「失礼します」
「なっ!?」

 ろくに動けないながらも瞳をちらりと動かすと眉間にくっきり皺を刻んだバーナビーが立っていた。動揺したらしい男の手に力が入り、皮膚を刺す爪の痛みに顔を歪める。するとフラッシュが焚かれたのだろうか…激しい光が一瞬閃いてすぐに消えた。

「これ…奥様がご覧になったらどうするでしょうね?」
「なっ…にを…ッ!」

 ポラロイドカメラを使ったようだ…手に持った機械から吐き出される紙をひらひらと揺らして滲み出る絵を見下しながら呟いた。見えるように差し出すと、一瞬にして青褪めた男が手を伸ばし掴みかかりにいく。難無く突進を軽くかわすと男は無様に床へ転がっていった。
 あ〜ぁ…と顔面から倒れ込んだ男を見ていると、目の前の肩からゆらりと揺れる炎の如く…青いオーラがじわりと湧きあがる。

「取引しましょうか?」
「くっ…」

 一般人相手に能力使ってどうする気だっ…と叫びかけたが、バーナビーが言葉を発する方が早かった。ひらひらと揺れる写真に男の顔が悔しそうに歪んでいく。

「…なにが…目的だ?」
「そうですね。これを送りつけられたくなければ今後一切私達に関わらないで下さい」
「それ…だけか…?」
「もう一つ。コレは私のものなので手を出さないでください」

 その言葉にきょとんとしたのは男だけではない。びしりと指差された虎徹もだ。けれど何か口を挟める余裕もなく、唖然と見上げるしかなかった。

「もしこれらに違反するようでしたらこちらを奥様にプレゼントさせて頂きますので」
「っ…わかった…」
「では。どうぞお帰りください」

 にこやかな笑みに怒りが余計込み上げたのだろう、苛立たしげに服装を正すと荷物を抱きかかえて部屋を横切って行った。

「はっ…せいぜいその男のイチモツを咥えて啼けばいい!」
「咥える?まさか…僕は猫ではなく兎ですよ?」

 嘲笑した響きを持つ声に男が訝しげな表情になった。けれどそれはすぐに向けられた『笑み』によって青褪め、恐怖に引き攣る表情へと変貌してしまう。

「年中発情しているんですからぶち込む方に決まってるじゃないですか」
「なっ…!?」
「…へ…?」
「良ければ尻を差し出してみますか?出るものも出なくなるまで犯してさしあげますよ?」
「ッ…し、し、しつ、れいするっ!」

 かちゃり…とベルトを外す音に青い顔は更に血の気を失いがたがたと震え出す。腰を抜かしたのか、這いずり逃げるように出て行ってしまった。
 勢い良く閉じられた扉を確認しに行ったバーナビーが部屋へと戻ってくる。

「…冗談きっついぜ、バニーちゃん…」
「おじさんこそ…そのナリで枕営業とか何の冗談ですか…気持ち悪いことしないで下さい」

 ぐったりとソファに沈み込み先ほど放たれた言葉の衝撃から立ち直ろうと頭を抱え込んだ。けれどバーナビーにも言い分はあるらしくて深いため息を落とすだけに終わってしまう。

「へーへー…気持ち悪くてすいませんねぇ?」
「…どこ行くんですか?」
「口濯ぎに。まだ残っててまっじぃの。」

 手を縛られたまま、器用に立ち上がった虎徹はユニットバスへと足を向ける。少々不便ながらも蛇口を捻ると流れ出してきた水を口に含んでうがいを始めた。喉のおくに張り付くような不快な味が徐々に薄れていく。何度か繰り返した後、ふっとため息を吐き出すと部屋に足を向けつつきっちり縛られたネクタイに噛み付いた。

「…あれ?まだいたの?」
「…いては悪いですか?」
「や、悪いってこたないけど…」

 部屋に戻るとベッドの端に腰掛けるバーナビーがいた。てっきり用は済んだとばかりに帰ったものかと思っていたら違ったらしい。しかも先程よりも険しい表情からもしかしたら説教する為に残っているのでは、と思いついてしまった。
 ベッドの前を避けるようにして床に脱ぎ散らかした服の辺りに足を向ける。縛り上げられた手を開放するべく口でネクタイに噛み付いているのだが、余程固く絞められたのか…なかなか外れてくれない。

「ッ!?」

 突然視界に入ってきた手に驚いて勢い良く振り返る。するとすぐ目の前にバーナビーが立っていた。いつの間に…と思うとともにじりっと後ずさる。

「な…なに?」
「…手…」
「へ?」
「解くのでしょう?」
「ん?あぁ、うん。自分で出来るからいいよ」
「…僕が解きますよ。じっとしてください」
「いや、もう解けるって…」
「そう言ってさっきから時間だけが経ってます」

 大丈夫だと言い張る虎徹にバーナビーもまったく折れず、じりじりと下がるのに合わせてずんずんと近づいてきた。しかしその攻防もいつまでも続かずに、壁へと追い詰められて終末を迎える。逃げ道を失った途端、伸びてきた白い手に虎徹はぞっとした。

「ッ触るな!」
「!?」

 指先が触れる寸前に叫び声が吐き出されたる。気迫さえ感じられる声音にバーナビーの肩がびくりと跳ね上がったのに気付く。

「…あ…」
「……」
「わり…」

 ばちりと合った視線を反らすと、気まずい雰囲気は更に重苦しい空間へと変化を遂げる。顔を反らした虎徹に対してバーナビーは固まったままだ。宙に浮いた手もそのままにまるで石になったかのように動かない。きゅっと唇を噛み締めて虎徹は再びネクタイを外しに掛かる。焦っているからか結び目は一向に弛まなかった。

「……う…して…?」
「へ?」
「…どうして?」
「………」

 宙に浮いたままだった手が固く握り締められ…とん…と壁を打つ。顔のすぐ横に押し付けられた拳は僅かに震えているようだった。咄嗟に出てしまった拒絶の言葉が痛かったに違いない…
 心ならずとも傷つけてしまったことに虎徹は小さく息を吐き出した。

「…お前に触られたくねぇんだよ」
「…さっきの男ならいいんですか?」
「そういう意味じゃない…」
「だったら何…?」
「…だから…」

 ぽつっと溢した言葉は更なる疑問を呼び寄せたようだ。納得のいく説明を…と釣りあがった瞳で問い詰められて、また一つため息を溢した。

「こんな汚ねぇおじさんに触っちゃダメだろ?」

 …綺麗なのに汚れてしまう…声には出さない言葉にバーナビーは気付くだろうか?
 優秀かつ期待のルーキーなのだ…それを自分のように汚れた人間が穢すわけにはいかない。
 同じスポンサーでも…社内の重役の中には稀にこういった趣味嗜好の人間が少なからず存在する。強いものを従える事が出来る雄の優越…その欲を満たす為に足を開けと要求してくる。さすがに何も知らないバーナビーにそんな事させるわけにはいかないし…こういった汚れ役は自分の仕事だ…だから今回も欲を満たしてやれば気が済むだろう…と引き受けたのだ。
 それなのに…せっかく綺麗なままでいるようにと仕向けたのに…自分から触ってしまっては元も子もない。

「…汚い…?」
「そ。男相手にナニ咥えて平気で足開くような汚ねぇおっさん…な?」

 僅かに俯いた顔は表情が読めない。いつもの茶化したような声で応えてみるも、動きはない。どうしたものか…と半ば途方に暮れているとふっと顔が上げられる。ようやく動いてくれるか…と思ったのも束の間…突然足を掬い上げられて担がれてしまった。

「ッ!?おっ、おい!バニー!!」
「バニーじゃありません」
「分かってるっつーに!ってそうじゃなくて触るなって!」
「聞きません。それより暴れないで下さい。落ちますよ?」
「寧ろ落ちた方がいいってか下ろせっての!」
「下ろしません」
「バニーッ!」

 じたばたと暴れてみるも一向に腕の力は弛まず、それどころか強まるばかりだ。あの体のどこにこんな力があるのか…アントニオでもあるまいし…と思わずぞっとしてしまう。つまりはそれほど真剣なのだ。諌めるように名前を叫ぶも一向に聞き入れてはくれない。
 かと思えば突然落とされてしまった。

「ッ!?」
「…バーナビーです。」

 閉じた瞳をそろりと上げると圧し掛かってくるバーナビーが見えた。青く揺らめくオーラに顔から血の気が引いていく。

「まっ…マジで怒るぞ!」
「どうぞ?ご自由に」
「なっ…うっ!?」

 乱暴にジャケットを脱ぎ捨てたと同時に顎を掴み上げられる。自然と開いた口に己のソレを押し付けられた。
 あまりの展開に頭の中が真っ白になった。
 まさか…と言う思いと裏腹に体は全くいう事を聞いてくれない。振り払わなくては…と思うも、不自由な手と、圧し掛かられた体に動くことすらままならない。その上ぬるりと侵入してきた舌に驚愕し、硬直してしまう。

「んっ…ぅ…んーッ!」

 我が物顔に動き回る舌に息苦しさと動揺で意識が霞んできた。押しのけようと突っ張る腕からも力が抜け落ち、黒いインナーを握り締めるので精一杯だ。

「ふっ…はッ…!」

 ふるふると震える体に意識が飛びかけた頃、ようやく開放された。枕営業を散々してきたとはいえ、その相手と唇を重ねる事など皆無だ。イチモツを咥えさせられて終わるような関係ばかりだった故に口付けは主導権が握れない。

「…っは…っは…」

 短く呼吸を繰り返し脳に酸素を流し込む。ぼやけた視界の中に動く淡い金髪が見えるがまともに働かない頭で何か言葉を掛けるのは難題だった。するりと外されるネクタイに手首が自由になったのだと理解すると、うつ伏せに転がらされた。

「ッ?!」
「おじさんが汚れているなら…」
「な、にっ!?」
「僕で塗りつぶしてやりますよ」
「ッく、ぅ!!」

 背中に交差させられた手がぎりっと音を立てて縛り上げられる。肌を擦れる痛みからしてどうやらベルトが使われたらしい。捩るたびに…ぎちり…ぎちり…と嫌な音を奏でている。
 厳重に縛り上げられて手が離れていくと再び転がされて、仰向けにされた。体の下敷きになった腕が痛みを訴える。

「…う、そ…だろ…?」

 見上げた先にある無表情に近い貌が恐怖心を煽る。何を考えているのか全く分からないその貌はまるで自分の予想を肯定しているようだ。引き攣った笑みに震える心を隠してじっと見上げる。すると見せ付けるようにゆっくりと手が下りてきた。

「………!」

 ひたり…と押し当てられたのは首元…そこからするりと指先で撫でるように胸へと下りていく。ぞわぞわと粟立つ肌にきゅっと唇を噛むと、胸で色付く実を指が掠めていった。

「ぁッ…!」

 思わず漏れ出た声に慌てて顔を反らす。無駄な抵抗だとは分かっていても瞳を固く閉じて奥歯を噛み締めた。

「っ…っく…ぅっ…!」

 まるでもっと聞かせろと言ってきているのか、尚も手は同じところばかりを撫で回してくる。その度に固く熟した実を指で掠められて腰の奥がぞくぞくとした熱が燻ってきた。

「素直に啼いたらどうです?」
「…っじょ…だんッ…!」
「そうですか…じゃあ徹底的にいきましょうか」
「っな…あ!?」

 左ばかり撫でまわされ放置されていた右にぬるりと熱く湿ったものが這わされた。信じられない思いのままにそろりと視線を下ろせば、自分の胸にバーナビーが顔を伏せている。途端にかっと熱くなる頭にねっとりと舐め上げられてぶるりと躯が震えた。

「んっ…く…ふぁ!」
「…出るじゃないですか…可愛い声」
「っる、さいっ…!」

 ぬるり…ぬるり…と嬲る舌に気を取られていると、左の実を抓られる。途端に跳ねる背に唇から押し出される声を抑えられなかった。かぁ〜…っと赤くなる頬に揶揄する言葉が更に羞恥を煽る。離された右側が塗り篭められた唾液と外気でひやりとしていた。抓られた左も離されたが、固さを確かめるように指先がくるくると弄り回したままだ。

「…っひ…」

 顔が近づけられた途端、べろり、と頬を舐められる。思わず小さく悲鳴を上げるとくすくすと笑う声が聞こえてきた。

「ぁ…う…」

 首筋を噛まれ、喉を舐め上げられると仰け反り開いてしまう唇から耳を塞ぎたくなるほどの甘い声が漏れてくる。耳を塞ぎたいのに叶わない。身を捩り逃げようとすれば胸元で這い回る手がない乳房を押し上げるように揉み込んでくる。

「っんな…とこ…もんで、も…っ」
「気持ちよくないですか?こんなに固くしてるのに…」
「んっ…んんっ…!」

 手の平で実を押しつぶすようにされて喉が仰け反ってしまう。荒く乱れる呼吸を整える事も出来ずにされるがまま弄ばれた。

「…そんなにいいんですか?」
「…な…に…?」

 実を嬲る手の動きが急に止められた。何があったか、とうっすら瞳を開くと裏腿を撫で上げられる。

「!?」
「さっきから僕の腰に擦り寄ってきてますよ、足。」
「ちっちが!」
「嘘つきですね。ほら…」

 これ見よがしに視線を動かすから釣られて視線を追いかける。視線の先でするすると落ちていく手を追いかけるとソコはふるりと立ち上がった己の雄があった。驚きに目を瞠るときゅっと掴み上げられる。

「ぅあぁ!!!」

 びりっと走る刺激に背が仰け反った。ひくり…と震える喉を戻す間もなく、ぬるぬると擦り上げられる。

「こんなに濡らして…」
「やめっ!さ、触るな!」
「触って…でしょう?」
「ぅあッ!!」

 とろとろと蜜を溢れさせている先端を指先で押しつぶされる。耐えようのない刺激に腰を捩るも、足を割り開いた隙間に体を滑り込ませたバーナビーの手によって容易く押さえ込まれてしまう。にちゃにちゃという粘着質な音を奏でられ、羞恥の余り目尻に涙が滲み出てきた。

「あっ…ぁっ…うぅっ…」
「さっきまでは普通でしたよね?もしかして…僕の手が気持ちよかったのですか?」
「ちっ、が、ぁあ!」
「ほら…どんどん溢れてくる…
」 「だまっれぇッ!」

 敏感な先端をぐりぐりと弄られ、射精を促すように指で作った輪が擦り上げてくる。逃げたいのに力の入らない腰はせめてもの抗いによってゆらゆらと揺れているだけだった。ぞくっ…ぞくっ…と駆け上がる快感に噛み締めた歯がかちかちと震えて音を鳴らす。ちかちかと明滅を繰り返す視界に限界がすぐソコまで来ていた。

「ッうあぁ!!?」

 イく…と思った瞬間、根元をぎりっと音がしそうなほど強く握り締められた。今まさに達しそうだったのに、出す事が叶わずイき損ねた躯がぶるりと震える。

「っん…くぅっ…うっ…!」

 がくがくと震える躯は言う事を聞かずに浮いた背と腰が揺らめく。僅かに治まった衝動のままに躯をシーツへと落とすと布擦れの音を聞いた。

「ッな!?何ッやって!!!」

 ぼやりとぼやける視界で見下ろせば反り返った根元に黒い布が巻かれている。白い水玉柄からソレは自分のネクタイだと気付いたが、それよりもぎゅっと締め上げられる衝撃に喉がヒュッと音を立てた。

「おじさんだけ気持ちいい思いしようったってそうは行きませんよ?」
「っ…っ…なっ…」
「僕も気持ちよくさせてください」
「ひゃぅ!?」

 途端にひやりとした感触が後ろから襲ってくる。位置としては菊華だと容易く判断出来たが、その感触が尚も触れてきているのが不快でたまらない。無駄だと分かっていながらも腰を捩って抗うが、一向に離れなかった。

「っは…ぁ…?」

 気持ち悪さにぐるぐるとしていたが、じわりと滲み出るような疼きに肩がぴくりと跳ねる。

「効いてきましたか?」
「なっ…な、にッ…?」
「媚薬成分入りですって。下衆ながらも気を遣ったようですね」
「なっ?…あっ!」
「ほら、ひくひくしてますよ?物足りなくなってきたのでしょう?」
「あっ…あっ…ぁあっ…!」

 すりすりと撫でられる感覚に頭の中が噴火しそうだった。むず痒いような…熱く燻るような…耐え難い感覚…唇から漏れる甘い声も気にする余裕がない。耐え難い疼きが下半身をぐずぐずに溶かすように力が入らなかった。


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