「ぅ…んんんーッ!」
びくびくっと跳ねる躯を胸に押し付けるように背を反らせた刹那の籠もった声が響く。無理矢理開かせた口の中で舌を吸い上げたからだ。焦点がぶれるほど近い位置にある顔は、きつく寄せられた眉と紅く染まった頬を流れる涙が艶めかしい。離れるのは勿体ないと思いつつもそっと解放すれば、縋りついていた指先から力が抜けて熱い吐息と共に落ちていった。
「…刹那…」
「は…ぁ…」
荒々しく呼吸を繰り返していると、ロックオンの腕に抱き起こされる。胡坐をかいた彼と向かい合わせにされると、力の入らない腕を首に回されて密着するように座らされた。近づいた顔に口付けを落とされ朦朧とした意識の中、気だるげに瞳を開けばすぐ目の前に翡翠の瞳が見えた。
「刹那…出来るだけ力抜いとけよ…」
「ん…ぅ…」
くちゃ…という音と共に下肢に宛がわれた熱の存在に気付いた。触れるだけで火傷しそうなほどに熱いソレは先ほどまでロックオンの指が占領していた部分に押し当てられている。ぴくりと躯を跳ねさせた刹那が不安げに瞳を揺らしながらロックオンを見ると真摯な表情で見つめられている。
「一瞬で終わらせてやるから…耐えてくれ…」
言葉の意味は分からなかったが、ロックオンの懇願の言葉に刹那は一つ頷いて見せた。たったそれだけの動作だったのに、彼はとても嬉しそうに、幸せそうに微笑んでくれる。さらりと額を晒されてそこに口付けられるとより深く抱き寄せて耳元で「ごめん」と小さく囁くと次に来た衝撃に目の前が赤く染まった。
「ッーーーーーッ!!!」
「ッくぅ…」
声になっていない悲鳴を上げた刹那の腕が首から背に回り、爪が思い切り突き立てられる痛みに奥歯を噛み締めた。突き破られた痛みとあまりの衝撃に息を詰め必死に縋り付いて来る刹那の腰が、痛みから逃れようと無意識に逃げを打つ。その動きを腕の力で捩じ伏せぎゅうぎゅうと締め上げるキツイ襞の感触に熱い息を吐き出しなんとかやり過ごした。躯の衝撃が治まって来たのか立てられた爪から僅かに力が抜けたのを見計らって首筋に埋められた頭へそっと唇を寄せる。
「さすがに…いきなり全部は…無理だよ…な…」
「ぅ…くッ…ぁ…」
「せつな…大丈夫だから…ゆっくり…呼吸してみろ…」
囁きかけるだけでもぴくりと跳ねる体を腕で抱きかかえて宥める様に頭を撫でてやる。かたかたと小さく震えている背にも手を添えて呼吸を促してやるとようやく詰めた息を吐き出した。
「悪い…刹那…お前さんは滅茶苦茶痛いだろうけど…」
「…?」
乱れたままの呼吸で満足に言葉を紡げないまま、顔を持ち上げ視線で問いかけると額に汗を滲ませたロックオンが微笑みかけてくれている。
「俺…今すごく嬉しいんだ…」
「…ぇ…?」
「今、刹那と…一つになってるから…」
困惑の瞳を向ければ背に添えられていた手がするりと下ろされて桃肉の間に指が滑り込む。
「あ!」
ぎちぎちに広げられた花弁をするりとなぞられると背筋がぞわりと粟立つ。それに連動して花弁が引き絞られて胎内に埋められる熱の存在が大きくなる。思わず目の前の体にすがり付けば頭上から息をつめる声が聞こえた。次いで小さく甘いため息をつかれると顔がカッと熱くなる。
「…ほら…俺とお前さんが…繋がった…」
吐息混じりに呟く言葉で刹那はようやく理解出来た。己の中に指ではない、ロックオンの一部が埋め込まれている。そして自分がその存在にふるりと反応すれば目の前のロックオンも同じなのだろうか…同じように息を詰め熱く息を吐き出していた。
「…ヤバイな…」
「ふ…あ…?」
「お前さんの中…気持ち良過ぎてずっとこのままでいたい気分。」
「なっ…あッ!!」
「バカな事を言うな」と続くはずだった言葉はゆるりと腰を揺らされる事によって遮られてしまった。揺らされることによって目一杯詰め込まれた熱に躯の中をぐりっとかき回される。それだけで躯が火を放ったように熱くなる。
「ぁあっ…あっ…!」
「刹那…」
そのまま息をつく暇もなく小さく突き上げ続けられ躯中に広がる甘い痺れに犯されていった。
頬に赤みが戻ってきた刹那を片腕で支えたロックオンは徐にシャツを脱ぎ始めた。何も考えられなくなった思考で目の前に姿を見せた彼の上体は…日頃鍛錬をしていないように見えても一日中一緒にいるわけではないので知らない所で鍛えているのだろう…自分とは程遠い体つきをしている。隆起した筋肉や所々骨ばった部分があって、まるで百獣の王のように見えた。
離された躯を再びその胸に引き寄せられると、その広さと温かさにうっとりと瞳を細めてしまう。それがまるで眠たいように見えたのだろう、頭上から小さな笑い声が聞こえてきた。
「まだ寝るなよ?」
「…寝て…ない…」
「ならいいけど…よし。これでちったぁ…マシだろ」
刹那の背中越しに床へ脱ぎ捨てたシャツを広げるとその上にころりと寝かされ。背に当たる布からは、彼の残り香と温もりが感じられる。それだけで包み込まれているような感覚に陥り、何故だか切なく感じてしまう。顔の横に手を付いて覆いかぶさってくるロックオンに両手を差し伸べると、その広い背中に腕が回るようにと床の上で抱き締められた。
「悪い…刹那…そろそろ限界だ…」
「…ぁ…え?」
「しっかり…しがみ付いとけ…」
「っひ…ぃあぁ!!」
肩口に顔を埋めたロックオンの掠れ気味な声に気を取られていると、背中に回っていた腕が腰へと回され、己の腕も彼の背から首に回すようにと位置を変えられる。突然腰を鷲掴みにされた途端、中を埋め尽くしていた彼の熱がずるりと抜けていく感触に思わず悲鳴を上げると間髪いれず勢いを付けて再び最奥まで突き上げられた。その瞬間に起きた感覚をどう表現すればいいのか分からず、ただ躯が反応するままに仰け反り押し出されるようにして吐き出された嬌声に眩暈がする。見開いた目の前がちかちかとしてさえ見えるのに、ロックオンの動きは止まらなかった。
「ひぅッ…ふあぁ!ッあ、んん!んっくぅ!」
「…痛い…わけじゃ…なさそう…だ、なッ…」
悪戯に一際強く突き上げれば脇に抱えた足が腰に絡められる。この無意識の媚態に舌舐め擦りしたロックオンはにやり、と口を歪めると、単純に前後へ振っていた腰を突き出しつつ回す動きを加えた。途端に反らされる顎とさらけ出された細い首筋に吸い付けば、唇の下で快感に身悶える声が震えている。
「ぃあ!ひッ、ぅあ!やぁあ!」
「…は…っぁ…」
あまりに快感が強いのだろう、流されまいとするように必死にしがみ付いてきている。髪を振り乱し喘ぎ続ける唇の端から飲み込みきれなかった唾液が溢れていた。それを舌先で舐め上げれば内壁がうねり出す。まるで揉み上げられるような動きになった襞の動きにロックオンの余裕もなくなってきた。
「…せつ…なっ…」
「あぁあッ!だめ!だめぇ!ろっくお、ろっく、おんんッ!」
「あぁ…イく…ぞ?」
ガクガクと震え出した内腿と己の限界に刹那の中で暴れ回っていた熱をずるりと引き抜く。ぎりぎりのところまで引いて止めると浅い呼吸のまま刹那が濡れた瞳で見上げてきた。その瞳に笑いかける事も出来ずに思い切り叩きつける。
「ひっやぁあぁぁぁあぁああああぁぁぁ!!!」
「くぅ…ぁ…」
一際大きく躯を跳ねさせて高い悲鳴を上げた刹那の胎内がロックオンを締め上げた。その動きに背筋を奮わせたロックオンは仰け反った刹那の胸元に額を押し付け、熱い息とともに躯内を駆け巡っていた熱を叩きつける。放たれた熱に躯を痙攣させていた刹那の腕が首から滑り落ちていった。
「ぁ…はっ……せつ、な…?」
「はっ…はっ…」
気だるい体を奮い立たせて顔を上げれば浅い呼吸で必死に酸素を求める刹那の顔がある。切なげに寄せられた眉間…閉じた目尻からは涙が流れ落ちて薄く開いた唇が戦慄いている。壮絶なほどに婀娜めいた表情にそっと頬へ唇を落とすとぴくんっと躯を跳ねさせてゆるりと瞳が開かれた。その濡れた紅玉が己の顔を捉えると震える手を差し出してくる。両の頬を包み込まれ引き寄せられると口付けを強請られるから重ね合わせた。
* * * * *
「…スメラギ…」
「あら?どうしたの?刹那。」
酒瓶片手に扉のロックを開けば思いつめたような顔をした刹那が立っていた。とりあえず中に入るようにと体をずらせば小さく頷いて入ってくる。
昨日ロックオンがあっさり見つけ出すまでどこに居たかは分からないが、彼の監視の元しっかり食事を摂らされていたのを見ると一箇所でじっとしていたようだ。
何はともあれ、無事に見つかった事だし、その後何ら変化も見られないから流していたのだが…
「聞きたい。」
「うん。どうぞ?」
刹那が一人部屋を訪ねてきた時は『女の子としての相談』をぶつけてくる時だ。刹那の体事情を知っている唯一の女性であるスメラギはちょっと楽しみにしつつも言葉を待つ。
「ロックオンに俺を刻み付けるにはどうしたらいい?」
「……………うん?」
さすがの戦術予報士でもこれは予想の範囲外だった。顔に笑顔を浮かべさせたまま首を傾げる。
「刻みつける…とは?インパクトを残したいってこと?」
「インパクト?」
「んーと…心に強く印象を残す…みたいな感じかしら。」
「それはどんなことだ?」
「そう…ねぇ…」
刹那の聞きたい事自体が曖昧な為質問も曖昧になってしまったのだろう。けれどスメラギは予報を立てる。彼女にはきっと女の子の淡い恋心のような物が芽生え始めているのだが、生まれ育った環境で『それ』をどう表現するのかが分かっていないのだろうと。ならば刹那にとって分かりやすい言葉でロックオンに衝撃を与えられるものは何だろう?と幾つか思い浮かべれば一つ適度なものが浮かんだ。
「『好き』とか。」
「…人相手にも使うのか?」
「まぁね。でもその言葉は人が相手だと『特別』だって意味を持っちゃうのよ。」
「…特別…」
「そ。前に『大』ってつけるとなおいいかもね。『大好き』って。」
「…それだけでインパクトは残せるのか?」
「普段あまり喋らない刹那なら効果特大よ。」
「…そうか。」
「あ、もし言うんなら二人きりで相手にしか聞こえないようにした方がいいわよ?第三者がいると茶化されてかわされちゃうかもしれないわ。」
「了解した。」
しっかりと頷いた刹那は「邪魔した。」と言い残して部屋から出て行ってしまった。
果たして自分の読みはどこまで当たっているのだろう?恋愛と戦争とは全く勝手が違う。それもあの刹那とロックオンだ。悉くイレギュラーを打ち出すのが得意そうだ。
「ま、明日のロックオンの態度次第よねぇ〜」
果たして次の日…
いつもとなんら変化のない刹那を確認しつつ、ターゲットを待っていたのだが朝食時に食堂へ姿を現さなかった。その代わりリヒテンダールからロックオンがハロに埋もれて倉庫の端をごろごろ転がっていたそうだ。
とりあえずスメラギの言葉を刹那は即実行に移したらしいが、ロックオンがどういう答えを出したのかは結局分からず終いになったのだった。
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ちょっと逃げた感が否めませんが…刹那なりに何かを返したかったわけですよ。
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