変態と精神修行

一年の計は元旦にあり。…しかし今年の俺は、よりによってその大事な日に大敗を期してしまった…。
変態に隙をみせたこと、ついついほだされてしまったこと…そしてなにより、流されてあんなことを…!!!
己の不甲斐なさを情けなく思いながら今後について思い悩んでいるというのに…。
…変態に素肌ベストをせがまれた。
変態を引き連れて帰宅するなり、いつも通り俺のケツに張り付いてまさぐりながら最高の感触だのかぐわしいだのなんだのと 世迷い事吐き出している変態を蹴り飛ばし、ベストを脱いだときのことだった。
「ベストレスなイルカ先生もステキですけどぉ…素肌にベストをまとったら、イルカ先生のそのすさまじい色気が更に 引き立つというか…新たな魅力になると思うんです!さあ今すぐ!」
変態はその無駄にキレイな瞳を邪な欲望でキラキラと輝かせながら下らない野望を口にした。その間も、 蹴り飛ばしたはずなのに、すぐさま俺の足にぬるぬるとまとわりつき、しつこく匂いをかいだり、勝手に揉んだりしてきて 非常に不愉快だ。
当然、速攻却下してやることにしたのだが…。
「…そんな変態くさい恰好は断る。それに寒いだろ!」
何せうちは安普請のアパートだ。隙間風も入るし暖房器具といったら、ほとんど使っていない備え付けの古いエアコンと、 時々火がつかなくなったストーブのみ。真冬には部屋の中でも息が白くなるくらいだ。
なにより…なんでそんな妙な格好をしなきゃいけないんだ!!!元々防御のために身につけてるモノをわざわざ素肌に 身につける意味が分からん!…裸よりはマシかもしれんが、そんなマニアックな格好は断固拒否だ!
変態の主張を冷たく一蹴して、これで話は終わったとばかりに俺が風呂に入る準備をしようとしていると …足元に這い蹲った変態が泣きそうな声で食い下がってきた。
「暖房たくさん入れますから!!!それに俺がくっ付いて人肌で暖めるて…何より激しく運動…!」
「いらん!!!それに金かかるだろうが!!!」
以前風邪を引いてやむなく暖房…つまり備え付けのエアコンも一緒に使ったことがあったんだが…。金額がしゃれに ならなかった。しかもたまたま周りに結婚だのなんだのがあって出費がかさんでしまい、一週間米と味噌だけで生活したのだ。
…あんな思いは二度としたくない。食事だけは変態がどこからともなく用意するから、一応は何とかなるかもしれないが流石に それは気分が悪い。
俺が変態に養われてるみたいじゃないか!
その想像に背筋が総毛だった。今でも不本意すぎることに嫁…などという意味の分からないものにさせられているらしいのに、 これ以上変態に侵食されるわけには行かない…!!!
俺がどうにかしてこの現状を打破しなければと考えたときだった。
にっこりと…それはもう輝くような笑顔の変態が、甘える様に俺の足に舌を滑らせてきたのだ!
「うぎゃあ!」
静かな室内に俺の悲鳴が響きわたる中、変態はサラッととんでもない事を口にした。
「大丈夫ですよー!俺が払ってますから!えへへ!…それにしても相変わらずおいし…」
「そんなばかな!」
確かに…食費はコイツ持ちというか、勝手に用意されるから、精々一楽での外食くらいしか払っていないが…。コイツは今 変な事を言ったはずだ。
「俺の奥さんに苦労はかけません!光熱費にぃー!お家賃にぃー!それに!生活費は全部俺がも…」
得意満面に恐ろしい事実を並べ立てる変態を他所に、俺はすぐさま通帳片手に家を飛び出し、残高照会に駆け込んだ。
普段ならがしゃんがしゃんと音を立てて印字されている時間に、恐怖を感じたものだが、今は別の意味での恐怖が俺の全身を 支配している。
…普段ならもっと長時間かかるはずの記帳は一瞬にして終わった。
恐る恐る出てきた通帳を開くとソコには…俺の給与の振込みしか記されていなかったからだ。
「ほ、ほんとだ!引き落とされてない…!いつのまに!?」
本来ならもろもろの生活費…電気代にガス代に火の国国営テレビ受信料などの雑多な引き落としがされているはずなのに…!
履歴の詳細をみると…変態とああなってから全く光熱費などが引き出されていないということがわかった。
最近食費がかからないから金もそれほど使わない分、記帳してなかったから気付かなかった…!…知らぬまに駄犬に 養われていたなんて…!
足ががくがくと振るえ、冷や汗が背中を伝った。
「ね!大丈夫だったでしょ?ささ…うちに帰って素肌ベストに…」
背中に張り付いて股間を揉む変態のことよりも…俺の脳内は自分の情けない現状のことで一杯になった。
「…修業だ。」
そうだ、このままでは…恐ろしいことに俺は変態のヒモと変わらないのだ!迷惑料として受け取ってやっていると 考えることもできるが…事実としては強制的に支払われた分を己の身体で返しているのと変わらない。
このままじゃ…俺は駄目になる…!
「え?」
きょとんとした顔をしながら、しつこく俺のうなじに舌を滑らせていた変態を振り払い、俺はすぐさま駆け出した。
「修業しかない!」
*****
自分としてはかなりの金額になった通帳片手に、俺はすぐさま三代目の所に駆け込んだ。
「修業に行きたいんです!」
執務室にあるまじき大声で叫んでしまったが、三代目はそれにも驚かず、慈愛に満ちた視線を向け、優しく笑ってくれた。
「そうか…仕事のコトはワシがなんとかしよう。幸い今お主は担任を持っておらぬし、冬休みじゃのう。…3日間時間をやる。 存分に励んでくるがよいぞ!」
「三代目…!ありがとうございます!」
思ったよりすんなり許可おりた。
ソレをイイ事に、俺は早速執務室を飛び出した。…三代目が自分の様子をみて納得してくれたことに感動しながら…。
その後すぐ、変態が飛び込んできたことなど、思い浮かびもしなかった。

「そろそろかのう…。」
「三代目ぇ!俺の…っ色気たっぷり魔性の…イルカ先生は!?」
「落ち着けカカシ。イルカなら修行に旅立ったぞ?」
「ええ!?追いかけないと…!イルカ先生のことは俺が守るから修行なんていらないのに…!」
「…お主に負担をかけたくないのじゃろうて。イルカの性格なら早晩言い出すじゃろうと思っておったが…」
「そんな…!イルカせんせーっ!」
「待てい!…今後、お主とともに戦うときが来ても存分に助けられるようにというイルカの思いやりがわからぬのか!?」
「ええぇええぇぇ!?…そんな…イルカ先生ったら…!!!うふふふふふふ…!!!」
「未来の火影の伴侶としてあっぱれな心がけじゃ!」
「そこまで考えていてくれたなんて…!イルカ先生…っ!やっぱり今すぐ…!」
「まてぃ!イルカの心意気を無にする気か!?」
「…見守りたいんです!俺のために努力してくれるイルカ先生のためにも…!」
「お主らは思いあう良い番じゃのう…!あい分かった!行くが良い!但し…3日だけじゃぞ?」
「はい!…今すぐ行きます!!!俺の永遠の伴侶っ!!!一人にはしません!!!」
「やれやれ…。」
*****
自分史上最高速度で走りぬけたせいか、今のところ変態はついてきていないようだ。ソレもいつまで持つか分からないが…。
あれから一応一旦家に立ち寄ってすばやく装備を整えた後、俺はすぐさまとある場所へ向かった。
木の葉の里の中ではあるが、めったに人が来ることの無いその場所は、俺が幼い頃から修行に使ってきた。 大きな滝と、岩に囲まれていて狭く、俺の様に水遁を得意とする忍びには便利な所だ。
最近変態にかまけてサボっていた分と、精神的な混乱を収めるべく、俺はさっそく修行を始めることにした。
「とりあえず…精神を落ち着けないとだな…。」
俺はまず、上半身の服を脱ぎ、適当に張った結界の中に荷物とともに突っ込んで身軽になった。そして…。
「よしっ!」
チャクラをこめて思いっきり川の中に飛び込んだ。そのまま滝つぼの下のちょうどいいところにある岩に登る。 その上に座って瞳を閉じ、流れ落ちる水を受けることで、己の中にある雑念と向き合うのだ。昔から悩んだときには ココで自分の考えに向き合ってきた。戦忍をやめて教職につこうと思ったときも…ココで答えを出したのだ。
久しぶりに浴びる滝の水は冷たくて、しばらく浴びていると手がしびれてきた。だんだんと染み渡る水の冷たさと澄んだ空気に 精神が研ぎ澄まされていく。それでももうしばらくは滝うちの業を続けるつもりだった。なにせ滝を浴びて水の流れを 身体で感じとろうとしているのに何故か全くもって雑念が去らないのだ。…というか、何故か耳元ではあはあという 変態の吐息さえ聞こえてくるような感じがする…!
もしかして…!?
俺がおそるおそる閉ざしていた瞳を開くとソコには…。
はあはあと荒い息を吐く変態が、俺の乳首に吸いつこうとしていた。
「あ、あれ?気配消してるのに分かるなんて…!愛ですね!」
俺の視線に気付いたのか、変態がにっこり笑って、次いでとばかりに俺の股間に手を突っ込もうとしてきたのですぐさま止めた。
「何してやがるー!!!」
滝の流れ落ちる音さえ凌駕する俺の怒声が響き渡った。
そのせいで周囲の鳥が一斉に飛び立ち、さらには動物たちまで逃げてしまったようだが、変態は嬉しそうに俺のもろ肌に 吸い付いている。…滝が激しく打ち付けてきているにも関わらず…だ。
「あ、愛が溢れて…!!!」
相変わらず良く分からん事を口にするびしょぬれの頭の変態を滝つぼに蹴り落としたものの、すぐさまひらりと俺の背後に 降り立った。ソレを俺も見逃さず、すかさず変態の耳を引っ張って怒鳴りつけてやった。
「…俺は今、修行中だ。…邪魔すんな!!!」
「はぁい!!!」
俺の怒声に瞳を潤ませた変態は、いそいそと俺から離れて行った。
…いやに素直に引き下がったな…。
だが油断はできない。絶対に裏があるはずだ。
再度岩の上に座り込み、変態の出方を伺うことにした。
…水は相変わらず清浄で、冷たいが心地いい。チャクラの流れをコントロールしながら少しずつ術の準備に入ったが…。
視界の隅で変態がはあはあ言い続けていてどうしようもなく気が散る。
これも…精神修行だ!と思うのに、一人で「ああん!イルカ先生ったらなんてみずみずしい…!!!」だの、 「食べごろ…!」だの何だのと、もだえる姿は非常に…気に障った。
しばらくは耐えていられたが、変態が俺の姿に興奮してか服を脱ぎ始めたので、結局耐え切れず…気がついたら思いっきり 蹴り飛ばしていた。…もちろん当たらなかったが。
「馬鹿ばっかり言ってるんじゃねぇ!うぅ…!」
腹立ち紛れに水に拳を叩き込んでみたものの、集中が途切れたせいか、鍛錬不足のせいか、いきなり寒くなってきた。
思わず二の腕を擦ると、すぐさま半裸の変態が俺に抱きついてきた。変態のなまっちろいのに力強い腕が俺に巻きつく。
「寒いんですね!人肌で暖めないと…!!!」
口調は俺の事を心配している風を装ってはいるが、明らかに興奮している。…俺の足にガツガツ当たる変態の一部分が 激しく自己主張していることからもソレが伺える。
…俺の怒りは頂点に達した。
「いいか!修行中だ!…俺の視界から消えろ!」
「えぇー!!!でもぉ…こんなにすばらしいイルカ先生の姿を他のヤツにさらしちゃうのやだしぃ。それにぃ… 見つめていたいんです!!!イルカ先生のコト、ずーっと!!!」
「黙れ!!!…とっとと失せろ!!!」
「うっうっ…そんな寂しいのイヤですぅ…イルカ先生から離れたら生きていけないのに…!!!邪魔しないから側に 置いてくださいー!!!」
哀れっぽい声でしょげてごねる駄犬を見ていると、うっかり同情しそうになったが、それがいつもの敗因なんだ!と心を 鬼にすることを決意した。…半分ズボンをずり下げたまま、腹を出して床に転がり、しかもぐすぐすと鼻を鳴らしている 変態を放ったまま、サクサク岩の所まで戻り修行を再開した。
心を無にする修行を続けていれば、いずれ変態のことも気にならなくなるはずだ!精神面を鍛えなければ、俺の明日はない!
俺は静かに瞳を閉じて、再度集中しようとしたが、変態は更なる手を繰り出してきた。
「イルカせんせ…イルカせんせ…寒い…寂しい…うぅっ…!」
か細く時々しゃくりあげるような変態の声が辺りに響き渡り、俺の心の子どもセンサーを刺激する。それでも…俺は耐えた。
それに焦れた変態が最終手段を繰り出してくるまでは…。
「イルカ先生…っは、ああ…イルカせんせ…!」
しばらく静かになったと思ったが、すぐに、ごそごそと不審な音と共に変態の…妙な声が聞こえてきた。
滝の水音に集中しようとしても、忍の耳はどこまでも鋭敏に変態の立てる物音を拾った。
「見てるだけでも…あぁ…っ!も…っ!」
コレは…!?変態め!!!
耐え切れなくなった俺がカッと瞳を開くとソコには…予想通り一人で始めている変態がいた。
うっとりと目を細めて俺だけを見つめている変態は、例の…無駄に立派な変態自身を取り出して妙に手馴れた手つきで扱いている。
「ぎゃああああああ!!!!!」
再び、静寂の森に俺の悲鳴が響き渡った。
正視に耐えない行為をしているくせに、俺の悲鳴ににっこりと笑って返した変態は、幸せそうだ。
「ああ…イルカ先生の瞳…っ!かけたい…!!!」
不穏な事を口にしながらせっせと行為を続けている。
…これはもう…最終手段を講じるべきだろう。
「おい変態。…よそへ行かないなら…離婚だ!」
…できればこの手は使いたくなかった。そもそも俺は変態駄犬上忍と結婚した覚えなどない!だが、この手はソレを 利用することになる…つまり、コレは俺自身で変態の嫁だと認めたことになるのだ。
俺が断腸の思いで言い切った言葉に、変態は見る見るうちに盛り上がらせていく。予想外の反応だ!
…コレは諸刃の刃かもしれない!?
焦る俺に変態はさも感動したかのように、涙を流しながら俺を見つめてきた。
「そこまで俺への思いが…!なら!…ちょっとだけ待ってます…!」
何だか分からないがそれだけ言い残して変態が去っていった。
「勝ったのか…?」
変態の反応が妙だったし釈然としないが、とりあえず気配がなくなったのだけは確認した。
「考えても、無駄か…。」
俺は変態の行動を理解するのを早々に諦め、今度は水遁の修行に入ることにした。
*****
「寒ぃな…流石に。」
怒りをぶつけるようにしばらくは水遁の大技を放って修行し、思ったより自分の腕が落ちていない事を確認してホッとした所で、 一旦休憩をとることにした。変態のせいで精神面での疲労が濃い。このまま修行するよりは少しだけ休んでからの方が効率も いいだろう。
まずは少し温まろうと、その辺から適当に木切れを集めてきて、火遁で火をつけた。
「あー…やっぱ温かいな。」
火の熱で僅かながら己の身体を暖めることができそうだ。チャクラを結構使ってしまったのでできるだけ温存したい。 変態の気配が未だに近くにないので、一応警戒しながら一旦服をズボンを脱ぎ捨て、下着だけになった。 水気を絞って火のそばに干す。…残念ながら俺の服は結界から用意周到にも奪い取られていたので諦めたのだ。
くそっ変態め…!!!
「ちっ!」
思い出すだけで腹が立ち、思わず舌打ちしたが、そんなコトに限りある時間を無駄にするのももったいない。
…今度は火遁でも試してみようかとチャクラを練り始めた俺の肩に、そっと温かいものがかけられた。
「な!?」
慌てて背後を振り返ったが、変態の気配はない。
だが、俺の肩には…変態のものと思しきベストがかけられていた。
「駄犬!お前は…!?結局コレか!!!いらん!!!」
まず間違いなく変態の仕業だ!まさかここまでついてきたのも素肌ベスト実行のためだったのか…!?
俺が焦りながらベストを脱ぎ捨てようとした手を、白い手が止めた。
「寒いでしょ?」
俺から服を奪い取ったくせに口調だけは心底心配そうに囁く変態は、食い入るように俺の身体を見つめている。
慌ててびしょぬれのズボンを再び履こうとしたが、既に見当たらなくなっていた。
「あぁ…素肌にベストをまとい…しかも炎に紅く照らされたイルカ先生…っ!!!最高です!!!」
そんな事を言いながら、変態はせっせと懐から弁当だの毛布だの…怪しい成人向けおもちゃだのを取り出している。
その姿に激しくめげた俺は、ついつい変態から差し出された弁当を食ってしまいたくなったが、そこはギリギリ踏みとどまり、 すぐさま俺の荷物から取り出した兵糧丸を飲み込んだ。
これ以上変態を刺激するのは危険だ。火遁の修行が終わったら、しばし横になろうと思ったが、この状態では変態に食われに 行くようなもの…。それに、変態の強烈な視線が恐ろしくて、ベストを脱ぐこともできない。…ベスト脱いだことで襲って くるかもしれないからだ。
「ああ…どんなプレイがいいかなー…!!!」
俺は、徐々に熱を高める変態の視線と吐息にコレに耐えることこそが修行なんじゃないかと思い始めていた。
*****
変態がいつ襲い掛かってくるか警戒していた俺だったが、珍しいことに変態が強引な行為を仕掛けてくることはなかった。
…視線は異常に煩いが、一応は俺の宣言を聞いてくれたようだ。
修行は必要だ。しかし、隙を見せれば確実にやられる。…それではココに来た意味がない。
俺は今日の火遁の修行は、諦めて一旦休むことにした。幸い持参の毛布は無事だったので身体を隠すことはできる。 変態が妙なまねをしたらすぐによけるのもイイ修行になるかもしれない。
俺がそっと荷物から毛布を取り出すと、すぐさま変態が背中に張りついてきた。
「イルカ先生!!!寒いんですね!!!…勿論俺が暖めます!!!体の芯から…!!!」
すっかり興奮してごりごりと背中に当たるものをへし折ってやりたいと思いながら、俺はとりあえず変態に拳を放った。
「失せろ!!!」
だが…俺の必殺の一撃はいつも通り当たらず、変態は興奮の度合いを強めていく。
「あ、温めたいだけなんです!むしろ一緒に温めあいませんか!!!全裸で!!!」
それでなくとも下着にベストだけという非常に変態好みの格好をしている俺は、…もしかしなくても絶体絶命だ…! しかもご丁寧にも変態も既に全裸。
…このままでは…!?
「修行の邪魔をしたら…俺が言ったコトは覚えているな…?」
気迫をこめて告げた言葉に、何故かはにかんだ変態は、じわじわ俺との距離を詰めてくる。
「はい!!!修行の邪魔はしません!イルカ先生を温めるだけです!」
俺の怒声にもしれっと返してきた変態は、今にも襲い掛かってくる気満々に見える。
「ソレが邪魔だと…」
とっさに言い返した言葉は最後までつむがれずに途切れた。…変態の口の中に。
「…っはあ…イルカ先生がソコまで俺の事を思っていてくれたなんて…!!!感動しちゃいました!!!感謝の気持ちを 表現しないと…俺の身体で!!!」
「わあっ!?何しやがる!!!」
変態の手に握られているのは…俺に唯一残された服…というか下着!!!
…何だか分からないがすっかり出来上がっている!?
半ばパニックになりながら抗ったが、変態の興奮を更に煽っただけだったようだ。
「ベストが似合いますね…!!!し・か・も!俺のベスト…!!!今日はこのままでいきましょうねー!!!」
これは修行なんだと焦る俺の抵抗はあっさり封じ込められ…すっかり盛り上がった変態にナニをされたか なんて思い出したくもない。
*****

*****
「くっ…!」
だるい。体中がびがびだし、声が出ない。…何でこんなに寒い中でこんなコトしなきゃいけないんだ…!!! そもそも外で…!!!
俺の脳裏を昨日の変態との行為がよぎった。
ベストだけを身にまとった俺を、変態は執拗に嬲った。
「寒いでしょ?温かくならないと!」
等といいながら、変態の毛布引きずり込まれてそのまま…。しかもベストだけは絶対に脱がせずに隙間から…! いや、だめだ。思い出すな…!思い出しちゃ駄目だ…!!!
俺が打ちひしがれていると、めっとりと背後から張り付くものが…。
「ああ…イルカ先生!!!昨日もステキでしたよ…!!!」
爽やかな朝に、変態の爽やかじゃない格好。…つまり全裸毛布。
これも修行と考えるべきなんだろうか…?
俺が気が遠くなりそうになっているというのに、変態はせっせとどこからともなく取り出した飯を俺に勧めてくる。…全裸のまま。
「ご飯ですよー!あ、でもその前におはようのちゅーですね!!!それとおはようのハグと!!!おはようのいちゃいちゃ…」
「いらん。飯だ。」
「今日は大根の味噌汁とめざしと煮物とー…」
せっせと俺に飯をよそう変態から受け取ったものを食いながら、俺は自分の限界をひしひしと感じていた。 結局変態に好き放題にされて、服は奪われ、用意してきた携帯食も変態の手が入っているだろう。
…だが、変態がその俺のなえた心を奮い立たせてくれた。
「後三日間!がんばりましょうねー!!!」
そうだ。まだ初日…いきなり変態に勝てるわけがない!
こんな変態を一日で超えようなどという考え自体が甘かったんだ!…むしろこの状況は敵をよく研究できる絶好のチャンス!
俺のしおれかけたヤル気が、だんだんと上向いていくのが分かる。
「頑張るぞ!!!」
「イルカ先生…かっこいいです!!!」
変態の声援を背に受けながら、俺は今後の修行で絶対に活路を見出してやる事を誓ったのだった。

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とりあえず変態さん。で、多分続きますね…。何故か…。
あと、素肌ベスト的ないちゃぱらしーんって…いりますか…?ニーズが無いような気がする…。
ご意見ご感想などがございましたらお気軽に拍手などからどうぞ…。



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