あれから、イルカに取り憑いている親バカ共の駆逐を試みたが、意外とてこずり未だに完全には排除できていない。 特に親バカの親玉との付き合いが一番面倒で、多少苦労しているかもしれない。 今日もこれから三代目に会うことになっているのだが、おそらくまたひと悶着あるだろう。 …そう思いながら、執務室の扉を開けると、三代目が側に仕えるエビスの差し出した、どんよりとした緑色というか茶色というか、 妙に澱んだ色をしているえらくまずそうな薬湯を一気飲みしていた。 手早く用事を済ませて、イルカの元に帰りたかったカカシは、三代目に話しかけようとした。 「三代目、に…」 「ワシは許さんぞ。」 用件を言う前に、今さっき飲んだ薬湯のように、妙に緑色がかった顔色の三代目が、焦点のあっていない瞳で静かに言った。 「ですから、任…」 「許さん!!!許さんッたら許さんぞッ!!!!!」 「任務を…」 「絶対にじゃ!!!!!」 三代目は全く聞く耳を持たない。コレで何度目になるだろうか。今日もそろそろ…。 「カカシ君!困りますぞ!!!」 三代目がこんな状態になってから、イルカ先生の変わりに三代目の管理をしているエビスが、黒めがねを神経質そうに持ち上げながら怒り出した。 …こっちも困っているんだが…。 イルカをこの親バカに近づけないように、イルカが近づくと病状が悪化すると本人に説明してあるので、めったなことは無いと思うが、 いい加減面倒に思っているのだ。 「うおおおおお!!!!!イルカー!!!!!!うっ。」 三代目がカッと目を見開いて叫んだ後、急に胸を押さえて倒れこんだ。 「わあ!発作!また発作ですぞ!!!」 「あ、お忙しそうなんで、また今度で…。」 面倒になったので、さっさと放り出してきた。親バカに同情の余地は無い。後が多少めんどくさいが…まあ、最近はいつもこんなかんじなので、 そんなに問題ないか。 ***** せっかく上忍待機所に避難してきたというのに、先ほどから、ガイが執拗にイルカとの生活について聞いてくる。ウザイが悪い奴ではないので、 もったいないが少しだけ話してやることにした。幸せのおすそ分けという奴だ。いかにも妖精らしくていいかもしれない。 「最近、料理を覚えた。」 「そうか!!!青春だな!!!!!」 相変わらずそれ以外の単語を知らないのだろうか…。まあいい。一応最後まで話してやることにする。 「イルカはさ、食べ物食べてるとき、すっごく幸せそうなんだよね、で、甘いもん好きなんだよ。ケーキとかあと和菓子も。」 「そうか!!!!青春だな!!!!!」 ガイいわく青春の汗であるらしい、滂沱の涙を流しながら、意味も無く勢い良くこぶしを突き上げている。勿論、暑苦しいポージングもセットだ。 「もうね、かわいいんだよねえ。…最初はさあ、色々買ってきてたんだけど、自分で作ったら、凄くよろこんで。だから、最近は全部自作かな。」 「そうかそうか!!!!!青春だな!!!!!!アツいぞ!さっすがマイライヴァル!!!!」 「やっぱ、何か食ってるときが最強にかわいいよね。なんつーか。…やりたおしたくなるくらい?」 「さっすがわがライバル!!!熱いな!!!!!!」 ひょっとして親バカがここにも…。と危惧したが、この様子では大丈夫そうだ。…イルカについて語るのは思ったより楽しいことを知った。 今度コイツが勝負とか言い出したら、イルカのことを語りまくってやることにした。 カカシがガイ対策について考えをめぐらしていると、アスマが父親そっくりの顔色をして、ブツブツ言いだした。 「イルカー…帰ってこーい。こんなやつにー…。こんなやつなんかにー!!!」 流石にうるさいし、こいつは以前イルカを強引に連れて行こうとしたこともある。…少し理解力の向上を図ってやろうかと、左手にチャクラをこめ始めたが。 「うるっさいわね!!!!」 「ぐふっ!!!」 また、ウワバミの教育的指導をしっかり腹に受けていたので、任せておくことにする。今やコイツは有能な親バカクラッシャーだ。文字通り砕けていないか、 時々疑いたくなるほど勢い良くこぶしやヒールをかましているので、頼もしいことこの上ない。 さっそくウワバミによるクマの調教の様子を観察しようとしていると、ウワバミがクマにコトバによる教育を施し始めたようだ。 …所詮クマだし、効果があるだろうか。 「イルカちゃんが幸せそうなんだから、邪魔すんじゃないわよ。…いくらあんたでも…」 紅が天女といわれるのが分かるほど、美しい微笑みを浮かべている。…それに反してチャクラは恐ろしいほど張り詰めているのだが。 「なんだよ…。うう。いてぇ。」 クマが身の程知らずに口答えした。紅の瞳がすぅっと細くなった。 「こ・ろ・す・わ・よ。」 楽しそうな口調とその内容が、全く一致していない。さすがに上忍待機所の全員(カカシ以外)が、ごくっと息を飲み込んだ。 待機所の空気が凍りつく、そこに… 「カカシさん!!!」 簡単にそれまでの雰囲気を払拭する、明るい声が響いた。 「あら、イルカちゃん。」 紅も先ほどのことなど何もなかったかの様な笑顔で、イルカに答えている。無駄にいい笑顔なのが腹立たしい。 「お、おお。イルカ!」 アスマも抜けそうな腰をさりげなく庇いながら、何食わぬ顔でイルカに話しかけている。腹のダメージはまだ残っているようだ。 しっかり押さえたままでいる。 「イルカじゃないか!」 ガイの奴もいつもの様に無駄に激しいポーズをとりながら、イルカに向かって挨拶している。 イルカにかまう人間が多いのは、やはり面白くない。こうなったら、イルカが他に視線を向けないようにしなくては。カカシも早速イルカに呼びかけた。 「イルカ…。」 妖精=カカシということがイルカの頭の中で固定されて以来、カカシがイルカ先生と呼ぶと泣き出しそうなくらい、悲しそうな顔をするようになったので、 最近はずっとイルカと呼んでいる。そして、イルカはカカシに名前を呼ばれるのに弱い。今日も…。 「カカシ、さん。」 真っ赤な顔をしながら、カカシだけを見つめている。潤んだ瞳は零れ落ちそうだし、赤く染まった頬も食べてしまいたくなる。 「見詰め合うな!100m以内に近づくな!!!イルカが穢れるー!!!!!」 カカシには大満足の仕上がりでも、親バカには耐えられなかったようだ。血走った目で止めようとしてきた。だが、 「だからうるっさいっていってんでしょ!!!」 「うげふ!!!!!」 再度紅の手により沈黙を余儀なくされたようだ。さすが上忍というべきか、先ほどと寸分違わぬ場所に決めている。紅らしい正確かつ非情な一撃だった。 イルカは完全にカカシのことだけを見ているので、全く問題ない。イルカはどうやら家に帰るために、迎えに来てくれたようだ。 いつものように手をつないで帰ることにする。 コレは親バカホイホイに最適で、今までに不審な行動を取った輩の確認や排除に、多くの成果を挙げている。 しかも、イルカが可愛い顔を見せてくれるので、一石二鳥だ。 ***** 勝手知ったるイルカの家に越してきてから、1週間がたつ。カカシはあれからすぐに、何食わぬ顔で私物を持ち込んで住み着いたが、 イルカは何の疑問も持っていないようだ。 それをいいことに、カカシはまず、自宅からウッキー君を連れてきてさぼきち?だったかの隣に置いた。クマのぬいぐるみも、もう一つ新しいものを 購入し、イルカ宅の先住民の隣に置くようにした。カカシ以外のものにかまうのは不愉快だが、自分の買ったものと一緒なら少しはましかと思ったからだ。 しかし、イルカが思いの他喜んで、それこそ飛び回らんばかりだったので、コレは大成功だった。イルカは新しい住人に、さっそく名前を付けていた。 …コレの名前も忘れてしまったが、本人が幸せそうなので、まあ、いいだろう。 カカシは、時々忍犬の様子を一緒に見に行く以外は、自宅には帰っていない。いずれは新しい家を買って、忍犬たちと暮らしたいイルカとも話している。 今日もささっと作った食事を食卓に並べ一緒に食事を始める。今日のメニューはイルカの好きな甘口カレーで、夏野菜をたっぷり入れてみた。 勿論、サラダとデザートも用意してある。 「はい。あーん」 「はーい。むぐっ。んんーうまいです!!!」 コレは最近のお気に入りだ。何を食べても、いつもイルカが口から食べ物をこぼすので、もう直接食べさせた方がいいと判断し、実行したのだが、 イルカがキラキラと瞳を輝かせて口を開ける様子や、口に入れた瞬間パァッと笑顔になって喜んでいるのをつぶさに観察できるので、もはやコレが 習慣化している。 「カカシさんもはい。あーん。」 「ん。…うん。まあまあかな?」 イルカは常に自分だけがやってもらうのを嫌がるので、勿論カカシにも食べさせてくれる。カカシは別に食べ物をこぼすことなどないので、 全く必要ないのだが、イルカが嬉しそうに食べさせてくれるので、これも習慣になった。 …まあ、カカシは、食べさせられるより、食べさせる方が好きなので、時々ごまかして回数を多くしているが。 「カカシさんのご飯はいつも美味しいです!!!明日は俺が頑張りますね!!!」 「明日、楽しみだな。」 炊事や、洗濯などの家事も折半だ。…イルカの方が料理の腕はいいので、やや多いが、菓子はカカシ担当にして、バランスを取っている。 カカシが当番の時に、イルカがじっとこちらを見ているのを見ているのも楽しいし、イルカが当番の時は、一生懸命に働いている様子を観察・ 堪能できるので、どちらも楽しい。 「はい。今度はサラダ!」 イルカはこちらが不穏な笑みを浮かべているのにも気づかず、せっせとサラダを食べさせようとしてくる。 「ああ、まって、今度は俺でしょ。はい、あーん。」 「あーん。…うん。サラダも美味いです!!!このドレッシングいいですね!!!」 「どんどん食べてねー。」 「カカシさんも!はい!」 こんな風にして、食事を楽しんだ後、今度はデザートをイルカに与えて楽しむ。カカシは甘いものが苦手なので、今度はイルカだけ食べさせることになるが、 …その分は別のところで返してもらっているので問題ない。むしろ最近はその性格を利用して、積極的に貸しを作っておくことにしている。 「むぐ。えへへ。おいしー。…でも、こんなにご飯がおいしいと、俺食べすぎちゃいそうです。…太っちゃいますかね…。」 不安そうな顔で腹をつまみながらイルカが言うので、早速フォローしてやる。イルカがそんな顔をするのは、ベッドの中だけであるべきだ。 「だいじょぶでしょ。いっつも一緒に夜、運動してるじゃない。たくさん。」 きっちりフォローしたつもりだったが、イルカは真っ赤になって固まってしまった。相変わらずこういうことには免疫が無い。 …その分抵抗も下手なので、カカシが何をしても、まごついている間にサクサクことを進められてしまう。その結果、この1週間の間に、 すでにけっこうなことを仕込んでしまった自覚があるのだが、そんな事位ではイルカは変わったりしないようだ。 イルカによって勝手に妖精認定されたカカシだが、認定したイルカの方がカカシなどより、よっぽど純粋だ。これからも忍びとしては稀有な存在である イルカを堪能するために、カカシは全力でイルカを守っていくと決めている。そのために、鍛錬にも付き合い、こっそり忍服に式なども仕込んである。 「じゃ、風呂入ってきてね。」 腹がこなれるまで放って置いてみたが、固まったままなので、そのままイルカを持ち上げて、風呂に持っていった。 イルカは長湯なので、カカシが食器を洗ってから一緒に入ると丁度いいのだ。 今日は正気に帰るまで時間がかかりそうなので、心持ちゆっくり食器を洗った。 食器を洗ってから、風呂場に行くと、イルカはやはり固まったままだった。 …イルカの半開きの口が無防備で可愛らしかったので、そっと口付けてみた。 「は!え?うわ!!!」 「あ、気がついた?はい、じゃ、コレで歯、磨いてね。」 イルカが一瞬で正気に戻り、更に真っ赤になった。すかさずイルカに歯ブラシを渡して歯を磨かせた。とっさのことで、イルカもおとなしく歯を磨いている。 その間に自分はさっさと磨き終えると、イルカが磨き終わったのを確認して、今日はそのまま一緒に風呂に入った。 今日は、イルカにカカシの体を洗ってもらうことになっているのだ。…イルカは、コトが終わった後、大体動けなくなってしまうので、いつも カカシが洗ってやっていることが多いのだが、イルカがどうしてもそれを返したいと固持するので、昨日約束したのだ。 「じゃあ、そこに座ってください。」 「はい。」 イルカが恐る恐るといった感じで、石鹸をつけたタオルでカカシを洗い始めた。最初はおとなしく洗ってもらっていたのだ。 イルカはカカシを丁寧にあらってくれている…だが、気持ちいいというより、イルカの手つきに興奮し始めてしまった己をカカシは感じた。 おずおずとした様子や、一生懸命なあまりもれる息などにも煽られ、もはやイルカをどうやって頂くかにばかり思考が占められる。しばらくカカシは耐えた。 が、…イルカが背中を洗い終わったとき、カカシはさっさと作戦を実行に移すことにした。 「ね、イルカ先生。もういいから、風呂入りたいな。」 「え、でも。まだ…。」 「ん。じゃ、一緒に洗うから。」 そういって、戸惑うイルカをさっさと洗ってしまった。何しろこなしている回数が違う。イルカが抵抗する隙さえ与えず、頭まできれいに洗い上げた。 勿論己もしっかり洗った。 「じゃ、もういいよね。」 「え、わあ!」 イルカを抱きこんでさっさと湯船につかる。イルカは驚いて足をバタつかせたが、いつもはぐったりしているので、生きのいいイルカは新鮮な感じがして、 返って興奮した。 「カカシさんのこと、洗うつもりだったのに…!」 イルカが頬を膨らませて怒っている、様だ。…あまりにも迫力が無く、むしろ小動物のようなので、頬をつついて遊びたくなるが、ぐっとこらえる。 今回の目的は他のところにあるのだ。 「あのね。こうやって一緒にゆっくり入ってみたかったんだよね。」 そういいながら、イルカを後ろから抱きこむ。 「う。…じゃあ、その、しょうがないです…。でも!今度は絶対洗いますから!!!」 イルカもひとしきり自分の主張を言った後は、カカシとの入浴を楽しむことにしたらしく、そっとカカシに寄りかかってきた。安心しきった様子だ。 …そろそろイルカに己の危険物が触れそうだが、こうなったらもう逃がさない。するっと手をイルカの胸に滑らせた。 「あっ。」 イルカがびくっと身を震わせた。反応は良好だ。もちろんイルカはいつも敏感だが、元気な内に風呂で楽しんだことはまだなかったのだ。 今日はしっかり堪能すると決めている。 「ね、イルカ。イイ?」 カカシの休みなく動き回る手に煽られ、イルカ自身はもうしっかり立ち上がっている。断れないのを知りつつ、イルカがカカシを欲しがる様子が見たくて、 カカシはわざとイルカを煽った。 「ん、ん。も。カカシさ。うあっ。」 イルカはもはや喘ぐことしかできないでいる。脚も小刻みに振るえていて、もう限界が近いのが分かる。 「ん、わかった。じゃ。…きもちよくなろーね。」 イルカがカカシを求める様に満足したので、その後、しっかりイルカを気持ちよくして、自分もイルカをたっぷり堪能した。 ***** ぬいぐるみ専用の棚を新設したので、広くなったベッドにイルカを寝かせる。湯はぬるめになっていたが、長くつかりすぎたのか、 いつも長湯のイルカもすこしのぼせてしまったようだ。 「イルカ。水。」 「ん。」 口移しで力の抜けてしまったイルカに水を飲ませる。無理をさせてしまったようなので、今日はあきらめてゆっくり寝かせることにした。 イルカの隣に滑り込み、そっと背中をなでてやる。いつもの様にカカシにしがみついていたイルカは、それに気づくと、すりすりとカカシに身を摺り寄せてきた。 「こんどは、ぜったい、おれが…。」 …まだ気にしているらしい。…まあ、またこうやって楽しむイイ機会になるので、しばらくはじらしてみようかと、黒いことを考える。 「また今度、ね。」 イルカを納得させるようにそっと耳元で囁いて、唇を落とす。イルカは眠そうな瞳をしながら、とても嬉しそうにカカシに微笑み、しがみついたまますぅっ と寝入ってしまった。 温かいイルカを抱きしめて、幸せをかみ締める。 明日は何をしてやろうか。菓子を作ってやるのもいいし、今度の休みにはどこかに遊びに連れて行ってやろう。確か、ゆうえんち?とかいう所に行きたがっていたし。 それから…。 イルカとの楽しい予定を思い描きながら、今日もカカシは幸せな夢を見るのだった。 ********************************************************************************* 戻る nao様ー!!!ありがとうございましたー!!!編集も大感謝です!!!! ←自分でちゃんとチェックしろと小一時間…。 |