未だ滅多に袖を通すことのないパイロットスーツに身を包み格納庫へ向かう。数値がなかなか安定しないというライルの射撃を見るためと自らも感覚を取り戻す為でもある。ケルディムに近いシステムで作るという己の機体をすぐに動かせるようになる為にも多少触らせてもらうのはいいことだと思っている。それにライルよりはずっとガンダムに詳しいのだからちょっとは手助けになるはずだ。
射撃のシュミュレーションを見てから細かい設定の変更などを指示していると奥のキャットウォークに一人の青年が歩いているのを見つけた。さり気無く見ているとこちらに気付いたのか気まずそうに軽く会釈して通りすぎていってしまった。
「?……沙慈君と何かあった?」
「いんや?」
「……ま、いいけどさ。」
軽く手を振っていると操縦席に座る弟が訝しげな表情で見上げてきた。いつも通りに答えたつもりだったが、どうやら何か感じ取ったらしく、聞くだけ無駄だと判断して流してくれる。優しいなぁ……などと苦笑を漏らしてしまった。
数日前。自分では抑えたつもりだったのだが、表情にうっかり出してしまったらしい。刹那を殴ったことへの怒りと彼女の隠された優しさに気付かないことへの苛立ち。確かに言葉数が少なく、表情が未だに乏しい方な刹那の優しさは分かりにくい。けれど近くにいれば必ず気付くものだろう。どれほど自身が傷ついていたとしても常に誰かを優先させていることに。いつだって失わない為に必死なのだ。不器用ながらも両手を広げて抱えたものが零れ落ちないように抱き締めている。たとえその結果、相手が傷ついてしまおうとその手を離さないだろう。ただ生きていてほしいという己の願いの為に。
「あら?ニールさん?」
「ん?」
「アニュー。」
声がした方を振り返ると赤い瞳と柔らかな紫の髪をした女性が見上げている。ライルの声が僅かに高くなったのに気付いて、あぁ、と思った。どうやら想い人らしい。年齢に合った物静かで清楚な雰囲気と面倒見の良いお姉さんと言った印象からライルの好みだなぁと感心してしまう。刹那も相変わらず物静かというよりは寡黙ではあるが、お姉さんというよりは姉御といった雰囲気になった。まったく同じではなくとも好みが似ているので双子の性だなぁと心中で苦笑を浮かべてしまう。
ライルがアニューと一緒にいるのを何度も見かけていたから今更な気もするが……その彼女が近くまで来ようとケルディムに昇ってきたので、それとなく手を差し伸べればすんなり重ねてくれる。刹那とは大違いだよなぁ、などと小さく笑みを漏らしていると操縦席から鋭い視線が投げかけられた。それに知らぬふりをして引き寄せる。
「ありがとうございます。」
「いえいえ、どういたしまして。」
「で?兄さんに何か用?」
少々言葉に棘が付いているように感じるのはきっと自分だけだ、と思いつつ笑顔を貼り付けたまま答えを待った。あとで男の嫉妬は見苦しいと伝えるべきかとも考えたが、自分にも言えるので説得力がないな、などと考えているとアニューが少し困ったような表情になる。
「いえ、私がではなく……刹那さんが……」
「刹那?」
「そういやダブルオーのとこにまだ来てないよな…」
そう言ってライルが身を乗り出し隣に佇むダブルオーを覗き見る。二人は朝からケルディムの調整をしていて、昼くらいに一度切り上げようと思っていた。それはニールがダブルオーの調整に来るだろう刹那を捕まえて一緒に昼食を摂る為でもある。その刹那はというと今日は朝からアニューのところで検査を受ける予定だ。
「検査受けてないのか?あいつ。」
「いいえ、受けて頂きました。ただ、私もこちらへ来ようと思っていたのでご一緒しようとしたのですけど……ニールさんに用があるからと足早に出ていかれたので……」
「え?マジで?」
「刹那、兄さんがここにいるの知らないのか?」
「や、ライルとケルディムの調整するっつってあったはずなんだが…」
昨日の会話には確かに今日の予定をお互いに教えあっていたはずだ。朝からまるきり別行動になるので一緒には眠らなかったが、訪れる沈黙に三者三様に首を捻る。この狭い艦内で迷子など有り得ないし、何より刹那がダブルオーのところに来ないというのも気になる。何せ、ガンダムバカと賞賛される刹那が、だ。長いため息をつきながら頭をがしがしとかき回す。
「探しにいくかな。」
「危なっかしいヤツなんだから早く行ってやって。」
「お願いします。」
何故だか娘をよろしくと言われているような心境になりながらも足早に格納庫を後にした。
* * * * *
−さて……どこ行ったかな?
窮屈なパイロットスーツの上半身を脱いで腰に括りつけたところで思考を巡らせた。行く可能性の高かった格納庫から出てきたわけで…あと残される場所は限られている。可能性の高い順番、と展望室へ足を運んだが誰もいない。管制室を覗くついでに食堂も覗いたが、どちらもいなかった。フェルトに聞いても見ていないと言われ、イアンにも尋ねたが同じ答えが返ってきた。
「……あとは……どこだ?」
待機室を覗くと青いヘルメットが見当たらなかった。おや?と思い他を探しに回る。食料庫を念のために見て周り他の倉庫も覗いたがいない。まさかと思い自室へ入ってみたがハズレだった。
−……となると?
すぐ近くにある刹那の部屋へと向かった。ロックはされているが番号を聞いているのですんなりと開く。中に入ってみると灯りは点けられておらず真っ暗だ。
「え……と……電源は……」
部屋の造りはみんな同じなので入り口横にあるスイッチを手探りで見つける。スイッチが入ると途端に明るくなった空間に目が眩んで僅かに顔を逸らせた。
「ッ!!?」
背後でドアの施錠音が聞こえ振り返ると鳩尾に衝撃が走った。ぐっと息が止まり目の前が暗くなっていく。その光景の中で拳を掲げる刹那の姿が見える。正しくは青いヘルメットを被った刹那らしき人物。
−……何故……インナーにヘルメット……?
その人物はパイロットスーツを着る時に使用するインナー上下に身を包んでいるのだが、肝心のスーツは身に纏わずヘルメットを首に乗せている。突っ込みどころ満載な格好をしているのだが、薄れ行く意識の中では言葉の一つも紡げなかった。
* * * * *
「……ぅ……ん……?」
フェードアウトしてしまった意識が戻った時、息苦しさと体の熱さに魘されていた。いまだ胃の辺りに違和感があり気分が悪いのだが、それ以外に『何か』が体を侵している。吐く息すら熱くぼんやりと瞬きを繰り返した。視界の端に備え付けのデスクとそこに鎮座するヘルメットが見える。
「………ッ!?」
その青を見た瞬間自分に何が起こったかを思い出すと共に、背筋をぞくりと駆け上がる感覚に息を詰めた。恐る恐る視線を下ろすとソコに広がる光景が脳震盪を起こさせる。
「っ……せ、せ、せ……」
「ん……おはよぅ……にぃる……」
今目の前で蹲っているのは探し回っていた刹那に間違いはない。ぴったりとした黒のインナーに身を包みそのしなやかな体をうつ伏せにしている。ただ、普通にうつ伏せにしているわけではなく、猫がミルクを啜るようにニールの下半身に顔を埋め腰を高く上げていた。インナーから取り出したニールの雄を口に含んでは吸い上げ、つぅっと滑り落ちる液を舐め上げる。その動きだけで頭は爆発しような衝撃に見舞われた。かっと熱くなる顔と体にうっかり達しかけるが唇を噛み締めることで凌ぐ。
ニールが起きた事に気づいた刹那はしれっと挨拶をしてみせた。けれど呂律が回っていないのは彼の一物に唇を寄せているからで、その仕草がニールの雄に更に血を上らせる。今すぐその顔を掴み上げて呼吸すら貪るほど深く口付ける衝動に駆られるのだが、残念ながら出来ないでいる。なぜならニールの両手は今後手に縛り上げられているのだ。その状態で壁に凭れて座らされ、インナーを下げられて息子さんを好き勝手に貪られている。
こんな状況で混乱するな、という方が無理だろう。
「な、なに……してるの、かな?」
「ナニをしてるんだ。」
「いや……だから……」
答えになってない、と首を項垂れさせると刹那が口を離してじっと見つめてきた。その瞳に忙しなく瞬きを繰り返していると、伸び上がって唇に羽のようなキスを施される。そのまま頬や目尻、額とあちこちに降り注いた。膝立ちになった体をぴたりと沿わせてくるものだから、胸元に押し付けられる柔らかさにドギマギしてしまう。
「あんたが言ったんだ。」
「へ?」
「ニールが傍にいる時は一人でするなと……そう言ったのはあんただ。」
唇が触れるか触れないかの位置で言い捨てられた言葉にぐるぐると思考を巡らせればすぐ蘇る記憶に苦笑を浮かべる。それは刹那が快楽を憶え始めた頃に言った覚えのある文句だ。体が疼いて熱くて仕方ない時は一人エッチをする事。けれど、己が傍にいる時は頼りに来いという約束。あれはニールが発情期の刹那を見逃さない為であったのだが……
「なに?躯が疼いて仕方ないてか?」
「ん……コレがほしぃ……」
するりと手を伸ばして撫で上げられると腰がぴくりと反応を示す。随分大胆な誘い方をするようになった事で…と思わず苦笑を浮かべるが、己の息子さんは随分素直らしく、刹那の手の中でどくりと大きく脈打った。その変化に刹那の表情が恍惚とした色を浮かべる。そして引き寄せられるように体を再び伏せると先端から流れ出る蜜を伸ばした赤い舌で舐め摂って行った。
「……重症だな……」
「ん……ぅ?」
ぱくりと口に含んだまま見上げてくるものだから、思わずイきそうになりぐっと腹に力を入れてやり過ごした。この天然クラッシャーは攻めの手を緩めるつもりはないらしい。離さないと言わんばかりに咥えたまま両腿へ腕を絡めてきた。頭だけを使って前後に揺さぶり、その赤い唇から己の雄が出入りしている様はなかなかに腰を直撃してきてくれる。
「たっぷり……気持ちよく……してくれよ」
「りょう……かぃ……」
荒々しく吐く呼吸の合間に言葉を紡げば緩やかに微笑みを浮かべてくれた。
* * * * *
愛しいのだ、と言わんばかりにバードキスを何度も施される。それだけでも柔らかな唇の感触に呼吸が荒くなっていた。ずるりとゆっくり唇から出されると張り詰めた雄がぶるりと揺れる。その様子にこくりと喉を鳴らすちゅっと可愛らしく口付けて上体を起こした。
「?……刹那?」
突然フェラを中断されたのでどうかしたのかと伺えばおもむろにトップスを脱ぎ始めた。あまりの展開に目を瞠っていれば下から現れたのは黒いレースに窮屈そうに包まれた豊満な乳房。しかもそれは総レース素材らしく黒い網目の間からぷくりと存在を主張している紅い実が見え隠れしていた。それどころかカップ自体小さいデザインなのか実の周りを覆ってはいるがほとんどはみ出している。さらに着脱は首の後と胸の中央でリボンを結ぶ仕様だ。胸の間でひらりと揺れるレースのリボンと覆い切れていない下乳に思わず喉を鳴らしてしまう。
「……おま……それッ……」
一緒にランジェリーを買いに行った事もあり、帰ってきてから幾度か躯を重ねてきたので刹那が所有する下着のレパートリーも覚えてしまっている。通販か何かで新たに買い与えようかなどと考えてもいたし、もともとランジェリー自体に興味を持っていない刹那が、新たに買い足すという事も考えられない。それどころか、刹那が選びそうにないそれに度肝を抜かれた。
「スメラギとアニューが選んでくれた。」
「ミススメラギに……アニュー!?」
「スメラギに相談していた時にライルがこういうデザインを喜ぶのだと……」
「……ライルの好み、ね……」
思わずずるりと体が傾いてしまう。言われて見ればそうだったと思い出す。可愛らしい系の好きなニールに比べ、ライルはセクシー路線が好みだった。まだ一緒に住んでいた頃に親の目を盗んでこっそりグラビア誌を購入して、布団の中へ懐中電灯を持ち込み二人してどの子が可愛いだの好みだのと話していた思い出がある。それをまさかこんな時に思い出す事になるとは……と思わず涙が滲み出てきた。
「……嫌いか?」
「ぅえぇ!?」
切なげに揺れる瞳で四つん這いに近づいてくるものだから思わず声が裏返ってしまう。じっと見つめて来る瞳に生唾を飲み込んで少し前かがみになると、意図を正確に読み取ってくれたらしく顔を寄せてくれた。額に、頬にと口付けを落とすと倒した上体を抱え上げるように首に腕を絡められて壁に凭れさせられる。
「随分とセクシー過ぎて驚いただけだよ。」
「……本当か?」
「ん、本当。それに嫌いなわけないだろ?」
「?……そうなのか?」
「だって刹那が俺を想って着てくれたんだろ?」
取り繕った無表情の中に見える不安に指摘してやれば、予想通り頬を染め上げて視線が外された。可愛くなったなぁ、と内心デレデレしているとちらりと視界に写るレースの細いリボンにうずうずとし始める。
「……ちょっと味見。」
「え?」
断りを入れて刹那の肩口に顔を埋めると不思議そうな声が上がる。ちゅっと音を立てて首筋にキスをすれば細い肩がぴくりと跳ねた。そのまま唇を沿わせて首から胸元へ伸びるレースの上を辿りいく。レースの少し硬い感触に混じって滑らかな肌が心地良い。感触を楽しみながら辿り下りていけばふるりと揺れる果実に至る。カップの淵をなぞれば肩を掴んでいた両手が頭を抱えるように回ってきた。
「ひゃうッ!」
悪戯に頂を口に含めば躯がびくりと跳ねた。レースのざらざらとした中にぷにぷにとグミを思わせる実の感触に歯を立てては宥めるようにたっぷり唾液を絡めて嘗め回す。染みこんでくる生暖かい感触とレースの網目から曖昧に触れる舌に疼く躯が敏感に反応を示していた。
「はッあ!」
軽く歯を立てただけなのに背筋が仰け反る。もっとと強請られるように突き出された胸を弄るように舌を這わせているとくっと髪を引かれた。ちらりと視線を上げれば上気した頬で浅く呼吸を繰り返す刹那の表情が見える。
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