承太郎が浅い呼気を繰り返してやり過ごそうとする中、ミスタも呼気を荒げつつ嬌声が漏れないようにと必死に食い縛っていた。

「気持ちいいですか?ミスタ」

 帽子を床に落とされ晒された耳に声を吹きかけられぞくぞくと背筋が震える。木の根が絡みついた足からズボンも下着もとっくにはぎ取られ素肌を晒している上、あられもないM字開脚にさせられ細い指がミスタの弱い部分ばかりを撫でてきていた。とろとろと蜜を溢れさせる肉棒は先ほど一度熱を吐き出したのだが、さらに擦り上げられて再び首をもたげている。びくびくと震える両足の付け根、そのさらに奥まった場所にも指が這わされぐちぐちと厭らしい音を立て敏感な内壁を撫でられていた。

「ッんぅう!」
「あちらはもう本番のようですし、僕たちも始めましょうか」
「ッふ、んんぅ!」

 ずるりと抜け出る指の感覚にびくりと背が仰け反る。ざわざわと音を立てて木の根が蠢きジョルノへ差し出すように腰が浮かされた。性急に求めるようにひたりと熱が押し当てられる。すぐにも押し入りそうなソレにミスタは首を振った。今でさえギリギリで声を押さえているのにジョルノが突き入ってきたらもう押さえられそうにない。そうなれば向こう側にもこちらの痴態を晒すことになってしまう。それだけは耐えられないと懇願するように首を振り続けた。

「ぃや、だ……ジョルノ……ッ」
「可愛いですよ、ミスタ」

 こっちは必死だというのに興奮してぎらつく瞳をそのままにうっとりと微笑んでそんなことを言ってくる。どうにか回避しようと腰を捩るが、それはまるで誘っているようにしか見えなくて眩暈がした。違う、違う!と首を振るのだが、擦りつけてくる先端がぬるぬると滑っていることにジョルノも酷く欲情しているのだと思い知らされる。

「ッあ!ぁあ、んっ、ッふ、ぅんっ!」
「ッ!!!」

 ぐっと押しつけられてもうだめだ、と来たる衝撃に耐えるべくぎゅっと瞳を閉じると艶やかな声が聞こえてきた。一瞬躯が強張ったが次の瞬間には頭がかぁ〜っと熱くなる。

「イイ声で啼きますね、彼」
「っ〜〜〜!」

 ジョルノの声が追い打ちを掛けてさらに居た堪れなくなる。あの低音でドスを利かせていた声がこんな甘い声に変わるなんて、どれだけ気持ちいいんだよ、と突っ込みを入れる傍から自分もあんな風にされるのか、と身震いしてしまった。脇腹に這わされた手がするりとニットの下へ潜り込んでくる。ずり上げられたニットから固くなった乳首が露にされ、口付けを落とされると躯がびくりと跳ねた。

「貴方は声をあげてはダメですよ?気付かれちゃいますから」
「だったら、今すぐ解いて止める方がいいと思うぜ?」
「そうですね。だが、断る」
「んぅッ!!」

 にっこりと笑みを向けた次の瞬間、顎を掴みあげられ唇が重なる。更に侵入を果たした舌が撫で上げてくるのへ躯を震わせると、下から突き上げられた。一気に奥まで咥えこまされた菊華がその大きさに脅え、きゅうっと絞め上げてしまう。すると塞いでくる唇がほんの少しだけ離れて熱い呼気を吹きかけてきた。

「あぁ、気持ちいいです、ミスタ」
「ッは……ん、ん……」

 内側から焼きつくようなジョルノの熱に腰の奥が痺れるような感覚が広がる。涙でぼやける目で頬を上気させたジョルノの顔を見つめていると、唇に噛み付かれて腰を揺すり上げられた。皮膚の下から撫でられるようなさざ波に似た快感が繋がった場所から四肢へと広がっていく。気持ち良さにうっとりと瞳を細めて足の間にある腰へと太腿を押し付けると舌へ甘噛みを施されて強く突き上げられた。
 ミスタの嬌声がジョルノの口の中へと飲み込まれている頃、承太郎はがくがくと揺れる視界にクレイジーダイヤモンドを映し押さえられない嬌声に戸惑っていた。

「ぁふっ、ぁ、んっ、ぁあっん!」

 到底自分の声には聞こえない甘い声が喉の奥から溢れて来ている。体内をずりずりと擦り上げる熱に頭がくらくらとして、声を押さえる余裕なんて持てない。それよりも甘く四肢へと広がる快感で可笑しくなりそうだった。

「気持ち、よさそ、っスね」
「んぁ、あ、あぁ、んぅっ、あぅうっ」

 痺れる舌先を差し出すように開いたまま閉じられない口の端から唾液が溢れていく。しがみつくのに必死で拭えないそれを顎に添えられた無骨な指先が優しく擦り取った。けれどすぐまた溢れ出てくるのを今度は拭うことなく、ガラス玉のような瞳でじっと見下ろしてくる。

「ふ、ぁ、あっ」
「えっろい顔してるっスよ、承太郎さん」
「ッ!や、ぁあ!」

 うっとりとした声に顔がかっと熱くなる。咄嗟に逃げようとするが顎を捕える手はびくともしない。それどころか、突き上げが強くなり、背がびくんっと反り返る。ぱつぱつと肉同士がぶつかる音に混ざってぐちゃぐちゃと粘着質な音も聞こえてきた。耳から脳を直接犯されるような錯覚に肌がますます敏感になっていく。内腿ががくがくと痙攣をし始めるとずっと戒められていた前が解放された。

「あっ、あぁあっ」
「イきそうっスか?」
「ん、んっ、イ、くぅっ」

 律動に揺られる肉棒が下腹を叩き溢れ出てくる蜜を散らせている。ぞくっぞくっと背筋を走る快感にもう絶頂が目の前まできていた。なのに叩きつけてきた腰がぴたりと止まってしまう。

「あ、ぁあ、あ……」
「足、辛いっスよね?ちょっと体勢変えますんで」
「んぁっ」

 ぐずぐずと腰が溶けてしまいそうな快感の渦に浸っている躯から肉棒が奥からずるずると抜けていってしまう。思わず引きとめようと引き絞る菊華をこじ開け完全に抜けてしまうと途端に咥えるものを失った場所がひくひくと疼いた。けれど非難する前に躯の向きを変えられると両足が地から離れて宙に浮く。くたりとしていた躯がぴくっと跳ねると目の前にいる少年の顔が見えた。

「……じょ、すけ……」
「承太郎さんのこの格好、めちゃくちゃそそられるっス」

 上気した頬に愛らしさを感じるが、ギラギラとした雄の光を宿した瞳が背筋をぞくりと震えさせる。そっと伸ばされた手が両膝にかかったところで自分があられもない格好を強いられていることに気づいた。後ろから両足を大きく開くように抱きかかえられ、どろどろに濡れたソコを惜しげもなく披露させられている。頬がかっと熱を放つと口が塞がれた。

「んっ、う!」

 口内をぞろりと舐め上げられる。その感覚に震えあがると菊華に再び熱があてがわれ、躊躇なく押し込まれた。

「んッ、ぅあぁぁ!!」

 びくっと反り返る背に重ねた唇が解け、丸めたつま先が宙を掻く。ぴく、ぴく、と余韻に震える躯を見下ろしていた青い瞳がゆるりと細められ律動が再開された。

「(うん、やっぱり正常位の方が燃えますよね)」

 ゴールド・エクスペリエンスでこっそりと様子を窺っていたジョルノが満足そうに笑みを浮かべる。口の中では震える舌が必死に絡みついてきて、腰には震える両足が交差してしがみついてきていた。腰を揺するとびくっと跳ねてさらにぎゅっとしがみ付きにくる躯に支配欲がそそられぞくりと震える。
 震える舌を舐めてそっと唇を離すと、離さないでと言わんばかりに追いすがりにくる。それを人差し指で押し留めると、目元に朱を散らした黒い瞳が不服そうな視線を投げかけてきた。それへふわりと笑みを向けて目の前の痴態を堪能する。
 潤んだ黒い瞳に上気した紅い頬、しっとりと汗を含んだ黒髪が額に張り付いている。荒く息つく唇が震えて中に潜む舌がちらちらと見え隠れしていた。めくり上げられたニットの下には忙しなく上下する胸。ぷくりと熟した乳首が厭らしく色づいている。大きく割り開かれた足の間では濡れそぼった肉棒が時折ぴくりと震え、その奥では口いっぱいに己の欲望を咥えこむ菊華が物欲しげにひくついていた。

「ミスタ、とてもイイ眺めです」
「そう、かよ……」

 呆れたように、でも恥じ入るように呟かれた声にますます笑みが深くなる。背後から突き上げる光景は嗜虐心が大いに擽られるのだが、こうして正常位で乱れた様を思う存分堪能する方が愉しい。酷く突き上げて啼き狂う様を見るもよし、緩く突き上げて散々焦らし身悶えさせるも良し。相手の反応を見て好きに出来るのが何より支配欲を満たされてこちらも気持ちいいのだ。
 しかし……

「でも、ミスタのああいう声を聞けないのが惜しいですね」
「うっせーよ」

 曲がり角の向こうから聞こえる感じ入った声が羨ましいと言えば彼はしかめっ面を向けてきた。けれど赤く染まった頬と潤んだ瞳では可愛いことこの上ない。むらっと煽られた欲情はそのまま彼の中に埋めた自身へと直結し、大きさを増してしまった。その変化にぎょっとしたミスタがなんとも言えない表情で見つめてくる。

「僕もあなたの可愛い声が聞きたいです」
「……で?」
「一回ここでイってから別の場所で第2ラウンドといきましょう」
「ッ!!」

 一回で十分だ!という叫びは虚しくもジョルノの口の中に消えていった。

 * * * * *

「あー……えらい目にあった……」

 ようやくジョルノから解放されたミスタはたばこを吸おうと喫煙スペースに来ていた。重だるい腰に僅かな時間でも立ち続けるのは辛いので灰皿の近くにしゃがみ込む。箱から取り出した一本に火を点けて深く吸い込んだ。そうしてゆっくり吐き出して味わうとようやく人心地つけた気になる。

「!」
「……」

 聞こえた靴音に振りかえると承太郎がこちらに向かって歩いて来ている。喫煙しにきたのだろう。ミスタの姿を見つけて一瞬歩みを緩めたが、そのまま近くまで寄ると壁に背を預けて立った。彼も腰がだるいんだな、と心の中で同情していると、懐から煙草を取り出して咥える。そうしてライターを取り出すのだろうと思ったが、あちこち叩いて探ってとしている仕草から見つからないのだと気付いた。

「どぞ」
「!」

 そんな彼に自分のライターを向けると一瞬驚き、バツの悪そうな表情を浮かべたが、「わりぃ」と小さく呟いて屈んできた。火をつけると伏し目がちになった顔を近づけてくる。

「(うん、色っぽいな)」

 煙草に火がつくその僅かな時間ではあるが、色気のある表情を楽しむことが出来た。なるほど、この顔を見れば蹂躙したくなるのも分からなくはない。と一人納得していると、承太郎は再び立ち上がらずにその場に座り込んでしまった。そのまま何も会話することもなく煙を燻らせ、穏やかに時間が過ぎるのに任せる。そろそろ一本吸い終わるな、と思った時、賑やかな足音が廊下を響いてきた。

「うん?」
「……騒がしい奴」

 首を傾げながら足音のする方を覗き込んでいたミスタの横から呆れた声が聞こえてきた。その言葉から察するにあの忠犬よろしくついて回る仗助だと分かる。立ち上がり様に煙草を灰皿に押し付けると、彼はじっとこちらを見下ろしてきた。

「…………え??」

 じぃっと見つめてくる瞳に引き攣る口元に笑みを浮かべて首を傾げると、ふっと淡く笑われた。

「隠し事の出来ないタイプだな」
「へ?」
「あんなとこでおっ始めたこっちが悪ぃんだから咎めはしねぇが、今度はそっちの声も聞かせてくれよ」
「ッ!!!」
「それでフェアになんだろ?」

 にっと人の悪い笑みを残し、上着の裾を翻して歩き去って行くその背中を唖然と見上げていたミスタは徐々に顔を赤く染めていった。気付かれていたショックととんでもない注文とで頭がパニックだ。

「(じょ、ジョルノ〜!!!)」

 その場にぽつりと残されたのは自分が先に踏み込んでしまったことを棚にあげ、ここにはいない少年への怒りに震えるミスタだった。

 その頃、二組が睦み合っていた場所にある小部屋から一人の青年が出てきた。静かな場所で昼寝を決め込んでいたのだが、ふと目が覚めると腰に響くやり取りが二方向から聞こえてくる。出るに出られなかった彼はその場で蹲り高ぶる自身を己の手で慰めていたのだが……現在非常に満たされない心地の中、部屋から出てきている。

「お、こんなとこにいたのか、ジョジョ」

 そんな哀れな青年に柔らかな金髪を揺らして近づく青年はシーザーだ。部屋から出てきたばかりでドアノブを握ったままの捜し人ジョジョ、もといジョセフの様子がおかしいことに気づき首を傾げる。

「おい、どうした?ジョジョ」
「……シーザーちゃん」
「うん?なんだ?何かあったのか?」
「俺もしたい!」
「は?何をだ?」

 がばっと上げられた顔にシーザーは一抹の不安を覚えた。どうか思いすごしでありますように、と小さく祈りながら律儀に聞き返す。

「何ってもちろんセッ」
「シャボンランチャー!!!」
「いやぁ!ひどいよ、シーザーちゃぁん!!」

 最後まで言わせずに技を叩きこむが、予測していたのだろうジョセフは軽々と避けてしまう。心配して損した、とばかりに鼻を鳴らして踵を返してしまったシーザーにジョセフが追いすがった。その地味な攻防は長々と続き、他の出場者もいる控え室にまで及んで、鬱陶しいと再びシャボンランチャーが叩きこまれるまで続いたという。



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