「〜〜〜ッ!!!」
「だぁ!?」
あまりの歓喜に勢いよく引き寄せてしまった。咄嗟の事に体が反応しきれず虎徹の体が腕の中へと倒れこんできたのを難なく抱きとめ、勢いを殺さずに体勢を入れ替える。するとベッドの上に横たわった虎徹が目を丸くして見上げてきていた。そんな彼女の額に軽く口付けてイワンは柔らかく微笑みかける。
「!」
「優しく、しますから」
ぶっちゃけ、『初』なので上手く出来るかは分からないが、知識だけは腐るほど詰め込んである。それこそ、ノーマルなものからアブノーマルなものまで幅広く。ただ、使うようになるとは微塵も思っていなかったが……
「ん。よろしく」
ふにゃり、と微笑みを浮かべた虎徹が腕を伸ばして首に巻きつけてくる。引き寄せる動きに逆らわず近づくと可愛い音を立てて口付けられた。離れていく唇を追いかけて戯れる様に啄ばみ合う。
徐々に濡れた音を交えて舌も絡ませ始めた頃、虎徹の瞳がゆるりと潤んできた。その変化を見逃さずにベッドへと付いていた手をそろりと動かす。
「……ん……」
脇腹へと手を触れさせると首に巻きつけられたままの腕がぴくりと跳ねた。形を辿るように手を這わせて唇がギリギリ触れる位置で見つめていると目元に朱が散っていく様が分かる。その艶めかしい表情に見惚れ固唾を飲み込むと意を決して上り詰めて行った。
「……ふ、ぁ……」
ふにゅ、と弾力のある胸に辿り着いた途端、虎徹の唇から甘い吐息が零れ落ちた。僅かに寄せられる眉が悩ましげに見える。感触を確かめるように揉む度、細い体がぴくりと跳ねた。片手だけでは飽きたらず両手で押し上げると身を捩らせる。
「痛いですか?」
「……ん、ん……」
触れる媚肉の柔らかさに思わず夢中になってしまった。眉間に寄せられる皺が深くなった気がして囁いてみると首を横に振ってくれる。けれど何かに耐えているような雰囲気にそっと頬へ口づけてみると伏せられていた瞳がゆるりと上げられた。
「……なん、か」
「はい?」
「へんな……感じ」
「変?」
「ん。むずむずする」
へなりと眉が八の字を描き見上げてくる虎徹に、イワンはぱちくりと目を瞬かせた。
「むずむず、ですか?」
「ぅん……むず痒いような……ざわざわするような」
「……はぁ……」
虎徹自身もはっきりとは掴めていない感覚に戸惑っているらしい。困ったような顔になっている。相手の状態を確認しながら進めるのは基本の事ではあるのだが、そんな風に言われてイワンも困ってしまった。
迷いながらも手の中に収まらない胸をきゅっと掴み上げてみる。
「ぅんッ……」
途端にぴくっと跳ねる体を感じながら表情を伺っていれば、一瞬の強張りの後にふわりと解けていく表情に安堵する。怖がらせないようにと頬へ唇を寄せてそのまま耳や顎のライン、首へと這わせるとTシャツを握りしめていた指から力が抜けてずるずると滑り落ちて行った。
「(……気持ちいい……)」
両手全体で、唇で味わう虎徹の肌がしっとりとしてくる。じわりと滲むような温もりにもっと味わいたくて本能的に舌を伸ばした。肌理の細かな肌はひどく柔らかで、舌を滑らせれば大理石のように滑っていく。滑らかな肌を伝い、男には無い湾曲を辿り上がればぷくりと膨らむ赤い実に着いた。
慎重にそっと舌先を伸ばして突いてみると甘い声が小さく零れ落ちる。もっと聞きたくて舌全体で包むように舐め上げると頭がゆるゆると振られた。
「ん……ぁ……ぁ……」
甘い声に変化は見られない。ますます硬さを増す実を唇で啄ばんでみると躯が跳ねる。口の中へと含んで舌先で転がすとシーツを握り締めた指を咥え始めた。勝手に零れ出る嬌声に羞恥が募ってきたのだろう。
「ひゃうっ!」
硬くぷくりと膨れた実に歯を立ててみるとびくっと躯が跳ねた。痛かったか、と癒すように舐めればふるふると震え始める。おや?と内心首を傾げつつもう片方を指で摘みあげてみた。
「ふぁっ!」
すると甘ったるい嬌声が弾き出される。痛くはない事を確認すると、摘んだ方をくにくにと指先で揉み込んだ。
「ぁ……ぁ……っ」
見る内にも頬の赤みが増していく。その上、放り出されたままの両足がもじもじと擦りあわされていた。それを横目で確認しながら口に含んだままの実にたっぷりと舌を沿わせて嬲り始める。しゃぶりついた方の胸を支えていた手をそろりと撫で下ろしていくと、腰のくびれに到達し、少し位置を変えるとへそにたどり着いた。そのまま更に下りていくとなだらかな丘に到達する。
「あっ……」
指先が太ももの隙間をふにゃりと沈む瞬間、体がぴくんっと小さく跳ねる。ぱちりと開いた琥珀色の瞳が不安げに見下ろしてきた。
「………」
しばらく見つめ合った後、ふわりと微笑みかけると表情の強張りが僅かに解ける。もっとリラックスするように頬へ唇を寄せると擽ったそうに肩を竦めるので、背中へと腕を潜り込ませて抱き寄せるように密着すると腕が首へと回された。
「ぅあっ!!」
くちゅっと言う小さな音と供に指が温かな粘膜に包まれていく。ぬるりと滑る反面、異物を排除するかのようにぎゅうぎゅうと締め付けてきた。よほど異物感が酷いのだろう、首に回された腕が更に強く絡まり、肩を掴む指が爪を立ててくる。
ちりり、と痛む肩に眉を僅かに顰めた。
「……虎徹殿……」
「う……ぅ……」
ぎゅうっと瞳を閉じ、唇を噛み締めて必死に耐える虎徹の表情にイワンは眉尻を下げた。体中に余計な力が入っている分、余計に辛いだろうに。今の虎徹には気づく余裕すらない様に見える。
噛み締めている唇を舌先でくすぐるように舐めるとぴくり、と反応が返ってきた。背中に回していた手もするりと下ろして行き、しっとりと吸い付く桃尻を揉み込むと肉の狭間に指を差し込みぴたりと閉じてしまおうとする花弁をこじ開ける。
「っだ!?ちょっ……!!」
前と後ろから蜜口に指を這わされ逃がそうと身を捩るが、逃がさないとでもいうように開かれた唇を己のそれで塞ぐと舌を絡め合わせた。蜜口の淵を揉みほぐすように撫で回す指に腰がもどかしそうに揺れている。意識を口の中へと向けるべく震える舌を撫で甘噛みをしては吸い上げた。すると徐々に硬直していた表情が溶けてくる。
「っふ……ぅん……」
口の端から飲み込みきれなかった二人の唾液と共に甘い吐息がこぼれ落ちていく。鼻にかかる声に花弁を撫でていた指にとろりとした蜜が流れてくると、指を喰いしめていた蜜壁がゆるりと胎動し始めた。肩に食い込んだ爪から力が抜け、やわやわと蠢く蜜壁がまるで指を更に奥へと招くように動くと、小さく抜き挿ししても虎徹の顔が痛みに歪むことはなくなった。
ゆっくりと指を根元まで差し込むと、びくびくっと跳ねて唇が解かれる。
「っ……あ……!」
細い顎が仰け反ってまるで押し出されたかのような嬌声が上がった。今度は奥まで埋め込んだ指をゆっくりと引きずり出してみる。するとふるふるっと首を打ち振るいながら身を竦ませた。その表情には苦痛の色も苦悶の色も伺えず、困惑と悦楽に酔う妖艶な色が濃く浮き出している。
「んっ……んんっ」
その様をじっくりと堪能するように短調な指使いを繰り返していると、腕ごと挟み込んでいた太ももが緩み小さく震えながらシーツを蹴るように投げ出された。全く力の入っていない右足を抱え込むと両足の間に体をすべり込ませる。
「……っひぁ……!」
一瞬浮かんだ不安気な表情は指を折り曲げることですぐにかき消されてしまった。きゅうっと絡みつく蜜壁を押し開くように、指を蠢かせば指先が押し広げただけ戦慄く唇から甘い声がこぼれ落ちる。じわりとにじみ出てくる蜜が指の間を滴り落ち、淫猥な音が奏で始められた。
与えられる快感が強すぎるのか、伸ばされていた膝が立てられイワンの躯を挟み込んでかたかたと震えている。宥めるように腿を撫でればぴくんっと小さく跳ねて嬌声を小さく詰まらせていた。
「……虎徹殿……」
頬に唇を寄せてそっと囁けば涙で揺らめく瞳が見上げてくる。
「大丈夫ですか?」
「……なん、か……」
あまり辛いようなら少し休むのも手だな、と囁きかけると震える唇が必死に言葉を紡ごうとする。消え去りそうに小さな声は甘く掠れた音を奏でられ、イワンの耳にするりと流れ込んできた。
「い、ぱい……たまってきて……かんじ、すぎて……こわぃ……」
躯の違いのせいだろうか?感じ方の違う躯に酷く狼狽した表情の虎徹が呂律の怪しい言葉で伝えてくる内容にイワンはひとまず安心した。行為自体に恐怖を感じていないことと、嫌悪感が引き出されていない事にほっとしたのだ。
「どうしますか?」
「……え?」
「今ならまだ……止められます」
半分嘘で半分本当。今すぐに指に甘く喰いつく蜜壷に己の一部を突き立てて啼き狂う程に攻め立てたい、と叫ぶ雄の本能が牙を剥き出している。けれどこの柔らかな躯を強く抱きしめその手で抜いてもらうのでも十分満足出来る自信もあるのだ。
だから最終決断を大切な存在に委ねる。ほんの一時であっても独占させてもらえた感謝の意を込めて。
「……イワン……」
「はい」
ふわふわとした声音がそっと呼びかけてくる。それへ怯えさせないようにと優しく返事を返すと、眉がへなりと更に垂れてしまった。
「……こわい、んだ……」
震える睫毛がゆるりと下りていき瞳が伏せられた。精一杯の笑みを浮かべて押さえ込んだ躯を開放しようと手をそろりと引いていく。抜け出ていく指に擦られる内壁がひくひくと蠢き本能に甘く誘いをかけてきた。けれど振り切ろうと指を抜き取ることだけに集中していると震える指先が手の甲を撫で重ねられる。
「?……虎徹殿?」
それ以上出て行かないように両手で押さえ込まれて困惑してしまう。すると伏せていた瞳が目じりに朱を色濃く浮かび上がらせながら開いた。ゆらりと揺らめく琥珀色の瞳がじっと見上げてくる。
「……でも……ほしぃ……」
「……え?」
「もっと……ほし、ぃ…」
とてつもなく恥ずかしいのだろう、瞳に留まる涙が今にも溢れそうなほどに潤んできている。そんな壮絶な色香を見せ付けられてイワンは固唾を飲み込んだ。黙り込んでしまったイワンに虎徹の方が根を上げてしまったらしく、見つめてきていた瞳がそっと逸らされた。その視線を取り戻すように目尻へと唇を寄せるとぴくりと跳ねる。
「いい、ですか?」
直接的な言葉に表すのははばかられ、そっと囁くように尋ねると僅かに遅れて頬がかぁと朱を深くした。どうやらちゃんと伝わったようだ。
「……ゆっくり……」
「はい」
押さえ込んできた手が離れ、さらに自ら足を開いて見せた。そんな大胆な態度をとってみせるくせに、顔は恥ずかしさのあまりにそらされたままだ。
『なんだこの可愛い生き物は。』などと少々暴走気味になる思考をなんとか押さえ込み、指を抜ききる。ぴくりと跳ねる膝をそろりと撫でて開かれた足の間へと躯を滑り込ませた。
「……ぁ……」
大きく育った己の欲望を押し当てると、ひくりと震える花弁から蜜があふれ出し楔の先端を濡らしていく。小さく啼いた虎徹の表情を見上げるとどこか不安そうな色を見せるので口付けを送った。柔らかく唇を食み、シーツを握り締めていた指から力が抜けた瞬間を狙い澄ませて腰を押し進める。
「っ……んん!」
重ね合わせた唇からくぐもった声が零れ落ちる。焦点が合わないほど間近にある瞳は固く閉ざされてはいるが、頬を染める朱は色褪せていなかった。熱い内壁は時折引き攣るように締め上げてはまだ奥へと進むようにうねっては柔らかく包み込む。ぞくぞくと震える背筋に歓喜が満ちてきた。
とん、と桃尻に密着すると唇を解き詰めていた呼気を吐きだす。唇を通り過ぎる吐息が火傷しそうなほどに熱い。あまりの心地よさに霞みそうな視界に虎徹を映し出せば切なげに眉を寄せ、荒く呼吸を繰り返しているようだ。脇腹が暖かいな、と気づけば抱え上げていた足がぎゅっと押し付けられ、小さく震えている。痛みに耐えているのかと撫でてみると内壁が締め上げてきた。
「あっ……!」
「っ!」
途端に溢れる嬌声と共に背が逸らされ赤く色づく実が大きく弧を描く様を見上げる。身悶えるように反らされた背中が降りてくると数拍置いて緩んだ内壁がゆるゆると絡みついてきた。あまりの心地よさに熱く呼気を吐き出すと、押し付けられた足がもじもじと擦りつけられる。
「大丈夫、ですか?」
「ん……へぃき……」
そっと尋ねてみると涙の滲む瞳で微笑み返してくれる。どんどんと感じ入る躯に心がついて行っていないのだろう。それでも心配かけまいと微笑んでくれる虎徹にイワンはくちづけを送り、己の中に渦巻く欲望に応えてゆっくりと腰を動かした。
「っんぁ……!」
途端に反らされる顔をじっと伺っていると、ふるりと震えながら唇が開かれた。
「……ぃ……わ……」
濡れた琥珀色の瞳が己を捉えて名前を呼ぶ。その瞬間にぞくぞくと駆け巡る快感に余韻に酔い痴れながらぎゅっと閉じた瞳を開く。
「・・・・・・」
そこに広がる見慣れた天井に瞬きを緩やかに繰り返し、はっと目を見開いた。そのまま硬直すること数秒。ようやく頭の中の整理が付いて上体を起こすと、ずぅん、と沈む気分とともに両手で頭を抱えた。
「…………デスヨネー……」
腕の中に閉じ込めていたはずの虎徹も、手のひらに感じていた肌の柔らかさも温かさも何一つとして残っていない。あるのはすぐ傍に放り出された生写真の束だけ。
その束の一番上には……
腕で押し寄せた胸の谷間にチョコバナナを挟んで上目使いになっている虎徹の写真。
昂ぶりに昂ったところへこの一枚。衝撃は巨大レーザー砲レベル。すでに豆腐並の防御力しか残っていないイワンでは受け止める事は当然不可能で、その結果気絶してしまったのだ。
そして妄想と願望と本能の望むままに夢を見てしまい、今に至る。
「なんて写真を撮らせてるんですか、タイガーさん……」
虎徹としては仕事の一環としてやったことなので本人には罪はない。のだが、他に八つ当たりするところがないのでこうして愚痴るしかない。
夢の余韻が残る躯の芯は未だに熱を持ったままで、ゆっくり呼吸を繰り返し少しでも落ち着かせようとする。顔を両手で覆い隠していたのだが、指をそろりと開いて写真を盗み見た。
「…………〜〜〜」
見れば見るほどにぶり返してくる熱を治めるべく元凶とも呼べる写真をそっとひっくり返す。すると、下にまだもう一枚写真が残っていることに気づいた。
「……あれ?」
その写真には文字が書かれているらしく、他のものと違って虎徹一人ではないようだ。距離を開いて追いやった写真をそろりと引き寄せる。
「(
(゚Д゚;)
Σ(゚Д゚;)
Σ(゚Д゚||;)!!!
)」
写真をじっくりと見た瞬間、イワンは声にならない衝撃とともに綺麗な三段落ちで墜落してしまった。
そこに写っているのはソファで眠っている虎徹に口付けるイワンの姿。さらに書き込まれた文字は、流れる美しい筆記体で…………
『Sleeping Beauty』
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