アジアとシュメール

"現在知られている神話の形に成るまで三つの段階がある。 最初にシュメール人が考えたシュメール神話である。これは楔形文字で粘土板に書かれた、世界最古の神話とされる。""次にシュメール人を支配したアッカド人が継承したアッカド神話である。アッカド神話は大きくバビロニア神話とアッシリア神話に分かれるが、これは言語の違いだけであり、内容にほとんど差はない。 その大部分はシュメール神話に類似、或いはそのままの状態で継承されている。特に神々の名前など、シュメール神話同様のものが扱われる。そして、この段階でほぼ現在に知られている古代メソポタミア地域の神話は確立した。"これらを総称してメソポタミア神話、あるいは古代オリエント神話とも呼ばれている。ただしオリエントというとカナンのカナン神話の系統(ウガリット神話、フェニキア神話)や、ヒッタイト神話、エジプト神話なども含む場合がある。

洪水地質学の支持者は、さまざまな文化の神話は、広範囲にわたった大洪水の歴史の記憶の名残であると主張する。他の学者は、創世記神話は物語の後世版であり、初期メソポタミア神話(ジウスドラ叙事詩、アトラハシス叙事詩、ギルガメシュ叙事詩を含む)がベースになっていると考えている。"何人かの学者の論議によれば、創世記神話はごく初期のバビロニア神話に通じる特徴を有するが、聖書の物語に特有の様々なポイントは、ごく初期の洪水神話にも一般的にみられるものである。 聖書学者のキャンベルとオブライエンによれば、創世記の洪水神話ではヤハウェ資料による記述と祭司資料による記述の両方が、バビロニア追放(紀元前539年)以後に制作されたもので、バビロニアの物語に由来するという。"

バタクの伝承では、地球は巨大なヘビのナーガ・パドハ(Naga-Padoha)の上にあった。ある日、ヘビはその負担に耐えかねて、地球を海に振り落とした。しかしバタラ(Batara)神が海に山を送り出したおかげで神の娘は救われた。人類は生き延びた神の娘を祖先としている。のちに地球はヘビの頭上に戻された。ポリネシア人の間では、いくつかの異なる洪水伝説が記録されている。それらには、聖書の洪水に匹敵する規模のものはない。"ライアテア(Ra'iatea)の人々の話では、二人の友人、テアオアロアとルーは釣りに出かけ、偶然釣り針で大洋の神ルアハトゥ(Ruahatu)を起こしてしまった。怒って、彼はライアテアを海に沈めると決めた。テ・アホ・アロア(Te-aho-aroa)とロオ(Ro'o)は許してほしいと懇願し、ルアハトゥは彼らにトアマラマ(Toamarama)の小島に家族を連れて行かなければ助からないだろうと警告する。彼らは出帆し、夜の間に島は大洋に沈み、次の朝だけ再び出現した。 彼らの家族以外は助からず、彼らは マラエ(marae: 寺)を建ててルアハトゥ神に奉納した。"

海洋のニュンペーはむしろ女神に近い。1)オーケアニデス(単数:オーケアニス)は、オーケアノスがその姉妹テーテュースのあいだにもうけた娘たちで、3000人、つまり無数にいるとされる。この二柱の神からはまた、すべての河川の神が息子として生まれており、河川の神とオーケアニスたちは姉弟・兄妹の関係にあることになる。冥府の河であるステュクスや、ケイローンの母となったピリュラー、アトラース、プロメーテウス兄弟の母であるクリュメネーなどが知られる。2)ネーレーイデス(単数:ネーレーイス)は、ネーレウスとオーケアノスの娘ドーリスのあいだの娘で、50人いるとも、100人いるともされる。アンピトリーテー、テティス、ガラティア、カリュプソーなどが知られる。ニュンペーは自然界にいる女性の精霊で、なかには神々と等しい者もいた。他方、地上の世界にはニュンペーと対になっているとも言える男性の精霊が存在した。彼らはその姿が、人間とはいささか異なる場合があった。彼らは山野の精霊で、1)パーン(別名アイギパーン、「山羊の姿のパーン」の意)、2)ケンタウロス、3)シーレーノス、4)サテュロスなどがある。彼らは、上半身は人間の姿に近いが、下半身が馬や山羊であったり、額に角があったりする。パーンは別格とも言え、ヘルメース神とドリュオプスの娘ドリュオペーのあいだの子で、オリュンポスの神の一員でもある。ただしパーンが誰の子かということについては諸説がある。シューリンクス笛を好んだが好色でもあった。ケンタウロスは半人半馬の姿で、下半身は馬であった。乱暴で粗野であるが、ケイローンだけは別格で医術に長け、また不死であった。シーレーノスとサテュロスは同じ種族と考えられ、前者は馬に似て年長であり、後者は山羊に似ていた。粗野で好色で、ニュンペーたちと戯れ暴れ回ることが多々あった[60]。

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