新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ
(誰かがアタシの首を絞めている。一体誰が…)
アタシは、目を開いて上を見た。誰かの顔が見えるが、ぼやけて良く見えない。頭がボ
ォッとするし、目も良く見えないし、耳も良く聞こえない。
(私の首を絞めるのは、一体誰?)
無意識にアタシの手が伸びて相手の顔を撫でる。すると、アタシの首を絞めている力が
弱まる。そして、顔に何かが垂れてきた。
(よだれかな。)
アタシは女の首を絞めて快感にうち震え、よだれをたらしている変質者を想像した。
「気持ち悪い…。」
思わず呟いてしまった。そして、再び深い眠りについてしまった。
−プロロ−グ−
アタシが目覚めたのは、それから3日後だったらしい。目を開けると白い天井が見えた。
「アスカ…」
アタシを呼ぶ声の方に顔を向けると、シンジが涙を流して笑っていた。はっきり言って、
変な顔だ。
「ぷっ。バカシンジの顔、おかしいよ。どうしたの。」
そのときのシンジの顔が、とてもおかしかったので、つい、言ってしまった。でも、嫌
じゃなかったけどね。
シンジは、少し驚いたような顔をしていたが、満面の笑みを浮かべて言った。
「おかえりなさい。」
アタシもなぜか反射的に言ってしまった。
「ただいま。」
次の日、アタシはシンジから、色々なことを聞いた。
サ−ドインパクトが起きたこと。
全人類が、一度滅びたこと。
殆どの人が戻ってきたこと。
碇司令らが、ゼ−レや使徒に関する情報を全世界に公開したこと。
日本の首相が辞職し、冬月副司令の知己が新首相になったこと。
ネルフの多くの職員が戦略自衛隊に虐殺されたが、その殆どが戻ってきたこと。
戻ってきた人の多くが、一時的な記憶喪失になっていること。
ミサトなど、一部の人が戻ってきていないこと。
それらのことを聞くだけで、1日が過ぎてしまった。
一通り話が終わった後、シンジが問いかけてきた。
「アスカは、体力が落ちているけど、入院するほどではないらしいんだ。その気になれば、
明日にでも退院出来るけど、どうする。」
アタシは暫く考えた。ミサトが帰って来ていないということは、シンジと二人きりだ。
ということは、同棲ではないか。以前だったら、即座に断っていたはずだが、今は違う。
自分をずっと看病していたらしいシンジに感謝の気持ちがあったし、もしかしたら、ミサ
トが戻ってくるかもしれないという期待があった。
「そうね。おうちに帰ろうかしら。ミサトにお帰りって言ってあげないとね。」
そう答えると、一瞬シンジの顔が綻んだように見えたが、直ぐに困惑を浮かべた顔になった。
「ミサトさんが戻らないと、僕と二人きりになるんだけど、それでもいいの。」
こういう所は、やっぱりバカシンジだ。アタシは、どう答えようか迷った。バカというと
気を悪くするだろうし、二人きりでもいいよというのも恥ずかしいし。そのうち、良い答
えが見つかった。
「ミサトの家族はアタシ達しかいないでしょう。ミサトが戻るまで5年でも10年でも待
ちましょう。それが家族っていうもんよ。」
我ながら、決まったと思ったけど、まさか、シンジが泣きだすとはね。全く驚いたわ。
こうして、翌日からアタシとシンジの同居(同棲じゃないわよ!)が再開された。
2001.9.6 written by red-x