家に帰ってから、一時間が経った。マカはまだ戻ってこない。どこで道草食ってるんだと気になったから、迎えに行こうと 思った、ところで電話が鳴った。
「ブレアが出るよ〜」
 たまたま、電話の近くにいたブレアが受話器を取った。
「もしもし?どちら様ですかっ?」
 最初は威勢が良かった声が、急に小さくなった。
「…え、本当、ですか?…はい、分かりました…」
「どうした?」
「あのね、マカが…」
 続きを聞いたとき、頭の中が真っ白になった。

「お前はここで待ってろ。遅くなったら、先に寝てていいから」
 急いで家を出て、バイクを走らせた。早くマカのところに行かなければ、…そう思った。

 ―着いたのは、病院だ。彼女は無事なのだろうか…。凄く不安になった。ブレアからは轢かれたとしか聞いてないから、 どの程度の怪我なのかは把握できなかった。
 バイクを降りた。もし大怪我だったら…?と、そのとき、不安と心配が頭を過ぎった。
 病院の廊下を走っていると、マリー先生が立っているのが見えた。
「先生!」
「…ソウル君」
「あの、マカは今どこに?」
「…そこの、部屋の中よ。手術は終わったんだけど」
 マリー先生が指した扉には、ICUと書かれていた。集中治療室の略称で、患者の身体の損傷が激しいときにここに運ばれる …、冷静に解釈した自分が憎かった。
「え、まさか―」
「…そのとき近くにいた知り合いから聞いた話なんだけど」
 その話によると、マカが轢かれたのは、2tトラックだったらしい。それで、右手と左足の骨折と、肋骨の破損による呼吸 器官・機能の異常と― …あとは覚えていない。聞いている間に辛くなって、耳に入らなかった。
 彼女を一目見たいと言ったけれど、先生が「見ないほうがいい」ときっぱりと、哀しそうな眼でみつめて言い切ったから、 どれだけ酷いのかは分からなかった。想像したくない。夢の中よりも損傷が大きいのだ、すぐに受け入れられないだろう。
「まだ、脈が落ち着いてないみたいだから…」
「マカ…」
 トラックの運転手はそのまま走り去ったらしい。いわゆる轢き逃げというやつだ。許せなかった。そいつを一発でも殴りたか った。どんどん怒りが込み上げてきたけれど、なんとか抑えた。

 本当に、本当に一番悪いのは、自分自身だと、責めながら。

『注意』次ページは背景白めですお



 

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