次は,レインボースターだ。 「エリック大尉だ。我々は今回は戦闘に参加しなかった。以上だ。」 次は,レッドアタッカーズの番だ。 「レッドウルフだ。我々は,死者無し。重傷者無し,軽傷者5人だ。敵部隊10人と戦い, 1時間ほど足止めをした。以上だ。」 レッドウルフは苦々しい顔をした。今回の戦闘では,何の戦果もあげなかったからだ。し かも,400人もの大部隊で,たった10人の部隊と戦って,何の戦果も無いなど,普通 では考えられないからだ。 次はワイルドウルフだ。 「ウォルフだ。我々は,死者無し。重傷者1人,軽傷者10人だ。敵部隊100人を撃退。 敵の死者は10人,捕虜は90人だ。」 次は,特別に参加していたラブリーエンジェルの番だった。 「ブルーだ。我々は,死者無し。負傷者無しだ。敵黒竜部隊10人と白龍部隊400人を 撃退。敵の死者は350人,捕虜は60人だ。」 それを聞いて,その場の全員が顔色を変えた。普通は,傭兵同士の戦いでは,半分以上の 死者は出ない。死ぬまで頑張って戦う者がいないからだ。だから,この死者の数は,異常 だったのだ。だが,ジャッジマンは気にせず続けた。 「ジャッジマンだ。我々は,死者無し。重傷者無し,軽傷者2人だ。敵部隊10人と戦い, 30分ほど足止めをした。以上だ。」 最後に加持が締めくくった。 「みんな,良く頑張ってくれた。敵は死者440人,捕虜が460人だ。それに対して, 我が方の損害は,死者が3人,重傷者198人,軽傷者137人となった。今回は,我々 の大勝利だ。今回の功績の第一は,ラブリーエンジェルだ。良くやってくれた。」 「ありがとうございます。」 加持の言葉にブルーは頭を下げた。 「功績の第二は,レッドアタッカーズだ。黒竜部隊を良く足止めしてくれた。あれが無け れば,大変なことになっていただろう。良くやってくれた。」 「え,ほんと?あ,どうもありがとう。」 レッドウルフは意外そうな顔をしていた。それは,レッドウルフだけではない。他の隊長 達も,『何であいつらが?』という顔をしていた。その雰囲気を察した加持は,皆にあり のままを知ってもらった方が良いと思い,黒竜部隊の実態を知らせることにした。 「ちょっと,この映像を見て欲しい。」 加持は,壁際の大きな液晶画面に,黒竜部隊とレッドアタッカーズの攻防を映したのだ。 それを見た他の隊長達は,顔色を変えていった。 「これを見てもらえば分かるが,黒竜部隊は普通の部隊では相手にならない。足止めさえ も難しいのだ。他の部隊で,レッドアタッカーズよりもうまく戦えるという者がいたら, 教えて欲しい。ヴァンテアンでさえ,手ひどい目に遭っているのだから。」 加持の言葉に皆黙ってしまった。だが,バレスが質問を投げかけた。 「わしは文句を言うつもりは無いが,一体どうやってあいつらをやっつけたんだ。教えて 欲しい。」 バレスは,加持を見た後,ブルーを見つめた。それに,ブルーは応えた。 「特殊な装備を付けて,特殊な訓練を受けた者が対処したのです。」 「では,我々も同じ装備をして,同じ訓練を受ければ,あいつらと戦えるのか?」 「いえ,難しいでしょう。装備は同じでも,それを扱うには,特殊な訓練が必要になるか らです。」 「では,どんな訓練をしたのだ。教えてくれ。」 ブルーは,ちらりとウォルフを見た。ウォルフは,目で構わないという合図を送った。 「そうですね。まず,格闘技の腕を磨きます。」 バレスは首を傾げて,問いかけてきた。 「そんなことをやって,何の意味があるのだ。」 「銃が通じないからです。従って,肉弾戦で敵を倒す必要があります。」 それを聞いたバレスは,口を開けたまま,何も言えなかった。だが,ブルーは続けた。 「それから,素養も大切です。特殊装備には相性がありますから。」 「と,言うと。」 「効き目には個人差があります。ですから,下手をすると全く効かない可能性もあります。 その時に,素早く逃げられるだけの身のこなしも必要になります。」 「それでは,恐ろしくて,誰も敵に近づけないな…。」 バレスは肩を落した。 「ですが,安心してください。黒竜部隊は,あれで最後です。おそらく,もうあのような 部隊は出て来ないでしょう。」 それを聞いた他の隊長達は,心の中で安堵した。 「では,その話はこれでおしまいだ。戦いは,これで終わった訳じゃない。今回は,ヴァ ンテアンの被害が大きかったため,今までの守備計画を見直す必要がある。」 加持はそう言うと,第3東京市の地図を壁に貼った。 「今までは, 東はヴァンテアン2個中隊,400人。 西はリッツ大尉200人,グエン中尉100人,カルロス中尉100人。 南はワイルドウルフ2個中隊,400人。 北はレッドアタッカーズ1個中隊,200人とエドモン中尉100人。 市内中心部にレインボースター1個中隊,200人とジャッジマンの部隊200人。 予備としてレッドアタッカーズ1個中隊,200人。 ガード役が昼は主に第壱中学校付近に100人。 という配置だったが。」 「これをこう変えたい。 東はワイルドウルフ1個中隊,200人とカルロス中尉100人。 西はレインボースター1個中隊,200人とリッツ大尉200人。 南はワイルドウルフ1個中隊,200人とグエン中尉100人。 北はレッドアタッカーズ1個中隊,200人とエドモン中尉100人。 市内中心部にレッドアタッカーズ1個中隊,200人とジャッジマンの部隊200人。 予備としてヴァンテアン1個中隊,200人。 ガード役が昼は主に第壱中学校付近に100人。 特に質問はあるか?」 加持の声に特に反応は無かった。 「では,これで決まりだ。おそらく,1か月以内に本格的な攻撃が開始されるだろう。み んな,気を引き締めて頑張って欲しい。」 そう言って,加持は会議を締めくくった。 ***  会議の後,シンジとアスカは,バレスと会っていた。頼みごとがあったからである。 「すみません,バレスさん。お呼び立てして。」 「ああ,構わんよ。で,一体何の用かね。」 「実は,黒竜部隊の中に,僕の友達がいたんです。」 「えっ!何だって!」 「それで,本当に勝手なお願いで申し訳ないのですが,彼のことを許してあげて欲しいん です。彼は,洗脳されていて,最近の記憶を失っているんです。」 「アタシからもお願いします。シンジの友達を許してあげてください。」 アスカも懇願した。 バレスは,腕を組んでしばらく考えていたが,穏やかな顔をして言った。 「分かった。普通なら,話も聞かないで断る所だが,他でもない,君たちの頼みとあらば, 断る訳にはいかんな。良いだろう。君の友人を許してあげよう。」 「本当ですかっ!ありがとうございます。」 「ありがとうございます。」 シンジとアスカは,深々と頭を下げるのだった。 *** 「カヲル君,調子はどうかな?」 「うん,まあまあだよ,シンジ君。特に体には支障がないみたいだ。」 「良かった。じゃあ,もうすぐ退院出来そうだね。」 シンジとアスカは,カヲルを見舞いにネルフの病院に来ていた。昨日の夕方,カヲルはこ こに運び込まれ,色々な精密検査を受けていたのだ。 「シンジ,それはまだ分からないわよ。洗脳されていたかもしれないけど,敵として戦っ たんだもの。簡単に出させてもらえないんじゃないかしら。」 それを聞いたカヲルの顔が沈んだ色に変わる。 「で,でも,きっとそのうちに出してもらえるよ。僕,父さんに頼んでみる。」 シンジがそう言った時のことだった。マコトが病室に入って来た。 「アスカちゃん,僕のことを呼んでいるって聞いたけど,なんだい。」 「ちょっと,相談したいことがあるのよ。」 「良いよ。言ってごらん。」 「2つあるんだけど,一つは,ミサトの記憶がまだ戻らないでしょ。だから,作戦部とシ ンジ達パイロットとの連携が今ひとつになると思うのよ。今まではそれでも良かったけど, 今後はまずいと思うのよ。だから,日向さんに,アタシ達のすぐ近くに引っ越して来て欲 しいのよ。」 「すぐ近くって言うと?」 「具体的には,アタシ達が住んでいる部屋の隣位が良いわ。それに,出来れば食事なんか も一緒にしたいのよ。今は,作戦部の実質的な責任者は,日向さんでしょ。だから,日向 さんとの連絡を密にしたいのよ。」 「葛城さんと赤木さんは,どう思うかな?」 「一応,本人には,日向さんとこれから一緒に朝晩食事を共にすることについては,了解 をもらっているわ。だから,その点の問題はないわ。まあ,日向さんが,リツコが嫌いっ て言うのならあきらめるけどね。あ,そうそう。料理はこちらで用意するから,その点の 心配はないわ。日向さんは,出てきた物を食べて,必要に応じて仕事の話をするだけよ。」 「そう言われると,断れないなあ。良いよ,僕もコンビニの弁当や外食ばかりだったから, その方が良いよ。」 その返答を聞いて,アスカは,少しだけニヤリとしたが,直ぐに真剣な顔に戻った。 「で,次のお願いなんだけど,当分の間,この渚カヲルっていう子と一緒に暮らして欲し いの。」 「日向さん,僕からもお願いします。」 アスカの意図を察したシンジも一緒になって頼んだ。おそらく,マコトと一緒なら,ネル フの外で暮らすのも許可されるだろうとの考えなのだ。 「う〜ん,どうしようかな。僕は家を空けることが多いけど,それでも良いのなら。」 「やったね!シンジ,日向さんはOKよ。」 アスカはニコニコ顔である。 「ありがとうございます,日向さん。」 シンジも胸をなでおろした。 こうして,次の土曜日にマコトはシンジ達の住むマンションに越してくることになった。 それに合わせて,カヲルも退院することになったのである。 また,アスカの頭の中では,もう一つの計画が決まっていた。ケンスケに食事の手伝いを させるのである。 今までは,加持も含めて6人分の食事をユキが作るパターンと,ヒカリ達を含めて12人分 の食事をユキとヒカリで作るパターンの2通りだったが,これからは2人増えるため,ユ キの負担が増える。このため,ケンスケに手伝いをさせようというのである。 決して自分が手伝う気がないとか,シンジにやらせようと考えない訳ではないのだが,ア スカはやらなけれがならない仕事が山ほどあり,食事の準備に時間を割く訳にはいかない のである。シンジにしても,アスカの手伝いをしてもらう必要があるのだ。 それに,アスカはケンスケが嫌がらないだろうという目算があった。ケンスケがユキのこ とを意識しているのは何となく分かっていたし,色々と探りを入れると,ケンスケも料理 自体は出来ることが分かったからだ。 それに,お邪魔虫が減って,ヒカリからも感謝されることは明らかである。というのは, ケンスケは食事が終わると,直ぐにトウジの所へ行っていたのだが,ユキの手伝いをすれ ば,そうもいかなくなるからだ。 (ふふふっ。アタシって,何て頭が良いのかしら。) アスカは,内心ほくそえんでいた。 ***  その夜,アスカの元にドイツから電話がかかってきた。 「えっ,完成したの。で,いつ運べるの?ええ,分かったわ,有り難う。」 そう言って,アスカは電話を切った。 「良かったわ。これで間に合うわね。」 アスカの顔には笑顔が浮かんでいた。 (第34.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  いつの間にか,コンフォート17マンションは,チルドレン達の宿舎になってしまった ようです。 ○コンフォート17マンション居住者 ・アスカ,シンジ,ミサト,リツコ ・加持 ・トウジと妹 ・ヒカリと姉妹 ・ケンスケ 2月20日から ・マコト,カヲル ○朝食・夕食 今まで ・アスカ,シンジ,ミサト,リツコ,ユキ,ケンスケ(時々,加持) ・トウジと妹,ヒカリと妹,ユキの弟妹(時々,コダマ) 2月20日から ・アスカ,シンジ,ミサト,リツコ,ユキ,加持,ケンスケ,マコト,カヲル ・トウジと妹,ヒカリと妹,ユキの弟妹(時々,コダマ)   2002.4.21  written by red-x



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