「タイガーさん!!」
「ワイルド君!」
「「どっちがいい!?」」
「……………知るか。」
首からハンドタオルを引っ掛け…腰にはバスタオル一枚を巻きつけただけ…そんな格好で風呂から出てきた虎徹は…襖を開けた途端に繰り出された質問と二人の持つ物に思わず眉を顰めた。
嬉々として差し出されたのは…着物だ。ただし…夜のコスプレ用…の代物。 イワンの日本好きが高じた結果とも言うのだろうか…やたら和風なグッズを使うことが多い。かといってキースの方はというと…やはり…たまにコスプレなんかを用意されたりなんかする。ただし、こちらはハード系…と言おうか…エナメルのボディスーツや職業系のコスプレに拘束を施したりなんかしてくる。
そして今夜はイワンの部屋…という事もあって、和風で統一するようだ。
まぁ…それはいい…いいとして…
イワンとキースのそれぞれが持つ着物を見つめる。どちらも黒地に華の絵が描き込まれているのだが…違うところといえば…その華の色が紫か青か…という違いしかない。虎徹に言わせて見れば「同じものじゃね?」といったところ。少し視線を下ろせば二人の間には緑色の帯…さらに視線を移動させれば小さな紙切れにアミダクジ…その横に、しっかりと用意された褥の敷き布は紺色をしている。恐らくアミダクジは布の色を決めるのに平等化しようとした結果だろう…幾つか並べられた棒の下に二人の文字が並んでいて…紺色の字はキースのものだった。
そこでしばし考え込んだ末…置き去りの帯を取り上げるとイワンの持つ着物をその手から攫っていく。
「…あ…」
「え?」
「同系色のグラデーションでもいいんだが…ちょっと外れた色の方が目立つだろ?」
後ろを向きつつ着物に袖を通すと少ししょげた顔をするキースに気付いた。明るい青の花柄を選ばなかった理由を肩越しに流し目で説明してやると、納得の色を示す。その横では感激に輝くイワンの顔があって平等に扱う事に成功したようだ。
「…(独占欲がないかと思えばこんな細かいとこで発揮するんだな…)」
やれやれ…と溜息を吐き出して着物を手早く着付けていく…とはいえ…コスプレ用の着物だ。簡易的な造りで、紐とマジックテープで簡単に着替えられるように出来ている。巻くだけで済むものだが、余計な皺が寄らないようにだけ気を付けていると…
「………短ッ!!!」
やけに着物が軽いと思えば、裾が膝よりも上にあった。何せ、腰に巻いていたバスタオルを少しだけずらしたのだが…ソレよりも更に短い位置に裾がある。膝上20cmは軽いだろう…これでは校則違反だ…とどうでもいいことが頭に過ぎった。
「いい!とてもいい!そして素晴らしいよ!ワイルド君!」
「素敵です!タイガーさん!」
「……褒められてる気がしないけどな…」
複雑な気分に陥りながらも振り返ると同じようにきらきらとした瞳で見上げる2人の貌…あいにくとストリップ趣味はないのだが…巻いたままのバスタオルを下から引き抜く。
ぱさり…と音を立てて落ちるタオル…けれど2組の視線はくしゃくしゃになったタオルから徐々に上り始め、太股の辺りから動かなくなった。
「すごいな…」
「…え?」
ぽつりと声を零したのはキースだった。手をそっと伸ばして帯のすぐ下から剥き出しの太股へかけて…その形を確かめる様に撫で下ろしていく。そして着物の裾に辿り着くとその境目を撫で始めた。
「…とてもエロティックに見える…」
「…そう…か?」
「見えそうで見ないから…ですよ」
興奮した様子のキースに応えるイワンもまた…その瞳に獣の色を滲ませている…
「んぁ…っ!」
内腿の間を撫でる指先に思わず声を漏らしてしまい、慌てて口に手を当てるも後の祭り…じっと見上げてくる2対の瞳とバッチリ視線が絡まって…余計に恥ずかしくなってしまい顔がかぁっと熱くなった。
「すぐに上がってきますから!」
「すぐ行く!そしてすぐに戻ってくる!!」
「…お…おぅ…」
勢いよく立ちあがった2人は大慌てで浴室へと駆けていってしまった。残された虎徹はというと指が這わされた内腿を自分で擦りながらシーツの上へと寝転がった。
着物の丈が短い分、自然と内股になってしまう虎徹は一人、シーツの上でごろごろしている。二人がシャワーを浴びて出てくる短い時間ではあるが…クールダウンにはちょうどいい。…ちょうどいい…はずなのだが…いかんせん足元がスカスカして心もとない。どうせ脱ぐから…とアンダーを履いてこなかったから余計に落ち着かなかった。
「…だいたいこれ…短すぎ…」
そう言って…ちょい…と摘んだのは着物の裾…普通に立ってる時は腿の3分の1は覆っていたのに、座るとソレよりも更に短くなってしまう。ある意味素っ裸でいるより恥ずかしい。苦笑いを浮かべて仰向けになると無駄な事…と思いながらも裾を引っ張って少しでも長く…と思ったが…そうすると襟元が肌蹴てどちらにしても恥ずかしい事になってしまった。よくよく考えれば…このコスチュームは女性用なのだから、丈が短くても当たり前なのだ。
「…う〜ん…」
どうにか少しでも落ち着く体勢を…と考えてごろり…ごろり…と寝返りを打っていたのだが…ふとある事に気付いた。
「………コレ…バックからだと丸見えじゃね?」
うつ伏せになって腰だけ上げてみると案の定…下半身が何も纏っていないような感覚に陥った。
「…(こんなおじさんの破廉恥姿とかってどうよ?)」
げんなりしながらも裾をひっぱり、少しでもマシに…と悪あがきをしていると襖が開いた。
「あ。」
「あ…!?」
「あッ…?!」
ちょうど開いた襖に向けて腰を上げた四つん這い状態…そんな虎徹にイワンとキースはお揃いのジャージを着て、揃って頬を染め上げた。
「なっ…なんて格好してるんですか…っ…」
「…卑猥すぎるよ…ワイルド君っ…」
「あ…わ、わりぃっ…」
釣られて虎徹も顔を赤くしてしまい妙な沈黙が訪れる。慌ててシーツの上に座り尚して、なお短い裾を押さえ付けた。
気まずい空気が流れる中…あまりにも続く沈黙に虎徹が音を上げた。ちらり…と視線をイワンとキースに向けて上げると、その肩がぴくりと跳ねる。すると青と紫の瞳が互いに見つめ合い…襖を閉じると虎徹に近づいてきた。
「うんと…優しくする…」
「とても…気持ち良くしてみせますから…」
「!」
耳元で優しく囁かれて三人仲良く並んで座ると、いよいよ虎徹は落ち着かなくなってしまう。何をどうされるのかまったく分からない分、言いようのない不安と期待が綯い交ぜになりおかしくなりそうだった。
「…虎徹君…」
「…虎徹殿…」
「っ…」
2人が名前を呼ぶのはいつも情事に没頭している時…開始の合図ともいえるその声に虎徹は抵抗することなく大人しく押し倒された。
左右両方から愛らしいリップ音が聞こえてくる。米神や頬、耳、首筋…とあちらこちらに柔らかい唇が押し当てられた。
「…な?…俺はどうしたらいい?」
「…何も…」
「え?」
「何もしなくて大丈夫だよ?」
くすぐったさに身を竦めて寝ころぶだけの居た堪れなさにポツリと囁くも何もしないでいい…と言われて戸惑ってしまった。思わず瞬いているとイワンの顔が覆い被さってくる。
「…虎徹殿…」
「…んっ…」
虎徹の唇をイワンが奪う間、キースは繋ぎ合わせた右手に唇を寄せる。指を絡め合わせて持ち上げた腕は着物の裾で隠れていたのに角度を変えるだけであっさりとすべてを曝け出した。血管の浮き出る手首に舌を這わせ、筋が描く陰影に歯を立てる。
ぴちゃり…と濡れた音を立てる唇の隙間からため息のような啼き声が聞こえてきた。舌を絡め合わせて軽く歯を立てるとぴくりと躯が跳ねる。ちらり…とイワンが瞳を上げると、腕に噛みつくキースが見えた。その視線に気づいたのだろう、彼もこちらを見下ろしている。
「…ぁ…ふっ…」
「交代かい?」
「はい。少し下を弄らせてもらおうかと…それで…」
「…あぁ、私はいつもね…こっちをこうして…」
イワンの言葉が意味ありげに止まると、キースが何かを察したようだ。にこりと微笑んで着物の上からでも分かるほどに尖った実へ指を這わせた。曖昧な感触に思わず躯が跳ねてしまう。
「っんぅ…」
「こちらには…これで嬲ってあげるんだよ?」
「…なるほど…」
『これ』と言ってキースが指さしたのは自分の舌。それを聞いて頷いたイワンはさっそくとばかりに襟元を乱しに掛かった。首筋から手を這わせて肩を撫で下ろしていく…すると前合わせがあっさりと大きく口を開く。2人の熱を移された肌はすでにしっとりと汗ばみ、間接灯の光を淡く反射していた。一度降りた手が再び這い上がり鎖骨を撫でると指先だけでするすると胸元を撫でまわし始める。その指先が胸で色づく果実に触れそうで触れない位置ばかりを通り過ぎて行った。
「…虎徹君…そちらばかり見てないで…私も見て?」
「…え…ぁ…」
期待する場所にいつまでも這わされない指先に知れて思わず俯きにばかりなっていた顎を掬い上げられると喉を反らして強引に振り向かされる。その先にいるキースの唇が己のそれに重なり、言葉を封じられた。
「…ん…っふ!?」
瞳を眇めて呼吸を絡め獲られていると、背筋をびりっと走り抜ける電流のような感覚に蕩けかけていた瞳が見開かれる。焦点の合わない位置にあるキースの貌が笑みを浮かべているようだ。咄嗟に逃げようとすれば顎を掴み上げられて押さえ込まれてしまう。
「んんんっ!!」
深く口を重ね合わせる2人を見上げながらイワンはぷくりと熟れる実をぬるりと舐め上げていた。すると反らされた喉が震えてくぐもった喘ぎが漏れる。転がすように嬲ると肌が小刻みに震え…腕が拒む様に肩を押してきた。その右手をキースが掴み取り、指を絡めて捕らえてしまうともう片方の手が解こうと宙を彷徨う。その左手をイワンが掴み取るとシーツの上へ押さえ付けた。
「んぅっ…っふ…っんく…!」
抵抗を封じられて再び繰り出される舌による愛撫に虎徹はされるがままになってしまった。胸元を這い回る舌は『いつも』と違い…どこか遠慮がちながら探るように這わされ…ぞわぞわと肌が敏感になっていく。時折、性感帯になった場所を触れて腰を跳ねあげるとソコばかり攻めてきた。
「…っは…ふ…」
「…舌が動いてないよ?」
自然と涙の滲みだしたぼやける視界の中で笑うキースの言葉に…2人が何をしようとしているのかが理解出来た。
互いにしかしていない事をしてほしいのだ。
だからいつも躯を舐め回すキースの代わりにイワンが舌を這わせ…いつも唇を重ねれば、舌を絡めてくるのにまったく動かないイワンのようにキースは今まったく動かしていない。
つまりはいつもとちぐはぐの状態に新鮮さを見出してしまう。
「…う…ん…」
言われた言葉に応えるべく喉を反らして唇を重ね合わせる。素直に開く唇の中へ舌を伸ばして、つるりとした歯列をなぞっていった。奥に留まったままの舌に擦りよると青い瞳が嬉しそうに細められる。そのまま瞳を閉じて口淫に没頭していった。
「んふ…ん…ぅ…」
…ぴちゃ…ぴちゃ…と鳴る水のような音に混じって鼻にかかる虎徹の声が漏れる。呑み込み切れなかった…キースの分と混ざり合った唾液が口の端からとろりと流れ落ちた。
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