薄暗く長い螺旋階段はまるで現実と夢とを行き来するための道のようで、また一歩踏み入れれば帰れないのではないかと錯覚するほどの高揚感を煽ってくる。通路の所々で煌々と灯されたろうそくを何本目か数える事に飽きた頃、その重厚な扉は現れた。しっとりとした革張りの両開きの扉は凝った彫刻の施されたレリーフに飾られ殊更豪奢な印象を与えていた。案内役がその扉を押し開く。隙間から漏れ出てきた中の空気が甘く芳しい香りに満ち脳をじん、と痺れさせた。前を歩く年の変わらぬ上司に続いて入って行くと、本当にここは現実の世界なのかと見紛うような空間が広がっていた。

「お、あいつ久々のご来店じゃねぇの」

 そう呟いたのは舞台袖からフロアの様子を窺っていたこの館の人物だ。幾重にも重ねられたカーテンをほんの少し掻き分けて目を凝らしている。もう片方の手にはお気に入りのピザを持っており、仕事中にも関わらず美味しそうに頬張っていた。

「おっと」
「?どうした?」
「手、振ってきやがった」
「お前の行動はお見通しというやつだな」
「ちぇ」

 前のめりに覗いていた上体がさっと戻されたので聞いてみれば些か面白くない、という渋面を作っている。理由はなんてことない、その人物がこっそり見ていたことに気づいていたというのだ。
 相変わらずか、と小さく笑いを漏らすと脳裏にあの幼さが薄れ始めている姿を思い浮かべる。年齢の割に特殊な職についており、ただそれだけならまだしも、責任者だ。彼の実体を知らなければ首を傾げるだろうが、働きぶりをみれば誰もが納得するだろう。
 その人物に大層気に入られたのは目の前の椅子に腰かけてむしむしとピザを頬張っている青年、グイード・ミスタだ。短く切りそろえられた黒髪にベレー帽を乗せ、年齢の割にくるくるとよく動く表情と黒曜石のごとく黒い瞳は見ていると楽しい。
 けれど、そんな愛らしい特徴に反して彼の格好は卑猥の一言に尽きる。肋骨のあたりからへそに掛けてをしっとりとした光を帯びる黒革のコルセットに包み、腰骨の位置で引っかかるホットパンツも同様の布地で作られていた。膝の上まで覆うニーハイブーツももちろん黒革なのだが、鋭いつま先が底上げをされており、細いヒールもうんと上げ底を施されている。ヒールを履き、際どい衣装を着ているとはいえ、それは決して彼の趣味ではなく、むしろ彼の趣味からはかけ離れた格好だろう。

 ならばなぜそんな格好をしているのか?
 答えは簡単。ここが娼館と呼ばれる場所であるからだ。

 この娼館は街で一番有名である。
 何が有名かというとその理由は3つ。
 その中で客にありがたがられる理由が、看板とおぼしきもの掲げていないことだ。
 では客はどうやって訪れるのか?それは常連の紹介であったり、淫靡な情報に詳しい人間であったり……始めの頃こそ、昼間にスカウトが街へ繰り出していたが、今では噂が人を惹きつけ、人が人を呼び連日賑わっていた。
 次に、ここには男娼しかいない。客は男も女も関係ないのだが、この館で働いている者は男しかいなかった。男が性欲発散の為だけに、女が一人寝の淋しさを紛らわせる為に通うにはちょうどいい、そんな館だ。また、そこで働く男達が皆、各々に突出した特徴を持っており誰一人として似た者がいない。それも客に持て囃される点であった。
 そして最も大きな理由は、男娼達のトップに君臨する人物だ。彼は気難しい性格で客と寝る事が滅多とない。それだけではなく、顔見せとして催される前座のショーや客のテーブルに同席する時も一切触れさせないのだ。けれど、トップを張るだけあって、一度目にした者を惹きつける容姿と色気の持ち主だという。何せ彼が出る前座のショーを拝むためだけに高い金を払って来店する者が山ほどいる為に、館のシステムが事前予約及び当日チケット制に変更されたくらいだ。

「おーい」

 こんこんと衝立を小さくノックして顔を出したのは支配人ポルナレフだ。彼は綺麗に逆立てた銀髪が特徴的でお調子者なのだが、仕事に関しては全く抜け目なくこなしていくので信用のおける人物である。彼が来たということは仕事開始の時間だということだ。

「準備は終わってる」
「オッケー、そんじゃ、今日も一稼ぎ頼むぜ?」
「あぁ」
「いってらっさ〜い」

 ミスタがひらひらと手を振ってくるのへ小さく笑みを零しながらポルナレフの後へと続いた。歩いているのは舞台に直接続く廊下ではなく、裏通路であり、その通路は客席のあるフロアの入口へと続いている。見慣れた扉の前にまでくると受付と案内役をしていた二人が立っていた。

「うーっス。今日も満員御礼、チケットは完売しましたァン♪」
「初見が何人かいたな。その中に行儀がよくなさそうな輩が混ざっていたから気をつけてくれ。いつも通りやってくれれば即つまみだす」
「ありがとうございます」

 片や好き勝手にあちこち跳ねまわる黒髪。片や柔らかくウェーブを描く金髪。対照的な髪色を持つ二人は用心棒を兼ねていて、鍛え上げられた肉体が服の上からでもよく分かる。

「今日はコート着てんのか。初めてだな、これ」
「あぁ、貢ぎ物の中にあってな。ちょっとしたファンサービスだ」
「へぇ、なかなかセンスがいいな。似合っているよ」
「うわ、さらっと言っちゃうのね、スケコマシーザー」
「失礼な。俺は彼を誑し込んでなんかいないぞ?」
「そういう無自覚が性質悪いんだっつの」
「だから違うと言っているだろ。しつこいとシニョリータに嫌われるぜ、ジョジョ」
「にゃにぉお〜?」

 この二人口喧嘩は日常茶飯事だ。何かにつけてよく言いあいをしている。けれど、仲が悪いのかと言えばそんなことはまったくなく。むしろ良すぎるくらいだった。

「はいはい、お二人さん、痴話喧嘩なら後にしてくれよ」
「「なッ」」
「ジョセフ。一番に褒めれなかったからって突っかからないで」
「うっ」
「シーザーは現時点においてジョセフの『ジョジョ』呼びは禁止」
「す、すまん」

 互いに指摘され黙り込む様は兄弟のようにも見える。黒髪のジョセフ・ジョースター、そして金髪のシーザー・A・ツェペリは視線を合わせると拳をぶつけあってすぐに離れた。これが二人の仲直りの仕方らしい。

「もっと他に呼び名があれば良かったんだがな」
「いやいや、大丈夫だって。音が同じなだけでお前は表記上では『JOJO』なんだし」
「そうだ。俺が気をつければいい話だしな」

 ぽつりと零れた言葉に二人はすぐフォローを入れてきてくれた。それに淡く笑みを浮かべるとポルナレフが軽く手を叩く。

「ちょうど切りよくまとまったとこでおっ始めるぞ〜」

 その言葉に二人はバイザーをかけると青年の後に控えた。熱狂的なファンから彼を護るための護衛とおひねりの回収をする為だ。
 何を隠そう、この青年こそがこの館でトップに君臨する男娼なのだ。JOJOという源氏名を持つ青年で、195もある長身を常連からもらったロングコートに包み、短い黒髪は鍔のついた軍帽を模した帽子に詰め込まれている。その帽子の淵から見え隠れしている切れ長の瞳は、きらきらとして澄んだ碧色。
 その瞳で目の前の扉が開かれるのをじっと待っていた。

 * * * * *

 少し時を遡り。カーテンの隙間から覗きこんでいたミスタが慌てて引っ込んだ頃、その原因を作った『少年』は小さく笑みを漏らしていた。そう、この人物はまだ成人していない。本来ならばこのような場所に入れるわけがないのだが、彼は特例だった。
 短く癖のないまっすぐな黒髪に雪のような白い肌と海のような青い瞳が際立つ。まだまだあどけない顔の作りは微笑んでいる為にとても愛らしい印象を受けるが、彼はこの街で知らない人はいないだろう有名人、ジョルノ・ジョバーナだ。本来は柔らかな光を纏う金色の髪なのだが、ここに来ているのはお忍びの為に『波流乃』という名を名乗りウィッグを被って変装をしている。
 彼が有名なのは齢17歳というその年齢には似つかわしくない役職に就いているからだ。

 この街には、人間を捕食する人類の敵ヴァンパイアを撃退する機関、通称SPWが存在している。その機関に所属する人間はみな、ヴァンパイアに対抗する為の特殊能力『スタンド』を身に付け軍隊のように編隊を組み日々戦いを続けていた。ジョルノは機関の中でも化け物揃いと言われる強力な能力を身につけた者ばかりが集められる特殊部隊に身を置いている。しかも、その部隊の責任者だ。彼の能力自体は攻撃力がさほど高くはないのだが、指揮能力、状況分析といった戦略に優れカリスマ性もあり責任者の地位を任されたのだ。

 そんな彼のお気に入りはこの館で自称成績3位を誇るミスタだ。女好きで女性客しか取らない彼をネコとして唯一接することの出来るジョルノはこうしてちょっとした事で過剰な反応を返してくれるミスタが楽しくて度々ちょっかいを仕掛ける。たった今もすんなりと成功し、とても機嫌が良かった。
 ひとしきり笑いを零したジョルノはすぐ傍に座る人物に目を向ける。すると彼は雰囲気に当てられたのかそわそわとしていた。

「……落ち着きがありませんね」
「!す、すんませっ」

 指摘を入れると少し跳ねるように体をびくつかせて背筋をぴんと伸ばすと姿勢を正した。けれど緊張気味の表情もスラックスを握り込む手の強さも変わらない。
 ジョルノと同じテーブルについている人物はほんの二つ年上の同じ部隊に所属する少年。リーゼントヘアーが特徴的な東方仗助だ。もともと救護班に所属していたのだが、全滅すると言われていた戦いにおいて彼は尋常ではない活躍を見せ誰一人死亡者を出すことなく帰還させた偉業を果たした。その力を救護班においておくのは勿体ないとジョルノが引き抜いてきたのだ。年上であるのだが、部隊の地位から常に敬語を話そうとする彼は使うのが苦手なのか少し砕けた話し方になっている。
 その彼をこの館に連れてきたのはジョルノなりにある考えを持ってのことだった。
 けれど当人には一切話してはおらず、当面は純粋に楽しんでもらおうと思っていた。

「仗助さん」
「は、はいっス」

 本来上司が部下にさん付けで呼ぶのはおかしいのだが、これはジョルノが譲らなかった。仗助が尊敬すべき志と力の持ち主だから呼び捨てはもちろん、タメ口では話せないと断言したのだ。そう言ったわけで呼びかけの際はどうしても違和感がぬぐえない。

「そろそろショーが始まりますが、注意事項があります」
「はぁ、なんスか?」
「今日のステージはこの館のトップであるJOJOが出るのですが、彼を拝む上で厳しいルールがあります」
「ルール?」
「えぇ。真ん中に舞台があるでしょう?」
「はい」

 細い指で指し示された場所を見やると前方の張り出した舞台があった。とんがり帽子にぼんぼりを付けたような円形を型どる場所には鉄の棒が立っている。入った時は何かのオブジェかと思ったが、違ったようだ。

「あそこで彼が踊るわけなのですが、気まぐれに舞台から降りて観客席を回ることがあります。その時、彼には指一本触れてはいけません」
「お触り厳禁スか」
「そう。触りたければチップごしに、ということです」
「……なんか、よく分かんないけど、すげーっスね」
「本当はそれすらも嫌がっていたんですけどね、渋々の承諾というだけあって皆律儀に守っています。ま、破った時が怖いからというのもありますが」
「え、なんスかその物騒な雰囲気」
「まぁ、ルールを守れば存分に楽しめるということですよ」
「はぁ……でも、そんなんでよくトップが務まるもんスね?」
「えぇ、そのあたりの理由は彼を見れば納得出来ますよ」
「ふぅん?」

 肝心なところをぼかされたが、要はルールを守って観覧していれば存分に楽しめますよ、ということだ。端的にまとめて納得した仗助は舞台をじっと見つめた。
 この館に足を踏み入れることになったのは横に座る上司ジョルノの誘いだった。元々興味はなかったのだが、上司直々のお誘いとあって断るに断れなかったのだ。ただ、最初はその柔らかい物腰と雰囲気と、「今晩一緒に出かけませんか?」という誘い文句から夕食を共にするのだと思っていたが……こんな特殊な場所だとは思わなかった。何より懐具合が心配になって仕方がない。当人は全く気にすることはない、というが。そもそも未成年なのに入れるというのも心配の種ではある。
 そんなことをぐるぐる考えているとフロアの照明が少し暗くなった。他の客が興奮からかそわそわする様子から始まる事が分かる。件の『JOJO』が出てくるのか、と舞台袖を凝視していたら、入口が開け放たれて跳ね上がってしまった。慌てて顔の向きを変えると、ボーイだろうか、黒と金の対照的な髪色をした男性を引き連れて歩む姿が見える。鎖や羽根に飾り付けられた軍帽を目深に被り、キラキラと角度によって色が変わる孔雀の刺繍が入った立て襟のロングコートを身に纏うその人物は、よくよく足元を見てみるとヒールを履いていた。結構な高さのあるヒールを履いていながらもふらつく事なく進む足取りに思わず関心してしまう。
 舞台の前まで来た彼は、裾を翻すとボーイの二人の手を踏み台に舞台へと上がっていった。コツリ、という硬質な音に反してその身のこなしは軽く、まるでふわりと宙に浮いたように見え純粋な驚きに包まれる。ぼんやりと見上げている間に、コートの前を大きく開くと音もなく肩から滑り落としてしまった。

「!」

 薄暗いライトであるにも関わらず、輝いているかのような白い肩。無骨なベルトが巻かれていて見えない項から背筋を下りてくるとしっとりとした光を纏う革が腕の付け根辺りから背の中程までを覆い隠している。ひき締まった腰は惜しげもなくその素肌を晒し、ヒップラインは腰に幾重にも重ねて付けられたレースや、柔らかく風に揺れる薄い布によって隠されているが、全身のバランスからして小さくきゅっと引き締まってそうだ。ふわふわと風に舞う布の下に突き出された二本の足も細身でありながら筋肉に覆われ繊細さの中に力強さを持っていた。太ももの中程から黒いレースのストッキングに覆われ、膝の下からは先ほどみた高いヒールのロングブーツが包み込んでいる。彫刻のように完璧な四肢は後ろ姿だけだというのに、完全に心を鷲掴みにし、目が離せない。
 鳴り始めた低く響き渡る曲に合わせてアームカバーに包まれた腕がポールに絡む。腰から垂れる飾りを蹴り飛ばすような足捌きと共にくるりと反転する体。ポールを跨いだ足がゆっくりと開きながら折り曲げられる。縋りつくように腕が回された鉄の棒が黒い衣装を際立たせて、擦りつけるような妖艶な動きを目立たせていた。
 ポールを掴む腕、絡める足、うねる上体。動く度しなやかに形を変える筋肉は無駄なく綺麗にその四肢を覆い、野生の獣を連想させる。足のみでポールにぶら下がり、仰け反る上体が美しく弧を描く。しゃらり、と涼やかなを音を立てる鎖の下で帽子を押さえた手が大きく開かれ、逸らされる顎のラインを釘づけにした。うっすらと開かれている唇となだらかな頬が垣間見える顔は残念なことに瞳が見えない。
 遠いから見えないのかな、と思わず前のめりになっていると、ポールの前に降り立った彼の顔がふ、とあげられる。帽子の鍔と指の隙間から垣間見える碧の宝石。鋭くも美しく煌くその瞳はまさに肉食獣のようだった。

 ごくり、と喉が鳴った。凛々しい容姿に合わされた妖艶な衣装のアンバランスさがますます興奮させてくれる。

 ふらりとポールから離れた体が舞台から下りてくる。観客の間に走るざわめきと興奮による熱。ぴくっと体を跳ねさせた仗助は横に座る上司をちらりと見つめた。すると彼はにっこりと笑って返してくれる。

 これが彼の気まぐれによるサービスタイムです。

 言葉に出さずそう告げられると、再び喉が鳴った。座っている場所とステージまでそれなりに距離があるというのに、こうも当てられてしまっている。そんなオーラを持った彼がすぐ近くまで下りてきているのだ。どう回るかはまさに気まぐれによるものだろうけれど、近くに来たら、と期待に満ち興奮してしまうのは無理もないと思われる。
 あの足先はどこへ向かうのだろう?と視線を走らせていると皆一様にチップを取り出し始めた。するとまるで野良猫に餌をちらつかせるかのように小さく振り出す。その動作にぱちりと瞬いていると、JOJOはゆったりと歩み、舞台から近いテーブルへと舞い寄った。テーブルに手をつくと猫が伸びをするような体勢になる。高く上がる腰で揺れる布が尻尾のようで愛らしく、厭らしい光景に見えた。

「……ぁ」

 その体勢に魅入っていると、テーブルについていた客が仰け反る背に紙幣を乗せてなぞるように移動させて衣装の隙間に挟み込んだ。じっくりと時間をかけたり、あちこちと滑らせてみたりと動きはまちまちだが、全員が挟み終えるとJOJOは手をついた時のようにゆったりと上体を上げて淡く笑みを残すと踵を返した。離れたテーブルから歓喜の声が上がるが彼はすでに次の場所へと移っている。
 また一つジョルノが言っていたことが理解出来た。あれがチップ越しのおさわりというものなのだ。なるほど、ああして体を差し出して間近で愉しませる代わりにお代をもらっているらしい。なんとも型破りで己の魅力を熟知した方法なのだろうか。
 彼がトップに君臨する理由がとてもよく納得できた。

 次に舞い降りたテーブルには腕を、次では足を、また次では軽く乗り上げ座って見せた。本当に気まぐれにふわりふわりと彷徨っては色を残して次へと飛んで行く。寄る場所、寄らない場所もまちまちだ。その気ままさがまた彼の魅力になっている。
 そんな中、JOJOの指先がテーブルの上に盛りつけられたフルーツボールからカットされた苺を掠め取った。そこに座る客に許可を求めるように首を傾げると見つめられた客はコクコクと頷いて返す。すると、ちゅっと投げキッスを残してまたふわりと彷徨い始めた。後に残ったのはうっかり叫びそうな口を必死に押さえる客の姿だ。

「(……ちょっとうらやましいかも)」

 直接の接触はなくてもすぐ傍であんな色っぽい顔を見せてもらえるなら十分に満足できる。
 ほんの一瞬目を逸らしていた内にJOJOは次のテーブルをすでに決めていたらしくまっすぐに向かっている。その先には身を乗り出した令嬢らしき女性がいた。

「JOJOっ、あ、あのっ」

 近づいてくるJOJOに何か言おうとしているのだが、当の彼は冷めた瞳で見降ろしていた。その温度差に背筋がぞくっとする。令嬢の方も何と言葉をかければいいのか分からなくなってきているようで、思わず上げてしまった声音が徐々に小さくなっていった。そんな彼女の前に立つとおもむろに手を伸ばす。

「えッ!?」

 テーブルと彼女の座るソファの背凭れを掴むとずいっと顔を近づけていく。思わず引き気味になってしまう彼女に意を介さずあっという間に顔を重ね合わせてしまった。途端にざわめく場内が客達の息を飲む音で満たされると沈黙が広がっていく。ややあって離れたJOJOの顔には妖艶な笑みが浮かび舌舐め擦りをしていた。さらに令嬢をみやるとその唇に苺が咥えさせられている。さきほど掠めたものを口移しにしたらしい。
 いっぱいに瞳を見開いていた令嬢がずるりと背をすべらせてぱたりと倒れてしまった。彼女と同じテーブルについていた他の女性は奇声に近い黄色い悲鳴を上げている。それとともに場内にはどよめきと羨ましがる声とが賑やかに広がっていった。


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