最初はアカデミー生か何かの悪戯かと思っていた。しかしそれが三日たっても、
一週間たっても続けられるに至り、さすがに少しおかしいのではないかと思い始めた。 毎日毎日、寝室の窓の外に置かれ続ける様々な物。最初はこぶし大の石だった。 二日目は花(見たことの無いものが窓辺いっぱい)、3日目は小箱に入った菓子、 それ以降も極彩色の鳥の羽などが毎日窓辺に物が置かれ続けた。 それらのものたちは、他愛のない物ばかりに思えたので、アカデミー生か、 いつもいろいろとしでかしてくれる、とある元生徒がそのお詫びのつもりでおいて いっているものなのだろうと思っていた。 かわいらしい贈り物は、テスト続きで疲れていたイルカを癒してくれた。まぁ草が山盛り置いて あったときは片付けるのが大変で、ついつい現生の方がいいなとつぶやきはしたが概ね楽しんでいた。 少しの得体の知れなさを感じつつ――。 しかし1週間目の今日、毎朝の日課になった窓辺の贈り物チェックは、いつもとは違っていた。 その日、いつものようにまた置かれているものを確認すると、そこにあったのは変わった模様の風呂敷に 包まれたやたらと重く、硬い物だった。また石か何かだろうか?と思いながら、少しわくわくしながら そっと風呂敷を開くと燦然と輝く金の延べ棒(×5本)だった。 「いやいやいや見間違えとか俺寝ぼけてるとか…。」 一瞬、全力で現実逃避しようとしたが、手の中の重みがなくなるわけもなく…。 いつもは顔を洗っても朝食を食べても目蓋からはがれない眠気が、ウソのように吹き飛んだ。 平凡な中忍(しかももっさい←自分で言ってて凹む…)である自分をしっかりきっちり認識しており、 そんな自分がこんなものを送られるなどおこりえないからだ。 「うぅえあお???」 混乱しながらも俺はは今までのことを思い返していた。 今までも疑問を持たなかったわけではなかった。少しは何かおかしいと思いはじめてはいたのだ。 なにしろアカデミーでそれとなく聞いてみても該当者らしき生徒が浮かんでこない。 一番怪しいと思っていたいたずら小僧に至っては、一昨日の晩に腐った牛乳で腹を壊して 寝込んでおり、自分の部屋を訪れることは不可能。完全に容疑者から外れた。(ちなみに 見舞いにいってしっかり説教した。…もう何回目の説教かは忘れたが。) 他にこんなことをしそうな生徒は思い浮かばない。いたずら好きな生徒ばかり受け持っているが、 わざわざ綺麗なものを自分にくれるのなら、自慢もかねて直接渡しそうだ。 まあ子供は突拍子もないことをするものだ。以前も恋がかなうとかいうおまじないがはやり、大騒ぎになったことがあった。 効果の程の怪しいまじないに、生徒たちは必死になり、おまじないに使う髪の毛を手に入れるために、 気配を消して髪の毛をむしる生徒が続出して、大変だった。 ターゲットの隙をつく様はある意味忍らしかったし、習い始めたばかりの術を駆使して、さらに新たな手を考えるために 授業にもある意味身が入っていたが、結局低学年の生徒が加減を忘れ、怪我をしたので、全面的に禁止令を出すことになった。 …忍の技を私情に使うのはやはり問題だ。被害者はとある顔の整った優秀な生徒に集中していたので、意外に被害は少なかったのだが…。 またそんな類のものだろうからと思い込もうとしてはいたが、それにしてはしっくりこないものを感じていた。 一番不可解に思ったのは、一応中忍の自分が、いくら寝ているとはいえ、ベッド脇の窓に来たアカデミー生の気配に 気付かない等ということがあるだろうかという点だった。 鍛錬を欠かしていないとはいえ、内勤が長い自分は確かに鈍っているだろう。特にテスト週間で残業が多く、 最近体重が増え、腹筋も緩んでいるような気がする。しかしいくらなんでもアカデミー生に気付かない のはおかしいのではないか。もしかして卒業生の誰かだろうか?だとしたら理由は?などとなやんではみた。 みたのだが、置かれているものからして、実害も無く、それほど深刻さを感じなかった。考えるのが面倒になったともいえる。 …つまり不安に思いながらも日々の雑務に追われ放置してしまっていた。 「人違いか???いやむしろ任務依頼のつもりとか?いやいやうちは受け付けじゃねぇし。いくら受け付け嬢とか呼ばれてても 間違えないよなぁ。家知らないだろうし。しっかしすげぇなぁ…これ一個で一楽スペシャル何杯食えんのかなぁ…。――じゃなくて!!! どう考えても犯罪とか犯罪とか犯罪とか!!!三代目に相談?!」 最初は驚きすぎてぐるぐると考えてしまったが、ここへきてやっと、明らかにアカデミー生の犯行ではないこと。つまり明らかにおかしい ということに気づいた。 取り乱し、冷静な判断力を失ったイルカは、あわてて忍服に着替え、 顔を洗うのもそこそこに、すぐさま火影邸へと向かったのだった。 ********************************************************************************* ぐだぐだです。 次 |