変なやつ。












2nd day










今、私は屋上にいる。

正確に言うと、私達、だが。

この男は何なのだろう。まったく意図が読めない。

私が屋上にいるのを確認するとそのまま私の横まで来て、あろうことか何もせず寝転んでいる。


やる気がないのだろうか。すでに賭けを放棄するとはいい度胸である。

私はなんとなくすぐ横にある仁王の髪の毛に手を伸ばした。

サラサラしていて気持ちがいい。女も羨む髪質…。とはこのことだろうか。


何となく腹が立った私は手の中で遊ばせていた髪の毛のひと房を少し力を入れて引っ張った。



「痛いんじゃけど…。」

「そう。」

「なんじゃ?用でもあるんか?」

「別にー。」



そうか。と言ってまた眠りにつこうとする仁王。

本当に…この男は。用があるのはそっちじゃないのか。

ちゃんと屋上に来たからやる気があるのかと思ったのだが。

考えていることがさっぱりわからない。

仁王が気持ちよさそうな寝息を立て始めたのを見て、私はため息をつく。



「ねぇ。何もしないの?」

「…んぁ?なんかして欲しいんか?」

「…別に」

「じゃあ、よかとよ。」



この男といると、別に。という言葉を連発している気がする。

何をしでかすのか少しだけ期待していた私は拍子抜けな現状に、広がる青空に吐息を混ぜた。

目線を向けてしばらく私を観察していた仁王はまた眠気の波が襲ってきたらしく、ひとつ欠伸をするとそのまま動かなくなった。



「つまんないな…」



あと5日もこの状態が続くのか。

さっさと死んだほうが良かったかもしれない。なんとなく時間を浪費している気がする。

ああでも、楽に死ねるチャンスを手放すのももったいないし…。

そんなことを思いながら空を見つめていると、あくびが出た。

寝息を立てながら寝ている仁王を半眼で見つめ、そんなに寝れるものなのかと私も横に寝転んでみる。

寝ころんでみると仁王の顔が近くなった。

奇麗な顔だ。目つきは悪いけれど。そこがまた女にもてそうだ。

そういえばちょいワルが流行っていたな…などとぼんやり思う。

大体ちょいワルって何だ。世の中完全に悪いヤツなんていないし、逆に全く悪いことを考えない人間なんていないだろう。

見た目で人を判断することは愚かなこと…‥

徐々に眠さの波が押し寄せてくる。押したり引いたりするさざ波のような眠気。

眠りに入る寸前のこの現(うつつ)か夢かわからないような、ふわふわとした感覚は好きだ。




「ほんと…つまんない…――――」



小さなつぶやきを最後に、私の意識はブラックアウトした。

















「寝た…か?」



横にいるの気配が薄くなって、俺は閉じていた目を開いた。

いわゆるたぬき寝入りである。

頬杖をついてに、生きているのかという不安を覚えて、健康的というには程遠い真っ白な頬に触れてみる。



「…温かい」



生きているようだ。はなんとなく肌が冷たいイメージがあったのだが、どうやら予測がはずれたらしい。

同じように生きているのだ。

彼女が自分から何もしようとしないだけで。

死ぬ。という行動は進んでしようとしているが…。

死以外の何かを望むことを拒絶しているような感じを受ける。









俺はあえて何もせず、ただ傍にいようと決意した。

彼女が『死ぬ』ため意外の行動をしようとするまで。

何かが変わるとしたら、まさにその瞬間にチャンスがあるのだろう。







俺と君に残された時間は、あと5日。





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