oath to the snow

-1-

あとどれくらいの季節を
キミと共に過ごせるだろう。
廻ってく時の中で

「なあ、アレン。街まで行かないか?買いたいものがあるんさ」

そう言って、ラビが誘ってくれたのは午後の陽射しがぽかぽかと暖かいころだった。

街はアクマの気配もなく、行きかう人々の表情も穏やかで平和そのものだ。

「買いたいものって何ですか?」

「ん〜〜それは置いといて…。取り合えず、デートしよ、アレン」

「え?ええ!?」

「なんさ、その反応?嫌なんか?」

「え?え、っと…嫌とかじゃなくて…」

「じゃあ、ほら。行くさ」

ラビが僕に向かって手を差し出す。
擦れ違う。仲の良さそうなカップル。その手は離れたくないとでも言うように、しっかり握られている。
そんな風に、簡単に手を取れたらどんなに良いだろうか?
でも、僕には出来ない。
繋いでしまったら?きっと心ごと離れられなくなってしまう。

ちゅうちょして体の脇に下げられたままの僕の手を、幾分強引にラビの大きな手が掴み取りぎゅっと握られる。

「らっ…ラビ!」

「恥ずかしいことなんてないさ、俺ら恋人同士だろ?」

恋人同士。

最初は本当に、ただ単に、ラビが僕を好きでいてくれることが嬉しかった。
こうして一緒にいられるのも嬉しい。

手を繋いで、こうして街を歩いて。
いろんなものを二人で見て。
いろんなことを話して、笑って。
時々、意見の食い違いで口喧嘩してみたり。そして仲直りする。
そんな、本当に何気ない毎日が愛しくて、嬉しい。

本当に嬉しいんだ。

でも。





「アレン?疲れたさ?」

「え?いえ、大丈夫ですよ?」

どうやらぼんやりしていたらしい。
気遣うような声に僕ははっとして顔を上げると、少し屈み僕の顔を覗き込んでいるラビと眼があった。

「少し、寒くなってきたさ…」

あんなにも暖かい陽が射していたのに、気づけば今にも何か振り出してきそうな、灰色の空が広がっている。
空を見上げて、その色の寒さに震えた僕の首にふわりと暖かい物が触れた。
視線を下に戻せば、眼に映ったのは見慣れたオレンジ色のマフラー。

「これじゃラビが寒いでしょう?僕なら大丈夫ですよ」

「良いからしとけって、アレンの首筋見てると俺の視線が寒いんさ」

「何ですか?それ…」

自分の体を抱きしめ大げさに寒がって見せるラビの仕草と、台詞がおかしくて思わず笑ってしまう。

「やっと笑ったさ」

「え?」

「もう少し歩けるか?アレンに見せたいもんがあるんさ」

ラビの先の台詞の意味を問おうと口を開く前に、再び手を取られてぐいぐいと引っ張られる。
石畳の坂道を上りきり、高台の空き地へと辿りつく。

眼下に広がるのは、先ほどまでいた街並み。それが全部見渡せるのだ。
遠くには海が広がって見える。

「わぁ…」

「これから、暗くなるとあちこちの家に明かりが灯って、もっと綺麗なんさ」

アクマとの戦いという殺伐とした日常の繰り返しで、こんな風に街並みを見下ろしたことなどなかった。
人が生きているからこその風景。

「春になると、色とりどりの花が咲いて綺麗なんさ」

握られたままだった手にぎゅっと力が込められた。

「夏は若草の緑が綺麗だろ?秋は葉が紅く、黄色く色づいて綺麗なんさ」

「ラビ?」

隣に佇む長身の彼に眼を向けようとしたその時、白いものがふわりと目の前を掠めた。

「雪?」

更に上を見上げると、踊るようにふわりふわりといくつもの白が降りてくる。

「雪さ…」

「綺麗…ですね…」

「アレン。冬は、白銀で街が、樹が覆われて綺麗なんさ…」

「ラ、ビ…?」

「だから、また一緒に見よう?ふたりで…こうして…」

 

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