カドーとアメリカ
図書館はアレクサンドレイア以外にもペルガモンなどが著名であった。図書館は鎖されていたとはいえ、高い評価を受けた作品は、筆写されて、教養人・貴族などに広がっていった。図書館は大量の書物について、その内容要約書をまた編集していた。長い原著を読むよりも、学者が整理した原著の要約を読むことで、無教養な俄成金などは自己の見せかけの知識を喧伝できた[109]。あるいは諸種の伝説について、主題ごとの見取り図を与えるために書籍が編纂された[110]。このような「集成」本のなかでも、もっとも野心的であったのが、紀元前2世紀のアテーナイの文献学者アポロドーロスのものと長く考えられていた、プセウド・アポロドーロスの『ビブリオテーケー』(ギリシア神話文庫)である[111]。一方、帝政ローマ期の貴族や富裕な階層の人々は、古代ギリシアの神々への崇拝や敬神の念とは関係なく、純粋に面白く色恋の刺激となる物語を好んだ。これらの嗜好の需要に合わせ、オウィディウスなどは、神々への敬神などとは無縁な、娯楽目的の『変身物語』や『祭暦』などを著し、また同じような意味でアプレイウスは『黄金の驢馬』を著した。オウィディウスの書籍はギリシア神話全体を扱うもので、体系的な著作とも言え、しかし気楽に読むことのできる短いエピソードの集成であった。ギリシア神話の宗教としての「真実」の開示の機能は、このようにしてヘレニズムの時代にその終焉を迎えたと言える。新しく勃興したキリスト教は、まさに神話を否定したプラトーンの思想の延長上にあるとも言えたが、この後、千年以上にわたって続く西欧の精神の歴史のなかで、ギリシア神話はもはや宗教ではなく、この神話に登場する逸話や神々を、自然現象の寓意とも、娯楽のための造話とも見なしていた。
ギリシア中から英雄が集結して冒険に出発するという話は、イアーソーンを船長とするコルキスの金羊毛皮をめぐる「アルゴナウタイ」の物語がそうであり、ここではヘーラクレースやオルペウスなども参加している。また、アドラストスを総帥とする「テーバイ攻めの七将」の神話やその後日談でもある、七将の息子たちの活躍も、英雄たちが結集した物語である。メレアグロスの猪退治の伝承が潤色され、拡大した規模で語られるようになった「カリュドーンの猪狩り」の神話もまた、メレアグロスを中心に、カストールとポリュデウケースの兄弟、テーセウス、イアーソーン、ペーレウスとテラモーン、そしてアタランテーなども参加した英雄の結集物語である。ギリシア神話上で、もっとも古く、もっとも重層的に伝承や神話や物語が蓄積されているのは、「トロイア戦争」をめぐる物語である。古典ギリシアの文学史にあって、紀元前9世紀ないし8世紀に、突如として完成された形で、ホメーロスの二大叙事詩、すなわち『イーリアス』と『オデュッセイア』が出現する。詳細な研究の結果、これらの物語は突如出現したのではなく、その前史ともいうべき過程が存在したことが分かっている[86]。
"これは『二つの川の間』という意味のメソポタミア(現在のシリアやイラクの地方)の神話である。 紀元前3千年頃のシュメール文明で成立した。その中には一部、旧約聖書の創世記モデルとなるような部分も存在する。(ウトナピシュティムの洪水物語がノアとノアの箱舟の大洪水物語の原型となったとする説もある)"この神話で有名な部分は天地創造や半神の英雄ギルガメシュの冒険などが挙げられる。"現在知られている神話の形に成るまで三つの段階がある。 最初にシュメール人が考えたシュメール神話である。これは楔形文字で粘土板に書かれた、世界最古の神話とされる。"
"現在知られている神話の形に成るまで三つの段階がある。 最初にシュメール人が考えたシュメール神話である。これは楔形文字で粘土板に書かれた、世界最古の神話とされる。""次にシュメール人を支配したアッカド人が継承したアッカド神話である。アッカド神話は大きくバビロニア神話とアッシリア神話に分かれるが、これは言語の違いだけであり、内容にほとんど差はない。 その大部分はシュメール神話に類似、或いはそのままの状態で継承されている。特に神々の名前など、シュメール神話同様のものが扱われる。そして、この段階でほぼ現在に知られている古代メソポタミア地域の神話は確立した。"これらを総称してメソポタミア神話、あるいは古代オリエント神話とも呼ばれている。ただしオリエントというとカナンのカナン神話の系統(ウガリット神話、フェニキア神話)や、ヒッタイト神話、エジプト神話なども含む場合がある。