話の始まりは5年前に遡った。
伸ばした手が届かずに目の前で光に埋もれていくニールを見たあの瞬間まで…
ニールは確かにあの瞬間死んでいた。いや…正しくは仮死状態に陥っていた。そのまま宇宙空間を漂っていれば間もなく死が訪れただろう。

彼を連れていったのは死神ではなく医者だった。

その医者は趣味と称して戦死した人間のパーツを集めて人体模型を作っているという。死んで間のない体ならばカプセルに入れれば多少の傷は塞げるので、パーツ集めとして戦いが起きている場所へ赴いているらしい。戦争の多いこの世の中、裏の世界に生きる者ならばさほど驚かないことだ。ただその医者が見つけたのが事切れる寸前のニールだったという事が少々違う事態を招いた。
宇宙を漂うニールを見つけたのは爆発によって吹き飛ばされてからさほど時間が経っておらず、パイロットスーツのお陰で体の損傷は酷くはなかった。ただ、臓器系にはダメージがあったが、体を回収して生きている事に気付いた医者がカプセルに入れたおかげで後遺症は残らずに済んだのだ。回復に年単位の時間がかかったとはいえ、ニールの体は戦いに出ていた頃となんら変わりない状態になった。

だが、問題はその後にあった。

カプセルから出しても問題ないと判断した医者がまずは意識を戻させようとして液体の種類を変える。麻酔効果のないものへ変えてカプセルの中で一度目を覚まさせてから出すはずだったらしい。
しかし、一向に目を覚まさない。
その状態のまま数日が経過し、目を覚ましはしないが出すことにする。もともと怪我を治療する目的のカプセルなので健康体を入れておいても意味がないということだ。どうしたものか…と悩んでいるとニールの右目あたりの傷がなくなっていない事に気付いた。医者はその傷が回収した直前に付いたものではない事を調べて、他に回収していた体のパーツの中から目を取り出して付け替えてしまった。そうして何も出来ることがなくなった時点でそのまま放置していたそうだ。

「それが1年前の事。」
「…1年…」
「俺の体は生きてるのに意識が戻らない…というか単に眠り続けているような状態で。不思議なことに腐敗も筋力の退行もしなかったらしい。」
「……そんなこと…」
「普通は有り得ないだろうな。でも…その医者が言うにはさ…」
「?」
「魂だけでどこかに存在して生活してたんじゃないかってさ。」
「魂だけ?」
「あぁ。時期を考えると…俺がトレミーに戻った頃だよな。」

そこまで話すと刹那は混乱する頭でしばらく整理をしていたのだろう、少し遅れて指先がぴくりと痙攣を起こしたように跳ねた。

「…まさか…?」
「そのまさか。」

開いたままだった距離をニールがゆっくりと詰めていく。さく…さく…と軽い音をたてて近づく顔をじっと見つめたまま動けなかった。

「だって俺さ、覚えてるぜ?ダブルオーもケルディムもセラフィムもアリオスも。」
「……」
「マイスターになってるライルも。雰囲気の柔らかくなったティエリアも。初恋の君と一緒にいるアレルヤも。すっかり大人になったフェルトも。」

突き出したままだった銃をやんわりと退けられて伸びてきた両手が顔の横へと進んでいく。慣れた手つきでヘルメットの固定を解除されると有無も言わさず脱がされてしまう。

「大人になった刹那…いや…ソランも。それから…」
「………」
「こいつでまた思いっきり横っ面殴られるのは勘弁だから没収。」

そう言って笑いを含みながら抱えられたのは青いヘルメットだ。それをコツリ…と左の米神にぶつけて肩に担ぐと微笑みに瞳が細められた。そうしてじっと見下ろしてくる瞳を見つめ返す。

「俺がひょっこり帰ってきたせいで泣きじゃくったのも…
みんなに女だって事を一緒に話したことも…
粋な計らいで2泊ホテル付きのデートしたことも…
一緒に戦場に出た事も…
仲間を失って傷ついてた事も…
お前さんをこの腕に抱き締めて散っていった事も…
全部覚えてる。」

そっと伸びてきた指が頬を擽り、さらりと髪を撫でていく。するりと滑る指先が唇を擽り顎を捕らえると僅かに上を向かされた。視界いっぱいに映る優しい笑みと蒼い瞳が近づいてくる。

−…ゴリッ…
「いぃッ!?」
「気安く触れるな。」

顎にハンドガンが押し付けられドスの効いた声が発せられた。容赦なくグリリッとねじ込まれて思わず涙目になってしまう。そんな視界に刹那の顔を捉えれば明らかな怒りの色を滲ませていた。

「…怒らせたのは分かって…」
「そういう問題ではない。」
「え?」

当然の反応だ…とまず謝罪の言葉を紡ごうとしたが、刹那が遮ってしまった。相変わらずの言葉の足りなさに脳内をフル回転させて言わんとしていることを汲み取ろうとする。しかしそれ以前に刹那が詰めた距離を再び開いてしまった。

「?…刹那?」
「事の成り行きは理解した。信じ難い事だが…」
「そりゃ良かった。」
「だが…」
「ん?」
「俺はいつまでもあんたのものじゃない。」

剣呑な響きさえ含ませた言葉を紡げばニールの目が見開かれる。その数瞬後にはすぅっと細められた。口元は笑みを象っているというのに『その表情』は決して『笑み』と呼べるものではなかった。けれど刹那も物怖じせずじっと見つめ返す。

「それは…冗談なんかじゃないんだよな?」
「………」

刹那はあえてその質問には答えない。その沈黙がニールにどう伝わるか分かっているからだ。
僅かに訪れる沈黙は鈍い痛みと共に破られた。
次の行動に備えてすぐ動けるつもりでいた刹那だが、反応して動くにはニールのスピードが上回っている。一気に詰められて咄嗟に避けようとしたが、伸びてきた腕に捕らえられて簡単に引きずられてしまった。縺れる足をどうにか動かし倒れずに済んだが、ハンドガンを持つ手を背中に捻り上げられ悲鳴を上げる体の筋に陥落し握りしめた手から力が抜け落ちる。ざくっと重い音を立てて落ちてもなお掴む手は容赦なく締め上げあまりの痛みに顎を仰け反らせると霞む視界に冷ややかな表情で見下ろす顔が見えた。

「残された側ならお前の気持ちも分かるさ。」
「…っ……っ…」
「けど…戻ってきたからには…」
「…ッう…ぁ…」

痛みに耐え浅く呼吸を繰り返していると静かに言葉が紡がれる。声も出せないままに聞いていれば更に力を強められて小さく喘いだ。

「俺のものに躾直してやるよ」
「ッは…んぅ…」

反らされた首から持ち上げられ呼吸が止められると共に唇へ噛みつかれた。

 * * * * *

軽い酸欠に陥り体を動かせない間に、担ぎ上げられて森の中へと移動させられる。いささか乱暴に放り出されたが、下が雑草だらけのおかげか、痛みはなかった。意識が朦朧とする中しばらく放置されたが、不意に上体を持ち上げられる。

「…んっ…」

視界にニールの顔を捉えるとまた唇が重なる。舌でこじ開けられると液体を注ぎ込まれた。変わった味はしないからきっと単なる水だろう、と促されるままに飲み込む。

「っ…は…」

何口か注がれてようやく解放されるとまた雑草の上へと戻された。ぼんやりと瞬きを繰り返す内に少しずつ手足の感覚が戻ってくる。もうすぐ動けるかと思った矢先にファスナーが降りる音を聞いた。

「っ!?」
「黙っておとなしくしてな。」

反射的に起き上がろうとしたが、口を布で塞がれ地面へと押し付けられる。剥ぎ取られる様に慣れた手つきで脱がされ、僅かな抵抗も意味もなさないまま今度はうつむきに抑え込まれた。背中の中央を膝で押さえつけられ呼吸がままならずなんとか逃げ出そうにも再び捻り上げられた両腕では敵わない。

「ッん…ぅ…」

…ぎりり…と引き絞られる音と共に両腕が背後で縛り上げられた。固定するように胴を回り、胸の中央を通って首へと達すると再び手首に絡ませて下りていく。

「こんなもんか。」

下りた先で太腿を曲げたまま縛られてようやく解放される。無駄であろうとは分かっていながら体を捩ってみたが一向に緩む気配もなくただ縄同士の擦れる音がするだけだった。頬に草を擦りつけながら何とか見上げれば酷薄な笑みを浮かべる顔が見える。おもむろに手が伸びてきて思わず目を伏せるとうつ伏せたままだった体が転がされた。仰向けにされて、背中の下敷きになった手に顔を顰めると少しでも体重を逃がすように足を開いてみる。しかし手首から太腿にかけて伸びるロープの長さに背中が自然と反らされ、結果、崩した正座で上体を後ろに倒したような格好になった。

「い〜い眺め。」
「〜ッ」

すぐ横に座りこんだニールがにやけた表情で舐めまわすように見つめてくる。自然と突き出す形になる胸と腰に頬がかっと熱くなるのが分かった。なんとか違う態勢に出来ないかともがくけれど体力を削るだけでなんの解決にもならなかった。それどころか、縄に縛り上げられた胸がふるふると揺れるばかりだ。

「何?誘ってんの?」
「んんんッ!!」

首を必死に横に振り話せないながらにも否定を表せばくすくすと笑う声が落ちてくる。

「あぁ、気持ち良すぎんだ?こんなに尖らせちゃって。」
「んうッ!!」

縄の凹凸が体に食い込み痺れるとともに薄いインナー越しに擦れて曖昧な感覚がくすぐったく感じてしまう。その感覚を貪ろうと体は敏感になっていき、胸の頂が布を押し上げ固く張り詰めていた。それを目敏く見つけたニールの指先がぴしりと弾くと刹那の躯が陸に揚げられた魚のように跳ねあがる。

「相変わらず淫乱な体してんだな?」
「んっ…うぅっ…!」

否定するように首を振るが、布を押し上げる実を摘み上げられてくぐもった悲鳴が上がる。びりっと躯中を走り抜ける痺れに背が跳ねるとそれに合わせて乳房が弾んだ。

「っんくぅ!」
「少し痛いくらいが気持ちいいんだったな。」

そのまま固まった先を押し潰すように指先で捏ねられると、じんっと染み出すような熱が芯から溢れだす。滲み出た熱が解放される場所を求めて躯の中心をじわじわと下り、下腹部へと溜まっていった。溜まりに溜まった熱の塊が下腹で蠢くような感覚がもどかしくて自然と腰が揺れ動いてしまう。淫らにうねる腰を自覚し、羞恥から涙が滲みでてきた。

「んっ…っく…ふぅ、んっ…」

布を通して熱い息が漏れ出ていく。飽きることなく捏ねまわされているとさらに敏感になる胸を指先が這い回り始めた。曖昧な感触がざわざわと肌を粟立たせていく。

「んっふぅっ!!」

身を固くして僅かに躯を捩りながら耐えていると敏感になった先を布ごとキツク吸い上げられた。びくりと反り返る背とともに、もう片方の胸にも手を添えられて絞り上げられるように全体を掴まれてしまう。たっぷり濡らされて悪戯に歯を立てられると、全く質の違う責め苦に躯が戦慄き始めた。

「…んっ…んっ…」
「…刹那は悪い子だな?」
「んっ…ぅ…?」
「躾されてんのにこんなに濡らして。」
「ッんぅ!!」

ふと唇が離れ、楽になった事で僅かに躯から強張りが解ける。けれど安堵出来たのも束の間で、耳に囁きかけられる言葉と、ぐちゅりと卑猥な音に顔が熱くなる。熱の籠る下半身に意識を向けると無防備に晒された恥丘を指で突かれていた。ぷくりと膨らんだ曲線をなぞる様に指が行き来するが、じっとりと染み込んだ蜜でぬるぬると滑っている。

「黒くて分からなかったけど…」
「んぅっ…ふっんぅっ…ぅうっ!」
「ほら。ぐっしょり滲み出してんじゃん。」
「ふっぅんっ!」

言葉の通り指で押し上げられると、肌をスパッツが擦り上げつつ蜜口に侵入してくる。そのまま小さく揺らされるとくちゃくちゃと粘着質な音が鳴り出した。

「あ〜あ、ぐっちゃぐちゃだな。」
「んぅぅ…」
「切り裂いてもいいんだけど…」
「ぅんんっ!」
「残念ながらナイフ持ってないんだよね。」
「…ふっ…ふぅ…」


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