太ももをぴったりと閉じている為に布越しで可愛がっていた場所は見えないが、アルファである自身のみが可愛がることの出来る場所が無防備に晒されているのだ。押し当てただけの指にひくひくと震える太ももの筋肉と連動して蠢く菊華からとろとろと温かい蜜が溢れて濡らしている。ほんの少し動かすだけでぬるりと滑り、うっかり突き刺してしまいそうだ。あふれ出ている蜜の分だけ濃厚な甘い匂いが鼻を刺激する。こうしているだけでも酔ってしまいそうなほどだ。

「うぉわっ!?おい!鹿島ッ何して!?」
「ん〜?何って、零れ落ちちゃって勿体無いから舐めてるんですよ」
「バっ、バカか!すぐにやめろ!」
「はぁ〜い」

 指を伝って流れ出る蜜を後腔から丁寧に舐め取っていたら堀が暴れだした。掴み上げたままの足が筋を痛めてしまいそうな勢いにしぶしぶ従うことにする。両足を下ろしてしまうとあからさまにほっと躯の力を抜いた瞬間を見極めて両膝を押し開いた。

「代わりにこっちを頂きま〜す」
「なッ!?」

 伏せて隠すことが出来ないように大きく足を開かせて晒させた股上に躊躇なく顔を伏せる。布越しに可愛がっていた高ぶりは予想通り硬く起ち上がり、先端からとろりと蜜を溢れさせていた。膝を立てて再び隠そうとするのを阻止するためにふぅっと息を吹きかける。するとぴくっと躯を強張らせて足を止めてしまった。よしよし、と足を拘束するように太ももの上に乗って目の前の肉棒をぱくりとくわえ込んだ。

「ッくぅ、んんッ!!」

 ぎしっと布の擦れる音が聞こえてくる。おそらく堀が抵抗して身を捩っているのだろう。だが口の中に急所を含んだ状態なのだ。このまま攻め立てて大人しくさせてしまおう、とすすり上げると目の前の腹筋がびくびくっと痙攣を起こす。
 根元に指を絡めて先端からにじみ出る蜜を丁寧に舐めとっていると蜜の量が増えてきた。更に抑え込んだ躯が抵抗を弱めていく。好都合な状態になっていく堀に笑みを滲ませて口の中で震える肉棒を嬲り始めた。
 顔を前後に動かしてじゅぷじゅぷとはしたない音をわざと立たせる。ぎゅっと目を閉じて耐えようとする堀を耳から犯すためだ。口での奉仕だけでは足りないかな、と支えていない方の手でシーツと堀の躯の間を縫い、臀部を揉みしだく。嫌がるように身悶える様に気を良くしてさらに手を伸ばすとさきほどまで撫で回していた菊華に到達した。

「ぅあっ!」

 途端びくっと大きく跳ねた腰に咥えた肉棒が喉の奥を突き上げてえづきそうになる。目じりに涙を溜めつつどうにかやり過ごすと堀がぐったりとしてきた。前後から与えられる悦楽に抗う力が削がれてきたのだろう。
 ちゅぽっと肉棒から口を離して見上げれば陶酔したような表情の堀がくたりと横たわっている。そろそろ頃合かな、と一旦体を離すとスカートを脱ぎ始めた。

「っ!?そ、れ……」
「ふふふ、堀先輩とお揃いですよ」

 布擦れの音をぼんやりと聞きながら見上げていると、今までの常識ではありえない光景に靄がかかっていた意識がハッと覚醒した。スカートの下から現れたのは女子に似つかわしくない、それこそ『凶器』と呼べるイチモツだった。驚いている内に再び乗りあがってきた鹿島が見せ付けるように自ら扱いて見せた。

「アルファの女の子にはみんなあるんです」
「はぁ!?だが普段はっ」
「普段はベータやオメガの女の子と変わりないです。オメガの発情に当てられるとこうして膨れ上がるんですよね」
「な、な……」
「この下にちゃんと女の子の性器もあるんですよ。見ます?」
「いい!見せなくていい!」

 股上の奥へと手を差し入れた鹿島に本気で見せるつもりだと察して思い切り首を横に振る。こっちとしてはいけないものを見せられるようで必死だというのに、なぜそうも羞恥心もなく晒そうとするんだ、と思わずげんなりしてしまった。
 「そうですかぁ?」などとやけに残念そうな雰囲気の鹿島に説教の一つでもするべきか、と思ったが、頭の横に手を付き近づいた顔と再び高ぶりに触れられた感覚に息をつめた。今度は何をするつもりだ、と睨み上げるとにっこりとした綺麗な笑みが返される。

「先輩の童貞、頂いちゃいますね」
「やめっ、やめろっ鹿島ッ!」

 先端に押し当てられる温かくぬちぬちとぬめった肉の感触にぞっとする。必死に叫び止めようとしても鹿島の動きは止まらなかった。うっとりとした笑みを浮かべて腰を下ろしてくる。身を捩ろうとしてももう遅かった。

「ッ〜〜〜!!!」

 びくんっと背中が大きく仰け反る。ぬぶ、と先端が熱い媚肉に包まれていく感覚に背筋へぞくぞくと駆け上がる快感が射精を促してきた。更に声を上げそうになるのを必死に抑え込み、耐える為にも両手をキツク握り締める。
 足の付け根にふにゃりと柔肉が押し付けられた。感覚を鋭敏に拾い上げる性器をすっぽりと胎内に納めた鹿島が頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。

「あ……すごい……先輩のが中でびくびくしてる」
「ッは!ッう、ぐ、ぅう!」
「あれ?イかなかったんですか?先輩」

 全身を強張らせて唇をかみ締める堀の頬をそっと撫でるとまだびくりと躯が跳ねる。けれど中を濡らされる感覚はなく、包み込んだ粘膜の中でびくびくと震えるばかりだ。顔を伺っていると薄っすら開いた瞳がきっと睨んでくる。この期に及んでまだ抵抗をしているようだ。
 堀らしい抵抗に鹿島はうっとりと微笑む。

「我慢しなくていいのに」
「……ッふ……ッふ」

 荒く呼吸を繰り返しどうにかやり過ごそうとしている堀をあざ笑うように鹿島はゆっくりと腰を上げていった。途端にびくびくっと背を仰け反らせて呻く堀の姿に喉を鳴らすと、浮かせた腰を再び下ろしていく。

「く、ぅ、ん、んッ」
「いいんですよ?出しても」
「ッざ、けん、なっ」
「妊娠の心配してます?」
「んぅっ!」

 これほど感じ入っているのに何か拒絶することでもあるだろうか?と考えて一つの可能性を掴み上げた。責任感の強い堀ならばこの心配をするかもしれない、と思った結果だ。
 一層険しくなった表情にどうやらこの考えは正解だったようだ。けれど鹿島はくすくすと笑いを零すと腰の動きを止める。

「心配いらないですよ。私、妊娠しませんから」
「ッふ、は、あ?」

 言い聞かせるように顔を近づけると両手で頬を包み込み空ろに開く瞳を覗き込んだ。

「アルファはオメガの精じゃ妊娠できないんです」
「……な……」
「だから、遠慮なく私の中にいっぱい出してくださいね」

 逆光の中に浮かぶ鹿島の表情に堀は釘付けになった。淡く浮かぶ笑みに反して瞳はどこか悲しげに揺れている。初めてみる表情だ。唖然と見上げていると再び鹿島が動き出す。単調な上下運動に、腰を前後に振ってみたり円を描いてみたりと変化を加えてきた。

「はっ、くぅっ!!」
「先輩、喘いで、ください、よ」
「んん〜ッ」
「素直じゃない、なぁ、きもち、いい、でしょ?」
「ッふ、うぅっ!」

 首を振って否定をし続けるも、熱い内壁が蠢きねっとりと絡みついては腰の上下運動でずりずりと擦り上げられる。がくがくと震え始める内腿に限界をとうに超えているかもしれない。奥歯もカチカチと音を立てかみ締めるのも辛くなってきた。

「んぅっ!?」

 ぎゅっと目を閉じてどうにかやり過ごせればと耐えていたら口を塞がれた。驚いて瞳を開けば視界いっぱいに端正な顔立ちが写り込む。僅かに開いてしまった唇の隙間からぬるりと舌が潜り込んできた。

「っん、む、ぅ!」

 押し出そうとすればするりと逃げて上あごをくすぐってくる。ざわっと粟立つ感覚に腰が跳ねると覆いかぶさった躯がぴくりと反応を返してきた。鹿島も感じ入っているらしい、と思わずほっとしたせいか躯の力が抜け、与えられる快感がダイレクトに脳を揺さぶってくる。口を塞がれて満足に酸素を取り込めない状態に思考が徐々にかすんできた。躯が本能に忠実に動きだす。温かい媚肉の締め付けにもっとと自ずと腰が浮いた。

「あっ、はっ、先輩、気持ちいい、ですっ」
「っふ、う、あ、ぁ!」

 歓喜に満ちた鹿島の声に甘く掠れた嬌声が混じり始める。目の前がちかちかと光がチラつき、自身の上で揺れる鹿島をぼんやりと見上げた。赤い頬にうっすらと汗を滲ませた額、笑みを象る表情が見下ろしてくる。生理的に溢れたのだろう、じわりと涙の滲む目元をぼやけながらも認識出来た途端、今までよりも大きな波が襲い掛かってきた。

「か、しまっ、も、やめっ!」
「はぁ、ん、イきそ、です、か?」

 がくがくと震える躯がもう限界だった。積み上がった快感を突き崩す波に身を任せて開放されたい。ただそれだけが頭の中を支配する。鹿島の問いかけに首を縦に振り、限界を訴えた。先端にがつがつと当たる内壁との衝撃に、意識がくらくらと揺れ乱れる息に口を開いて荒く呼吸を繰り返すしか出来ない。助けを求めるように見上げるとひときわ嬉しそうな表情の鹿島がシーツを握り締める手を引き剥がす。

「いい、ですよ、うんと、気持ち、よく、イって、ください」

 縋るものをなくした手を己の太ももへと導く。程よい肉付きの滑らかな肌に指がぶつかり、掴み取るようにしがみついた。途端に強く締め上げられ最奥をごりごりと押し付けられる。

「ッくぁあ!」
「ッあ、ぁ……ッ」

 ぶわっと噴き上がる悦楽にもう抗う事はできなかった。耐え抜いた反動もあり体内に燻ぶっていた熱が一気に放出されていく。包み込んでくる媚肉も複雑に蠢き、一滴残らず搾り取るかのような動きで絡み付いてきた。
 目の前がチカチカと星が散るように光がチラつき、躯中を支配した衝動が治まってくる。満足に出来なかった呼吸を再開させて浮き上がった腰をベッドへと落とした。酸素不足で朦朧とする中、欲を吐き出して萎えたものが媚肉から開放される。苦しいほどの悦楽から解き放たれてほっとするも、指一本も動けないほどに快感の余韻が躯中に広がっている。ぼんやりとどこを見るでもなく見つめていると、口元を指が撫でてきた。生ぬるく濡れた感覚にいつの間にか溢れていたらしい唾液を拭ってくれたのだと気づいた。

「先輩も気持ちよかったみたいですね、よかった」

 ふふふ、と柔らかく空気を震わせる声をどこか遠くで聞いているような感覚だった。ふわふわと覚束ない意識に眠気が首をもたげてくる。瞳を閉じそうになったところに追い討ちのような刺激が四肢を駆け巡った。

「ひぁあ!!?」

 不意打ちだった刺激に閉じられなかった口から一際甘い嬌声が飛び出る。自身の声かどうか疑いたくなるような声音だったのだが、そんなことをいつまでも気にしていられなかった。
 いつの間にか片足を担ぎ上げた鹿島が後腔に指を埋め込んでいたのだ。ざわざわと皮膚の下を何かが駆け巡っているような感覚に縋るものを求めてシーツを握り締めた。先ほどイった余韻が残る躯が再び甘く疼きだす。ぞぐっと躯を震わせると反射的に引き締まる後腔が指の感覚を鮮明に伝えてくる。

「ふ、ぁっ、あぁ!」

 くちゃくちゃと耳を塞ぎたくなる淫靡な音が脳を更に感覚を犯してくる。口を塞ぎたいのに強い快感に閉じることも食いしばることも出来ず、次々と嬌声が零れ落ちた。

「イった後だから柔らかいですね」
「やっ、ひぁ、やッ!かしっ、まぁ!」

 咥えさせた中指が出入りするたびにぬらりと光を纏う蜜が絡みつく光景に、自然と喉が鳴った。肩に担いだ太もももびくびくと痙攣を繰り返していて、身悶える堀の媚態から相当な快感を感じ取っているのがよく分かる。指の付け根まで差し込めばきゅうぅっとキツク絡み付く内壁はオメガが分泌する蜜でにゅるにゅると良く滑り、甘い芳香を放ち続けていた。
 興奮でカラカラに干上がる喉へ無理やり唾を流し込みカサカサの唇を湿らせるように舌舐め擦りをする。

「あぁっ、うッ、んッ、ふぅ、ぁ、はぁ!」

 どうにか声を抑え込もうと身悶える堀を見下ろしつつ、そろりと空いた手を己の下肢へと伸ばした。さきほど堀を受け入れた女性器がうずうずとするが、そこよりも少し上で変形しているアルファの象徴の方が熱く疼いている。堀のように先端から汁を垂らし、目の前の獲物に食いつかんと牙をむき出しにしている獣のようなソコを握り込み上下に擦り上げた。視界から与えられる媚態とむせ返る様なオメガの芳香ですでにイきそうになっている。
 指を咥え込んでなおひくひくと蠢いてみせる菊華にもう一本指を加えてみるが、痛みに怯むことなくくちゅりとイヤらしい音を立てて迎え入れた。入り口を擦るように出し入ればかりしていたが、ぐにぐにと口を変形させてみせる菊華に指の付け根まで捻り込んで指を広げてみる。

「ひッあ゛あ゛あ゛!!!」
「……すご……」

 勢い良く仰け反った状態と、シーツを蹴る足に痛かったかと心配をしたが、開いた指の間からどろりと大量の蜜が伝い流れてきた。その光景にまたゴクリと喉を鳴らして、堀の様子を伺うと全身がぴくぴくと痙攣を起こしている。けれど頬も躯も淡く紅色に色づき、萎えていたはずの肉棒もまた起ち上がり涙を零していた。
 性急に広げると切れてしまうかと心配したが、無用のものだったらしい。オメガ性の発情中である為か、アルファをすぐに受け入れられよう勝手に躯の準備をしてしまっているようだ。

「すぐに入れられそう……」

 ぺろり、と唇を舐めてぐちゃぐちゃに濡れた指を引き抜いた。離れる指に纏わりつく蜜がとろりと細く糸を引く。はぁ、と熱い息を吐き出し、ぐったりと投げ出された足を抱え持った。

「っ、か、しま?」
「先輩の初めては全部、私にくださいね」
「ッ!待て!鹿島!!」

 大きく足を広げられ、散々指で弄ばれた場所に熱が押し当てられる。あまりの熱さに息を飲み込むと噛み付くような口付けで塞がれてしまった。足を持つ手に力がこもり内蔵がせり上がる様な圧迫感が躯を貫く。押しのけようと鹿島の肩を掴むが力が全く入らない。きりっと爪を立て弱々しくはあるが抗い続けた。

「ぐっ、ぅうあッ!!」

 ずぐっと奥まで押し入る感覚に背が仰け反り悲鳴が上がる。避けそうな痛みはすぐに躯を溶かしそうなほどの熱と疼きへと摩り替わっていった。苦しくて溜まらず目の前の体に縋りつくと背に腕が回されて抱き返される。無意識につめた息が零れ落ちると、じんと頭の芯が痺れる芳香にくらりと目の前が回った。耳のすぐそばで荒い呼吸が聞こえる。首元に吹きかかる熱い息にまたぞくりと躯を震わせていると掠れた声が聞こえてきた。

「先輩……堀先輩……やっと、繋がれたぁ」

 震える唇では声を紡ぐ事が出来ず、乱れた呼気をそのままにぼんやりと聞き入っていた。歓喜に震える声音に自然と躯の力が抜けてくる。完全に抜け切っても声はなお吹き込まれてきた。

「嬉しい……でも、まだ、遠いです、先輩」
「ッふ……ぁ?」
「遠いんです、先輩」

 歓喜に満ちていた声はいつの間にか寂しさに震えている。不思議に思えて瞳を開いてみると逆光の中に酷く思いつめた、今にも泣き出しそうな、そんな表情を浮かべる鹿島の顔が見えた。呆然と見上げていると動物が擦り寄るような柔らかい口付けが次々と降り注いでくる。

「先輩の番になりたい……私の番になってほしい……私だけのオメガ……私だけのヒロイン」
「……かし、ッ!!」

 ちゅ、ちゅ、と口付ける音の合間に零れ落ちる声がまるで泣いているように聞こえる。条件反射のように慰めようと手を伸ばしかけたが、唐突に視界がぶれ開いた口から息の塊が吐き出された。

「私、だけの、人にっ、なってぇ」
「あッ、あぐっ、くっふ、ぅあ゛、あ゛!」

 言いたいだけ言うと鹿島は滅茶苦茶に腰を振り始めた。躯の中から押し出されるような呻き声に近い嬌声が次々と上がる。

「ぅぅ、あ、あっ!」

 ただただ圧迫感に喘いでいたはずが、打ち付けられる間に腰の奥が疼き始めた。甘く気だるい感覚が徐々に強くなってくる。その感覚を認めたくなくて感じたくなくて抑え込もうとするも、耐えれば耐えるほど疼くは酷くなり意識が朦朧としてきた。しがみ付いていた理性が瓦解し始めもうどうでも良くなってくる。
 奥を突き上げられる度に背が仰け反り、ぞくっと甘く走る快感が脳を刺激する。かみ締めることの出来なくなった口から零れる嬌声をどこか遠くで聞きながら何かが弾ける予感に手を伸ばす。どこかにしがみ付かないと、とすがるものを求めて差し出した手に誰かの手が絡みついてきた。

「ふっ、あっ、か、かし、ま、あっ」
「せん、ぱぁい」

 涙に滲む視界に蕩けた表情の鹿島が見下ろしてきていた。今まで見たことのないイヤらしい表情に背筋がぞくりと震える。絡めた指をキツク握ってがくがくと震えてきた躯に首を打ち振るう。

「やッ、や、めっ、も、おぉっ」
「わたし、もっ、い、くぅ」
「ッ〜〜〜!」

 一際強く突き上げられ上体が限界まで仰け反る。躯が勝手にがくがくと震え、足の間に押し入っている腰に足を巻きつけた。するとぶるりと震えて切れ切れに喘ぐ声が聞こえる。
 躯の奥にぶちまけられた熱を感じるとようやく硬直していた体から力が抜け落ちた。四肢の隅々まで行き渡る快楽と歓喜の波に、あぁ、中でイったんだな、とぼんやり思った。
 滲む視界の中、鹿島を見上げると手についた堀の精液を舐め取っていた。まるで甘い果汁を堪能しているような表情に羞恥が沸いてくる。けれど、見上げていることに気づいた鹿島が瞳を細めて笑みを浮かべると、そっと頬を包み込んできた。

「私の運命の人」
「(……あぁ、完敗だな)」

 うっとりとした綺麗な笑みとともに見つめられて、心臓が大きく跳ねたのを感じた。きっとオメガだアルファだという以前にきっとこの顔で自分はとっくに陥落させられているだろう。自分を見つめる潤んだ瞳も、そこに潜む情欲に濡れた色も誰にも見せたくないと思ってしまっている。
 立派な独占欲だ。コレが愛情からきていなかったらなんなのか?
 ふわりと小さく微笑むと、目じりを涙が伝い落ちていった。律動が止まり自由に動かせる腕を鹿島に向かって差し出すと首へ絡めていく。

「せ、先輩?」
「(ぜってぇ、言ってやんねぇけどなっ!)」

 突然抱きついたせいか鹿島のうろたえる声が聞こえる。それを完全に無視しておいて堀はかぱっと大きく口を開いた。

「ひゃあん!?」
「はっ、なんだ、可愛い声出るじゃねぇか」

 いきなり首筋を噛まれて全身を走り抜けた刺激にとんでもない声を上げてしまった。慌てて体を引き剥がしてみると見上げてくる堀はしれっと言い放ちにやりと人の悪い笑みを浮かべる。間近で見てしまった子悪魔的な笑みに頬がかぁ、と熱くなっていった。

「なっなっなっ」
「なんだよ?」
「いきなり何するんですか!?」
「何って、番になりたいっつったじゃねぇか」
「つ、つがっ……」

 首を傾げる堀に鹿島はきょとん、と瞬いてしまった。オメガが求愛されて相手のアルファを己の番と認めると首を噛む儀式、というか、本能のようなものが働くという。そしてそれに対してアルファも噛み返せば番の成立だ。その瞬間から互いにしか発情せず、互いのフェロモンにしか反応しなくなってしまう。
 オメガとしての知識が少ない堀でも一応そのことは知っていたらしい。その証拠に「お前は噛まないのか?」と首を晒してくる。どういう経緯で受け入れてくれるようになったのかは分からないが、とにかく鹿島を番として認めてくれるらしい。
 言い知れない歓喜の中、はたと視界に写る堀の姿を意識してしまった。汗でほとんど下りてしまった前髪と上目遣い、上気したままの頬。いつもと変わりない態度ではあるが、それらは非常に目の毒で、未だ繋がったままの下半身が大いに疼いてしまう。その変化はもちろん堀にも伝わるわけで……

「……おい?」
「・・・」
「お前、また大きくなってないか?」
「あー!もぉ!限界!!」
「は?」

 天然なのだろう、こちらの情欲を煽る言葉をつらつらっと並べてしまう堀に鹿島は吼えた。含ませたままの己の欲棒を軽く埋まる程度まで抜き出して堀の片足を持ち上げる。中が擦れてびくつく姿にまたむらっときてその興奮のままに堀の躯をうつ伏せにさせた。背中にぴったりと張り付き腰だけを高く上げる格好にさせると、また最奥まで貫く。

「ひ、あぁ!!?」
「一回で我慢しようと思ったけどやめます」
「あ、ッは、ぁ?」
「オメガはどこ噛んでもいいですけど、アルファが噛み付く場所は決まってるんです」
「そう、なのか?」

 肩越しにこちらを振り返る堀が徐々に整えた声で感心してみせる。どこか余裕があるように見えて堀を支配するアルファとしては少々面白くない。でも噛みつく瞬間を考えるとあっさり意趣返しは出来るからいいか、と流しておいた。
 シーツを握り締める手に己の手を重ねるとパンと音を奏でて腰を打ち付ける。

「ぅあっ!」
「覚悟、して、くださいっ」
「ん、ぁ、な、にっ!?」
「煽った代償、にっ、うんと、犯します、っから!」
「はぁ!?ざ、っけん、な、ぁッぁ!」
「番の証、刻みつけ、ながら、うんっと、良く、してあげますっ」

 打ち付ける度にびくつく背を腕の中に閉じ込めながら耳の後ろへと唇を押し付ける。それだけでぴくりと反応を示す堀に薄っすらと笑みを零して口を大きく開いた。唇だけで項を軽く食むとびくっと跳ねて中がきゅっと締まる。堀の無意識による媚態に目を細めつつ歯を立てた。

「ッふ!?ぅあぁ!」

 びくびくっと跳ねる躯を抱きしめながら更に噛み付く。さきほどよりも強く締まる内壁にくらりと貧血のような感覚が広がるが、噛み付いた項を噛む方に意識が奪われていた。オメガのフェロモンが強く香る耳の裏から程近いだけあって刺激を与えれば与えるだけどんどんと濃く、そして甘く香る芳香に夢中になっていく。
 2度、3度と噛み付いたところで強く吸い付いてキスマークを刻むとようやく離す。赤さを通り越して少し紫がかった鬱血と歯型。目に見える所有の印は消えてしまうが中を犯し、項に噛み付いたことで堀の躯に深く番のアルファとしての証を刻み込めた。これで堀が発情期に入ってもフェロモンを向けるのは鹿島ただ一人になる。震えるほどの喜びが全身に広がっていく。その喜びのままに離れた躯に再び覆いかぶさり抱きしめると、異変に気づいた。

「あれ?」
「……っ……っ」

 腰の動きはとっくに止めているのに堀がずっと小さな痙攣を起こしている。様子を伺おうにも顔はシーツに押し当てられ、隙間からは荒々しい呼吸の音しか聞こえない。そろりと手を動かして躯の状態を確かめると指が動く度に引きつったようなうめき声が零れ落ち、躯を震わせては咥え込んだままの菊華がひくひくと蠢く。下肢まで手を動かしてようやく気づいた。

「いつの間にイったんですか?先輩」
「〜〜〜ッ」

 触れた堀の肉棒がどろどろに濡れ、さきほどまであった硬度を無くしている。ひょい、とシーツの状態を覗くと白濁した蜜が水溜りを作っていた。噛み付いている間に達してしまったようだ。

「噛み付かれるの、そんなに気持ちよかったですか?」
「……よくねぇ」
「またまたぁ、素直じゃないなぁ」

 怒りにか羞恥にか、震える声と隠れていない真っ赤な耳に笑みがこぼれる。伏せた顔を上げないのは顔が真っ赤になってるからだろうな、と笑みを深めて赤い耳に口付けた。

「先輩、今度は一緒にイきましょ?」

*****

 散々犯されてようやく開放された、と思えばぴったりと抱きついてきて頭に頬ずりをしてくる。「うっとうしい」と引き剥がしたいところだが、今は指一本動かすのも億劫で放置することにした。
 時計を見るともう夜中になっている。最後に薬を飲んだ時間から考えると抑制剤の効能は当に切れているのだが、番が傍にいるからか、散々嬲られて燻ぶる熱を放出したせいか……後者の可能性が大いに高いがとりあえず体は落ち着いている。薬を飲まない限り悩まされる発情の症状がまったくないというのはかなりありがたいことだな、と番になった鹿島をちらりと見やった。

「ところで鹿島」
「はい?」
「覚醒ってなんのことだったんだ?」

 ふと保健室での出来事と言葉を思い出した。意味の分からないままの言葉をまた使われてますますわけが分からない状態なのだ。「覚醒しろ」と言っていて今度は「覚醒してる」、と。いきなりオメガになってしまった堀には知らないことを鹿島は知っているようだし聞いた方が早いと思った。

「あー……っと、そのぉ」
「……鹿島?」
「…………はい」

 きょろり、とバカ正直に目を泳がせた。言葉に窮した鹿島を詰るようにじろりと睨んで名を呼べば観念したようにがっくりと肩を落としながら話し始める。

 覚醒というのはオメガにのみ起こる現象だという。運命の番が近くにいるとオメガは覚醒し始め、アルファを受け入れる準備が整うと完全に覚醒した状態になる。覚醒能力の強さは個体差があれど、必ず相手を従わせることが出来る、というものだ。覚醒したオメガが『お願い』するとアルファはたとえ発情中であっても皆、従順な犬のようになるのだという。ただ堀の場合はフェロモンの強さに比例し、覚醒した能力の強さも非常に強く、本来なら効かないはずのベータ性にも効き目が出ていたらしい。その相手が野崎でリアクションの薄さから堀は気づけなかったようだ。

「ふぅん……ってことは、鹿島」
「はい!」
「風呂に入りたい」
「はい!今すぐに!」

 特に強く命じたつもりはないのだが、言われた鹿島は脱ぎ散らかした中からシャツを拾い上げてばたばたと部屋から出て行く。小さく聞こえた機械音から恐らく給湯機のスイッチを入れたのだろう。さらに勢い良く落ちる水の音も聞こえてきたので湯船にゆったり浸かれそうだ。

「なるほど、こういう感じなのか」
「え!試しただけですか?!」

 一通り準備を終わらせたのだろう、再び部屋へ戻ってきた鹿島が、「さぁ行きましょう」と抱き起こしてきた。渾身極まりない態度になるほど、と納得していると「酷い!」とわめき出す。

「いや、入りたいのは本当だ。誰かさんのせいでカピカピだからな」
「……すいません……」

 主に下半身。とは口に出さなかったが、しでかした張本人なので言わずとも分かる。本当に反省しているのだろう、がくりと項垂れてつむじを見せている鹿島の姿に溜飲も下がるというもの。
 互いの体液でこちらもごわごわになっているシーツを引き剥がして体に巻きつけるとベッドから足を下ろした。とたんに堀の肩がびくりと跳ねる。

「?先輩??」
「……なんでもねぇ」
「なんでもないって風には見えないですよ」
「うっせぇ、ほっとけ」
「ほっとけるわけないじゃないですか。私の大事な番(パートナー)なんですからね」

 巻きつけたシーツの下で起きていることを知られたくなくてじりじりと後ずさりながら扉を目指すも、鹿島がずんずんと近づいてきている。しかもシャツに腕を通しただけという破廉恥極まりない格好で、だ。「女なんだからもうちょっと羞恥心ってもんを感じろ!」と心の中で怒鳴っていると扉を閉められた上、その場で閉じ込められてしまう。顔の両側に手を付きじっと見下ろしてくる視線から逃れようと目を泳がせると余計なものが見えてしまった。

「……とりあえずその『凶器』を隠せ」
「ん?あぁ、別に今更じゃないですか。さっきまで散々触れ合ってたんだし」
「それでも、だ。隠せ」
「え〜?あ、興奮しちゃいます?」
「殴るぞ」
「もぉ殴ってますぅ」

 ごっと鈍い音ととも頬へぐりぐりと拳をねじり込ませながらおかしい、と内心焦っていた。さっきから命令しているのにまったく聞き入れる様子がない。さっきと何が違う?と考えつつもしや、と反らしていた視線を戻してじっと見上げる。

「隠してくれ」
「はい」

 今度は即座に聞き入れシャツのボタンを閉め始めた鹿島に、「あぁ、やっぱり」と確信した。あくまで従わせられるのは『お願い』した時のようだ。さきほどまでのような『命令』ではいつもと変わらないらしい。
 はぁ、とため息を吐き出していると忘れていた事態が再びシーツの下で起こる。思わず腹に力を入れて耐えようとしたが返って『その』感覚がはっきりと感じ取れてしまい、かぁ、と頬が熱くなった。

「先輩、本当にどうしたんですか?」
「なんでもないっつってんだろ」
「そうは見えないって、言ってんじゃないですか!」
「あ!?バカ!やめろっ」

 頑として話さない堀に鹿島もじれたのだろう、明らかに何か隠しているらしいシーツを握る手に掴み掛かった。もちろんすんなりと従うはずのない堀が力を込めて抗うのだがそのせいで余計に諸悪の根源である『それ』がますますエスカレートする。決死の攻防がしばらく続いたが結局、鹿島が床に引き倒して乗り上げることで決着が付いてしまった。
 「とりゃっ!」と勢い良くシーツの合わせを開くと観念したのか、顔を腕で伏せてそっぽ向いた。

「……ぅわぁ」
「〜〜〜ッ」

 鹿島が釘付けになったのは散々口付けて鬱血だらけになった足の付け根だ。片膝を緩く立てたその内腿をどろりとした汁が汚している。それはさきほどまで鹿島が堀に注ぎ続けた己の体液だ。立って歩いた際にあふれてきたのだろう。

「えろいですよ、先輩!」
「誰のせいだっ!」

 思わず素直に感想を述べてしまい横っ面をすぱーんっ!と小気味良い音を立てて叩かれてしまった。


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